第6話 ギルド長ダンからの依頼
俺とルリスは、指定されたダンジョン管理ギルドの支部へとやってきた。
立派なガラス張りのビルの最上階、重厚な扉の奥にある応接室に通される。
ふかふかのソファに座る俺の隣で、ルリスは出されたオレンジジュースをチュウチュウとストローで飲んでいた。赤いジャージ姿の彼女は、この厳粛な雰囲気の中で完全に浮いている。
「急に呼び立ててしまって、申し訳ない」
向かいの席に座ったのは、ギルド長を務めるダンという初老の男性だった。
鋭い眼光とがっしりした体格は、元凄腕の探索者であることを物語っている。しかし、その声は意外にも穏やかだった。
「昨夜の配信、ギルド本部でも確認させてもらった。未陥落のダンジョンの最深部――そして、異世界からの避難民を名乗るダンジョンマスター。にわかには信じがたいが、映像は本物のようだった」
「あ、はい……」
俺は冷や汗を流しながら頷いた。
横でルリスがオレンジジュースを飲み干し、ズズズッと音を立てる。
「そこで、単刀直入に言おう」
ダンは真剣な表情で身を乗り出した。
「ギルドとしての依頼だ。できれば、そのダンジョンを我々に見せてほしい」
「ダンジョンを見せる、ですか?」
「ああ。国としても、未知のダンジョンの構造や安全性を確認しておきたいんだ。もちろん、正当な報酬は支払おう」
意外にもシンプルな要求だった。
いきなり捕まって人体実験……なんてことにならなくて、俺は密かに胸を撫で下ろした。
しかし、俺が返事をする前に、隣にいたルリスがバンッとテーブルを叩いて立ち上がった。
「ふむ! 妾の城を見たいというのじゃな!」
「ルリス、お前……」
「よいぞ! ただし、条件があるのじゃ!」
ルリスはダンの鋭い視線を正面から受け止め、小さな胸を堂々と張った。
「妾の城を案内する対価として、美味いご飯と、たくさんのお金と……日本の国籍を要求するのじゃ!」
(ルリス! 恐ろしい子っ!)
俺は心の中で絶叫した。
ご飯とお金はともかく、日本の国籍ってなんだ!? 今朝、俺のスマホを勝手に見ながら覚えたのか!?
あまりにも堂々とした要求に、ギルド長のダンも目を丸くして固まってしまった。
「……日本の国籍、か。さすがに私の一存では、すぐに返事できないな。政府の人間と協議する必要がある」
ダンは困惑しながらも、真面目に答えてくれた。
「うむ、よい心がけじゃ! では、そちたちの準備ができるまで、妾たちは城で待っておるぞ!」
ルリスは偉そうに腕を組み、満足げにうなずいた。
そんなわけで、国籍の付与という前代未聞の要求に対する返事を待つため、俺とルリスは、再びルリスのダンジョンへと向かったのだった。
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