表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/22

第4話 「幼なじみ襲来、シルヴィア隠蔽作戦!」

 シルヴィアが少しだけ落ち着きを取り戻した頃。


 ヒロトは彼女へ温かい紅茶を差し出していた。


「……ほら、飲めよ」


 しかしシルヴィアは警戒したまま、カップを睨みつける。


「……毒でも入っているのでは?」


「入ってねぇよ!?」


 ヒロトは即座にツッコミを入れた。


 シルヴィアは依然として警戒を解かない。


 しかも現在の彼女は、ヒロトの大きめのシャツ一枚という非常に危険な格好だった。


 そんな彼女を意識しないよう努力しながら、ヒロトは散らかった部屋を片付け始める。


 床には本、フィギュア、クッション、ゲームソフト。


 すべて先ほどシルヴィアが投げ散らかした物だった。


「……はぁ」


 ヒロトは深くため息を吐く。


「で、シルヴィア。お前、本当にどうやってここ来たんだ?」


 するとシルヴィアは眉をひそめた。


「何を言っているんですか、変態。あなたが私を誘拐したのでしょう?」


「だから違うって!!」


 ヒロトは半泣きになる。


「むしろ被害者は俺なんだよ!」


 しかしシルヴィアは腕を組み、じとっと睨んでくる。


「魔力が戻れば、あなたを消し炭にします」


「怖ぇよ!?」


 ヒロトは慌てて距離を取った。


「いいから最後に何してたか思い出してみろ!」


「最後……?」


 シルヴィアは小さく首を傾げる。


 そして白い指を頬へ当てた。


「確か……魔王軍との戦いが終わって、私は自分の天幕へ戻りました」


「へぇ……」


「その後、お風呂へ入り――」


 そこで彼女は突然ハッとする。


「あっ」


「思い出したか!?」


「眩しい白い光が現れて……その後の記憶がありません」


「白い光……」


 ヒロトは真顔になる。


(やっぱり昨日のアレが原因か?)


 ゲーム機。

 赤い魔法陣。

 妙な現象。


 どう考えても普通ではない。


 しかしシルヴィアは顔を真っ赤にしてヒロトを指差した。


「ですが!! あなたに裸を見られたことは絶対に忘れません!!」


「なんで俺だけ責められるんだよ!?」


「当然です!!」


 シルヴィアは怒鳴る。


「乙女の純潔を見た罪は重いのです!!」


「知らねぇよそんな法律!」


 ヒロトは頭を抱えた。


(どうするんだこれ……)


 彼は心の中で呻く。


(こいつ、自分がゲームのキャラだって理解してないし……。いや、そりゃ当然か?)


 さらに問題は山ほどあった。


(ユウトやリリカに見つかったら終わる……)


(というか、こいつ現代知識ゼロだろ!?)


(どうやって生活するんだよ!?)


