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重陽の節句イベント④

挿絵(By みてみん)

 明らかに護衛から離れようとしている二人に、私たちは呆れた視線を向けたあと、ウルフェナイト小公爵が周囲に視線を巡らせました。

 おそらく私たちを護衛している数名に何か指示を出したのでしょう。


「お嬢様」


 不意に横からアンディア様の声が聞こえ、「噴水前で催し物があるそうです」と伝えてきました。

 これは、この場所から離れた方がいいということですね。


「フィリー、私たちも見に行きましょう?」

「でもヴェスペリオンお兄様が……」


 フロリアナがそう言って第一王子の方を見ますが、ちょうど戻ってきたところのようで、ウルフェナイト小公爵が言ったように、二人分ほどが入った紙袋を持っています。


「ヴェス、噴水前でなにかするらしい。うちのお姫様たちも行きたいみたいだ」

「そうなのか?」


 第一王子は手にした紙袋と私たちを見比べ、「食べながら行くか」と笑い、早速紙袋からバケットサンドとレモネードを取り出しました。

 フロリアナはそのボリュームに驚き、慌てて私の顔を見ますが、私から見ても子供の口には大きいサイズに見えますね。

 私とフロリアナの戸惑いに気づいたのか、ウルフェナイト小公爵が肘で第一王子をつつきました。


「なんでもっと小さいサイズにしなかった……」

「二人の好きなものを選んだら、つい……」


 第一王子も私たちの反応と口のサイズを見て、気まずそうに視線をそらしました。

 その様子はどこか子供っぽく、可愛げがありますが、食べながら歩くのは苦労しそうですね。


「か、かぶりつくのですわよね?」


 フロリアナが覚悟を決めたように第一王子に手を伸ばすと、一瞬迷ってから第一王子はフロリアナにバケットサンドを渡そうとし……。


「はい、ちょっきん」


 軽い口調でウルフェナイト小公爵が言うと、バケットサンドは包み袋ごと縦真っ二つになりました。

 驚いて手を引っ込めたフロリアナと、ウルフェナイト小公爵を睨みつける第一王子をきにすることもなく、袋の中に残っていたもう一つのバケットサンドを取り出し、同じように真っ二つにしました。


(…………刃物、持っていませんよね?)


 不思議に思ってその手元を見れば、僅かに魔力をまとっているのが見えます。

 魔力の刃で切ったという事ですね。

 ウルフェナイト小公爵は、私に半分にした片方を渡し、レモネードと残りの半分は片手で器用に持っています。

 でも、問題なのは……。


(量的なボリュームではなく、口に入るかどうかのボリュームの問題ですよ?)


 いえ、縦半分になってだいぶ食べやすくなったとは思いますが……。

 渡されたバケットサンドの切り口の綺麗さに、機会があったら魔力の扱い方を教えてもらいましょう。

 でもウルフェナイト小公爵魔力は風ですか……。

 私は火と水なので扱い方がまた違うかもしれません……。

 包み袋をめくり、食べやすくしてから私がためらいなくかじりつく様子を見て、フロリアナがはっとしたように第一王子からバケットサンドを受け取りました。

 まあ結果としては……。


(こうなりますよね……)


 私もフロリアナも、口を広げてバケットサンドにかじりついたのはいいですが、案の定口の中はいっぱいになり、噛み切ることも難しく、なんとかもごもごと口を動かす羽目になってしまいました。

 第一王子とウルフェナイト小公爵は、私とフロリアナの様子に慌ててそれぞれレモネードを渡してきましたが、そもそも噛み切れていません。


 その後、しばらくしてやっと一口分噛み切った私とフロリアナは、冷たいレモネードでなんとか口の中のものを流し込み、ケホケホと咳き込みました。

 フロリアナと目を合わせ、今度は少しずつかぶりつくことにしました。

 なんとか落ち着いて食べることはできるようになり、私たちは噴水広場の前まで移動することになりました。


 噴水広場の前では、アンディア様が言ったように催し物が行われているようで、前世で言えば大道芸のようなものを見ることができます。

 吟遊詩人の奏でる音も美しく……って、あの方は王宮楽師ではありませんか?

 大道芸をなさっている方も、よくみればどこかで見た覚えや、知った気配がするようね……。

 なんともまあ、安全な催し物ですね。


「ねえ! 見て下さいよルベウニス様!」


 ひときわ甲高い声に、フロリアナと一緒に視線を向けようと思ったら、さりげなく動いたウルフェナイト小公爵に視線を遮られました。


「……わかりました」


 一瞬だけウルフェナイト小公爵と視線が合い、関わるべきでないと伝えてきたため、それならしかたがないと頷きました。

 最も、聞き覚えのある声が気になっただけでそこまで興味があったわけではありません。

 フロリアナはまだ気になっているようですが、私がフロリアナの腕に自分の腕を絡ませ、「あの大きな猫ちゃん、可愛いですね」と言うと「そうですわね」とにっこりと同意してくれました。

 ウルフェナイト小公爵が小さな声で「いや、あれはアルビノのアムールトラ……」と言いました。

なるほど、猫ではなく虎でしたか。


よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。


あ、この作品のPVあります。

見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)


↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!

https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB


↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)

https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r

https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL

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