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第13話 魔法の修行 圧倒的な才能


「まホう……?俺様は魔法を使えなイが?どうイうことだ?」


「何……?それだけの魔力を持った人間を周囲が放っておくわけがないだろう。そこまで莫大な魔力があればどのような種族でも幼い頃より、貴族なり宗教団体なり有力者が囲うはずだ!魔法を使えないなどありえない!」


「いや俺様記憶喪失で魔法ノことどころか、常識や言語まデ忘れてたんだけど」


「……そういえばそうだったな!言語まで忘れていたなら魔法も忘れているのは道理だろう!君は魔法の使い方も忘れてしまったのかもしれないな!」


 我夢は一人合点がいったと納得する。先程まで言葉にあったキーへの猜疑心はもうすでになくなっていた。




「よし!乗り掛かった舟だ!俺が君に護身のために魔法を教えてあげよう!」


「マジ!?俺様魔法使えるヨうになんの?」


「もちろんだ!本人の資質によって覚えられる魔法や習得速度に差は出るが、君なら何かしらの魔法は使えるようになるだろう!使える魔法には種族差もある!また魔力は血によって受け継がれるといわれている!君の出身を探る手掛かりにもなるかもしれない!」


「すげェ!!!」


「本当は幼少期から魔力の扱いに慣れさせることが一番なのだが……安心したまえ!大体のことは気合と根性で何とかなる!」


「得意分野ダ!任せロ!」


「ははは!その意気だ!うむ!早速修業を始めよう!」


「押忍!!!師匠!!!」


「俺もまだまだ未熟者だ!師匠と呼ばれるには程遠い!だが全霊をかけて君を導くと誓おう!」


 キー達はばっちり目が覚めていた。近所迷惑など考えずにその場のノリと勢いだけが彼らを突き動かしていた。




「お前のそノ高い身体能力も魔法だったのか?」


「厳密には魔力を使った身体能力の強化だな!俺は魔法は使えない!馬鹿だからな!」


「ソっかぁ!!!」


「魔法を教えるといったが実際に教えるのは魔力の使い方だ!これができるだけで戦闘に幅ができる!魔力をぶつけるだけでも敵への攻撃になったり、盾として放出するだけで敵の攻撃を弱めたり用途は多い!」


「よっしゃア!!!」


「ちなみにこれを学ぶだけでも年単位かかることもある!」


「そッかぁ……」


「慣れればすぐだ!君には多少のハンデはあるが、習得できれば大きな利得が見込める!前進あるのみだ!」


「やーっテやるぜ!!!!!」





「まずは魔力を感じるところから始めよう!君の肩に触れ、微弱な魔力を送る!感じてみてくれ!」


「あア!来イ!」


 我夢はキーの肩に触れ念じるように目をつぶる。キーも先程までのおちゃらけた様子は鳴りを潜め、これ以上ないほど真剣な表情で集中する。



「(こレは……!解った!)」



 キーは我夢から流れる微弱な波動のようなものを感じる。それと共にまるで初めて目が開いたような感覚になり、世界を流れる力の奔流を感知した。



「キー。魔力の流れをつかめたか?できたなら自分に眠る力を感じ取るんだ!」


「……!」



 キーは自分の中に意識を向ける、意識の奥底に潜っていくように魔力を探すと、自分の体から湧き出るような感覚を覚える。これが魔力か。キーは自身の内側で迸る不思議な粒子のような波のような何かをみつけた。こんなものがあるならばなぜこの世界に来る前にでも感知することがなかったのかがおかしいくらいの密度と質量を持っている。


「キー!魔力を感じることができたなら少しだけそれを体外に出してみよう!何も障害物のない天空に放出するんだ!自分の想像しやすい方法で魔力に指向性を持たせるんだ!」


「あア!」


「俺は君が怪我をしないように近くで見張っている!危なくなったら止める!それでは始めるんだ!!!」


「いクぞ!!!」


 キーは天に手をかざす。キーの手の周りの空気が歪む。最小限の魔力を放出するというのは難しい。どのような感覚で魔力を放出するかもわからないのだ。初めて蛇口をひねる子供のように何の躊躇いもなく放出するわけにはいかない。額に汗がにじむ。一瞬鎌鼬のように衝撃が漏れ、斜め前方の木箱が凄まじい勢いで粉砕され、木片が目視できる限界の距離までは追えたが、吹き飛んでついに見えなくなった。



「……ッ!!!!!!」



 あまりの光景に背筋が凍る。こんなものが人間の体に当たったらひとたまりもないだろう。焦りが精神の均衡を狂わせる。風がキーの上方で荒れ狂う。キーは焦燥から逃げ腰になってきている。それを見た我夢は突風に負けじと叫ぶ。





「キー!!!力を恐れるな!!!その力は君のものだ!!!今まで君が支配し、君の中で眠っていただけの君だけが操れる力だ!!!!!」





「―――――――ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉオおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」