 頭痛がしてきた。


 そんなことを考えながら片付けを続けていると――。


「あ」


 床に転がるフィギュアが目に入った。


 ヒロトは慌てて駆け寄る。


 それは限定版の超レアフィギュア。


《聖剣の聖女エミリア》


 しかし。


 真っ二つに壊れていた。


 ヒロトの顔色が変わる。


「…………」


 数秒の沈黙。


 そして。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! エミリアたぁぁぁぁん!!」


 ヒロトは膝から崩れ落ちた。


「なんでぇぇぇぇぇ!! プレミア品だったのにぃぃぃ!!」


 まるで玩具を壊された子供のように泣き始める。


 するとシルヴィアが呆れた顔で近づいてきた。


「なぜ子供のように泣いているのです?」


「うるさいぃぃぃ……」


 シルヴィアは壊れたフィギュアを拾い上げる。


 そして目を見開いた。


「……待ってください」


「ん?」


「これは……聖剣の聖女エミリア様では!?」


「は?」


 シルヴィアは一歩後退する。


「ど、どうやってエミリア様をこの小さな人形へ封印したのですか!? まさかあなた、魔王軍の呪術師……!?」


「違う違う違う!!」


 ヒロトは慌てて涙を拭く。


「これはフィギュア! ただの人形!!」


「ふぃ……ぎゅあ?」


「飾る用の模型だよ!」


 シルヴィアは完全に理解不能という顔をした。


「……意味が分かりません」


「はぁ……」


 ヒロトはため息を吐く。


「なぁ、お前って魔法陣とか詳しいのか?」


 するとシルヴィアはムッとした。


「当然です。私は王国宮廷魔導士ですよ? 馬鹿にしているのですか?」


「いや違う違う」


 ヒロトは慌てて手を振る。


「お前、多分魔法陣か何かでこっちへ転移したんだ」


「……別に興味ありません」


「いや持てよ!?」


「それより」


 シルヴィアは部屋を見回した。


「なぜこの部屋、私の顔だらけなんですか?」


「…………」


 ヒロトは固まった。


 シルヴィアは壁のポスターを見る。


 机のフィギュアを見る。


 抱き枕を見る。


 そして棚の一角へ近づいた。


「……?」


 そこには水着姿のシルヴィアフィギュアが飾られていた。


 露出度高め。


 しかも限定版。


 シルヴィアの顔が一瞬で真っ赤になる。


「な、なななななっ!?!?」


 彼女は震える指でフィギュアを指差した。


「なぜ私そっくりの人形がこんな破廉恥な格好をしているのですかぁぁぁ!!?」


「ま、待て! 落ち着け!」


「落ち着けるわけないでしょう!! この変態!!」


 シルヴィアが再び暴れ始めた、その時だった。


 ――コンコンコン。


 突然、玄関からノック音が響く。


 ヒロトの動きが止まった。


「……え?」


 再びノック。


 コンコンコン。


 ヒロトは青ざめる。


「や、やばい……」


 彼は急いで玄関の覗き穴を確認した。


 そして絶望する。


「リリカぁぁぁぁぁ!?」


 そこにいたのは、幼馴染の森戸リリカだった。


 私服姿の彼女は腕時計を見ながら待っている。


 ヒロトは全身から冷や汗を流した。


「終わった……人生終わった……」


「何を騒いでいるのです?」


 シルヴィアが不思議そうに首を傾げる。


 ヒロトは彼女の肩を掴んだ。


「隠れろ!!」


「は?」


「お願いだシルヴィア!! 一回だけでいいから!!」


「嫌です」


「頼むぅぅぅ!!」


 必死なヒロトを見て、シルヴィアは少しだけ目を丸くした。


 そして深いため息を吐く。


「……今回だけですよ」


「神ぃぃぃ!!」


 ヒロトは即座に隠し場所を探し始めた。


「ベッドの下……無理! キッチン……論外!」


 視線がクローゼットへ向く。


「……これだ!!」


「え、ちょっ――」


 ヒロトはシルヴィアを半ば強引にクローゼットへ押し込んだ。


 バタン!


 直後。


 ドンドンドン!!


「ヒロトー!? いるんでしょー!?」


 リリカの声が響く。


「は、はいぃぃ!!」


 ヒロトは慌てて玄関へ走った。


 ドアを開ける。


 そこには呆れ顔のリリカ。


「やっと開けた。何してたの?」


「え、えーっと……」


 ヒロトは引きつった笑みを浮かべる。


「り、リリカ。久しぶりだな!」


「昨日会ったけど?」


「……あっ」


 ヒロトは固まる。


「はは……そうだったな!」


「大丈夫?」


 リリカは怪訝そうな目を向ける。


「顔変だよ?」


「き、気のせいだ!」


 するとリリカはズカズカと部屋へ入ってきた。


「ちょ、勝手に――」


「さっき誰かの声しなかった?」


 ヒロトの心臓が止まりかけた。


「し、ししししないぞ!?」


「怪しい」


「ゲームしてただけだ!!」


 リリカは部屋を見回す。


「うわ……何この惨状」


「……はは」


「戦争でもしたの?」


「ち、違う! 遊んでただけ!」


 その時。


 リリカが鼻をひくつかせた。


「……なんか甘い匂いする」


 ヒロトはビクッと肩を震わせる。


「な、何のことかな!?」


「バニラみたいな……」


「あー!! シャンプー!! 新しいシャンプー使ったんだよ!!」


「へぇ?」


 リリカは少し意外そうな顔をした。


「珍しいね」


「そ、そうか?」


 ヒロトは冷や汗を流す。


「そ、それより何しに来たんだ?」


「あ、そうそう」


 リリカは持っていた袋を机へ置いた。


「お母さんが余ったご飯とお肉持ってけって」


「……!」


 ヒロトは目を丸くした。


「お前……」


「ちゃんと食べてる?」


「……」


「絶対食べてない顔してる」


 リリカは呆れたようにため息を吐く。


「もっとちゃんと自分のこと大事にしなさいよ。もう高校生になるんだから」


 ヒロトは少しだけ笑った。


「……ありがとな」


 するとリリカも優しく笑う。


「別にいいけど」


 その時だった。


 ――ゴンッ。


 クローゼットが揺れた。


 ヒロトの顔が凍る。


「…………」


 彼は超高速でクローゼット前へ移動した。


 そして小声で囁く。


「シルヴィア!! 暴れるな!!」


 すると背後から。


「……ヒロト?」


「ひゃいっ!!?」


 振り返ると、リリカが不審そうな顔をしていた。


「今誰と話してたの?」


「い、いや!? 独り言!!」


「怪しい」


「怪しくない!!」


 ヒロトは必死に笑う。


 もう限界だった。


「り、リリカ!! 悪いけど今日は帰ってくれ!!」


「え?」


「お腹痛くて!! トイレ行きたい!!」


 リリカは驚いた顔をした。


「大丈夫!? 病院行く!?」


「だ、大丈夫!! 休めば治る!!」


「……そう?」


 リリカは少し心配そうにしながらも立ち上がった。


「じゃあ今日は帰るね」


「お、おう!」


「ちゃんと薬飲みなさいよ?」


「分かってる!!」


 ヒロトは超高速で玄関まで彼女を送る。


 リリカは振り返り、小さく笑った。


「またね、ヒロ」


「あぁ、またな」


 ドアが閉まる。


 静寂。


 ヒロトはその場へ倒れ込んだ。


「……生き延びたぁぁぁぁ……」


 だが次の瞬間。


 ――ゴンッ!!


 再びクローゼットが揺れる。


 ヒロトは遠い目をした。


「……俺の人生、絶対これから地獄だろ……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