記憶の香り
第一王子から贈られたプレゼントについては、お婆様以外特に反応がなかったので、私も何も言わずにおきました。
あとでお婆様に確認しておきましょう。
その後は第一王子とフロリアナがいるとはいえ、普通の誕生日パーティーに戻り、表面上は和気あいあいとした雰囲気となっています。
「フィリー、こちらのお料理はいかが? とってもおいしいのですよ」
「いただきますわ」
私がお皿に鴨の香草焼きを取って差し出すと、迷うことなく即答するフロリアナですが、本日用意されている料理のいくつかは、前世の知識を使用してのものもあり、この香草焼きもそのひとつです。
この世界では香草を料理に使うことはほとんどなく、味付けと言えば、塩コショウ砂糖、それにお酢と唐辛子でしょう。
私からすると、まずくはないけれども物足りないですね。
ぜいたくを言えば、お出汁が欲しいです。
「…………食べたことがない味付けですが、美味しいですわ。これもヴィアが作った品物でして?」
「フィリー、私が出来るのは指示と簡単な調理工程だけです。だいたいは指示を出すだけで、シェフが作っています。とはいえ、味見はしていますから、どの料理も大丈夫ですよ」
クスクス笑って言えば、フロリアナは「そうですのね」と頷いた後、「どれがヴィアのアドバイスしたお料理ですの?」と目を輝かせました。
以前、私のことを食いしん坊と言っていましたが、フロリアナも食いしん坊さんなのではないでしょうか。
「私がアドバイスしたのは……」
そう言って私が関わった料理を教えると、フロリアナはすぐさま「ではそれを」と微笑みました。
私は笑って給仕に料理を取ってくるように指示を出し、フロリアナと話し込んでいれば、近くに来ていたお父様たちの話し声が聞こえてきました。
どうやら私が手作りした匂い袋を自慢して……いえ、みせびらかしていますね。
デザイン関係に強い家門の当主が、私の刺繍に興味をもっているのが聞こえます。
この世界では見ない柄ですから、興味を持つのはしかがないのかもしれません。
フロリアナにもその会話が聞こえているようで、信じられないものを見る目で私を見てきます。
「ヴィア、貴女は絵が不得手ではございませんでした?」
「絵と刺繍は別物ですよ」
手仕事と絵はなぜか違うのですよね……本当に不思議です。
そういえば、どこかの国で反物などないでしょうか? なければ機織り機が欲しいですね。
あとでお婆様かお爺様に聞いてみましょう。
「ところでヴィア」
「なぁに?」
甘えるように腕を組んでくるフロリアナに、私は首をかしげました。
「お揃いの香り袋はいただけませんの?」
「あらまあ」
かわいらしいお願いに思わず笑みがこぼれてしまいます。
お父様に渡した香りとは変えた方がいいでしょうし、香草の調合から買えた方がいいですよね。
若者……いえ、子供が好む香りはどのようなものでしたか……。
ひ孫にも香り袋を上げましたが、こちらでは手に入れていない香木も使っていましたし、私が栽培している香草でなんとかなるでしょうか。
「フィリーはどのような香りが好きですか?」
「好きな香りでして? うーん……」
フロリアナアはそこで少し考えると、私に顔を寄せて耳元で「あの空間でヴィアから香った香りが好きですわ」と言いました。
どうしましょう、まったくわかりませんね。
生前、最後に使っていた香り袋はどのようなものでしたか……。
(…………麝香や白檀も入れていましたよね……いえ、香炉に使っていた香りの可能性も?)
もちろん香炉に使っていた香木も、こちらでは見たことはないですね。
そもそもこの国にはあるのでしょうか? あっても名前が違うかもしれませんし、手に入れるまでわかりませんよね。
香草であれば、形を見ればすぐわかるものが多いのですけどね。
(うーん、周辺国には和風や中華風の国はありませんよね。西洋にも香木はありますが、どのような名前でしたでしょうか)
悩みつつ、私もフロリアナの耳元で「その時の香り、二人で探して調合しませんか?」と囁きました。
私の言葉に、顔をほころばせたフロリアナが、「楽しそうですわ」とまた私の耳元で囁きました。
その時は気づいてなかったのですが、その時の私たちの様子は周囲からしっかりとみられており、特に第一王子はウルフェナイト小公爵の肩に手を置き、「俺の妹たちが可愛すぎる。絶対嫁にやりたくない」と言って、呆れられていたそうです。
他にも招待していた家門の子供はいたのですが、なぜか、私とフロリアナの仲を邪魔してはいけない、という暗黙のルールが出来ていたそうで、私たちが仲良く話している時は、よほどではない限り、遮らない協定があるとかないとか……。
これは、パーティーが終わりごろの挨拶で、ウルフェナイト小公爵と、アングレサイト男爵令嬢に聞いた話ですが、いつの間にそのようなものができていたのでしょうね?
「ところで、タンザナイト公爵令嬢」
最後の挨拶ということで、フロリアナと第一王子殿下が帰ったあと、近くに来ていたアングレサイト男爵令嬢が小声で私に「ご依頼の件です」と、遠距離記録用の魔晶石をこっそり渡してきました。
「ありがとうございます」
私がそう微笑めば、アングレサイト男爵令嬢も微笑み返してきて、「またいつでもご用命ください」と淑女の礼をして立ち去っていきました。
(さて、なりそこないさんは、果たしてちゃんとアウリティアを演じることができているのでしょうか?)
手の中にある魔晶石の重さを確認し、私はゆっくりと目を細めました。
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あ、この作品のPVあります。
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↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
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