 風切り音を裂くかのようにキーは咆哮を上げる。対照的にキーの内心は冷静であった。魔法は想像力で扱うことを思い出し、精神力で魔力をねじ伏せる。キーの周りの空気の歪みは収束していき、世界を貫くがごとき閃光となる。人の身に余るほどの破壊的な力は雲を貫いた。世界は文字通り震えていた。ウルゴルヌーマ周辺地帯の誰もがある光景を目にし、驚愕し、畏れ、神の裁きか、悪魔の仕業か、とこの事件はその地方一帯の伝承となった。この町すべての住人がまことしやかに語るので、後世の人間は何が原因でこの異常現象が起きたか激論を交わすこととなる。その日は曇天だったが雲は円形に穴を大きく広げていく。雲の先にはキーがこの世界で初めて見た時に驚いた、故郷とは星図の異なる満点の星空が浮かんでいた――――






 キーは我夢に抱えられ、屋根の端まで転がっていた。我夢の転がっていた軌跡にはえぐられたような跡が残っている。我夢はキーの様子を窺い、体調を尋ねて問題ないことを確認すると立たせて、窘めるように憂慮を口にする。


「キー!加減を覚えるんだ!魔力放出するたびに自分が吹き飛んでいては危険だぞ!」


「まだわかんナいよ!異世界初心者ダから!」


「キー!気合いだ!何回も繰り返し体で覚えるんだ!俺も君が飽きるまで付き合おう!」


「我夢……!あァ!やっテやろうじゃねぇか!ウぉぉぉぉおおおおおおお!!!」


 本当に騒々しい。屋根でどったんばったんされるこの家屋の住人にはいい迷惑だ。一晩中こんな調子でいるかどうか精々半々というところだったが、徐々に話は軌道に戻っていく。




「魔力の使い方を練習するにはドうしたらいいんだ?」


「これは誰でも同じだ!ただひたすら感覚を研ぎ澄まして魔力を操ることの経験をするのみだ!」


「そウか。一人で練習するときはどんなことをスれば効率よく学べる?」


「本当は誰か魔法が使えるものが一緒に学ぶことが望ましいのだが……。子どもに刃物を持たせるようなものだからな!魔導士の子どもが癇癪を起こして事故が起きることはよく聞く話だ!君のように莫大な魔力を持つのであればなおさらだ!」


「そんなことがあるノか。やはり危険なンだな」


 キーは興味深そうに我夢の話を聞く。



「だから君はまず最小限の魔力を出すところから練習した方がよいだろう!まず魔力の感覚をつかむことだ!」


「確かにナ」


「だがそうだな。方法はあるぞ!何か壊れてもよいようなものはあるか?」


「適当な雑巾でイいか?」


「十分だ!これをこうやって魔力を操作して浮かす!」




 我夢は手のひらの上で布を浮かせる。布は波打っているが空中にとどまっている。


「これがなかなか難しくてな!俺も子供の頃は苦労したものだ!何せ一定量の魔力を常に制御しながら放出する必要があるからな!」


「なるホど」


「これができるようになれば次は何か別のことをしながら並行して魔力操作の練習をしたまえ!戦闘中にこれができなければ棒立ちで魔力を使わなければならん!」


「道理だナ」


「気を付けることは最初のうちはできるだけ魔力放出する場所を体から離し、周囲に危険がないところで行うことだ!閉所など障害物がある場所でもだめだ!爆発でできた破片が豪速で飛んでくるだろう!」


「助言感謝スる」


 キーは魔法の練習の容量を学ぶことができた。我夢は腕を組みながら頷く。




「何!少しの間の修行であそこまで強大な魔力放出までできるようになったのだ!君はまごうことなき卓越した魔法の天才だ!魔力の多い人間には難しいと聞くが君ならやってのけると信じている!!!」


「俺様を誰だと思ってヤがる……!究極至高存在キー様ダぞ!!!俺様に不可能なドないっっっ!!!!!!!!!!!!」


「自分を信じて諦めなければいつか絶対夢はかなう!根性に物理的限界など存在しないからだっっっ!!!!!!!!!!!」




 いつの間にか水平線には朝の陽ざしが昇る。日光はバカたちにも平等に照らしていた。二人はのんきであったが、この町の誰もがこの夜は恐怖した。魔導士と只人との埋めがたい差はこの世界の誰もが理解している。だがキーの作り上げた光景はまるで神話の世界の内容そのものであった。力なき者たちはこれから始まるであろう熾烈な町の変化に恐れおののく。ウルゴルヌーマの闇の貴族たちはそれぞれこの状況を確認するとすぐに調査させた。各国有力者達もどのような原因でこの現象が起きたか探っていたが、政治的事情からウルゴルヌーマに赴くことは難しく、この町で誰一人として判明させたことは皆無であった。バカの底を知るものはこの世に一人としていないのだから当然であった。


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