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王妃様による最高の再婚〜夫と愛人聖女に飼われるくらいなら離婚させていただきます。あ、慰謝料はもらいますけどね~  作者: けい


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本を読みたかっただけなのに

 ベルハイク領への視察を終え、王宮へと帰ってきてから一週間。

 王妃宮でリナフィアは、久しぶりのゆったりとした時間を過ごしていた。

 リナフィアが寝そべるベッドの上には、何冊もの本が散らかっており、どれもこれも読み終えたものばかり。手にした本は、既に三周目に入っている。


「ねえ、ミレーネ。ゆったりもそろそろ限界なんだけれど……もう私は大丈夫だし、そろそろ仕事もしないと……」

「駄目です、妃殿下! 視察での長旅の疲れがありますし、それに妃殿下は今回神力まで使われたんですよ。もうしばらく休んでください!」


 一刀両断されてしまった。


「妃殿下、どうか私の気持ちもお考えください。急に飛び出していった妃殿下が、廊下で倒れていたんですから。てっきり侵入者に刺されたのかと……ぅう、思い出しても……あっ、ううぅ」

「わ、分かったわよ。もう少し大人しくしてるわ」


 そう言うと、ミレーネは「はい、よろしくお願いしますね」と何事もなかったかのように、パッと顔を輝かせた。


(騙された!)


 ショックを受けるリナフィアをよそに、ミレーネは鼻歌交じりで、「お茶をご用意しますね」と部屋を出て行ってしまった。


「はぁ……まったく、嘘泣きなんてどこで覚えたのかしら」


 リナフィアは読んでいた本を、パタンと閉じた。

 そして、辺りに散乱している本をかき集め抱える。


「さて、暇つぶしに図書館にでも行きましょう」


 両手いっぱいに本を抱え、リナフィアは部屋を出た。

 王宮の敷地には王立図書館も入っており、そこには国内外を問わず様々な本が集められている。王宮内という立地のため、学者や医者、薬師など王宮内に職場を置く者の利用が多く、一般的な貴族の利用は少ない。


「ミレーネに黙って出てきてしまったし、あまり長居はできそうにないわね」


「サクッと借りて戻りましょう」などと言いつつ、図書館へと入っていくリナフィアは気付いていなかった。

 彼女の後を追って、図書館入った者達がいたことを。





 司書に本を返却し、新たな本を探し歩く。


「どれにしようかしら」と呟きながら、リナフィアは本の背表紙に書かれたタイトルを読んでいく。その中でひとつ目に付くものがあった。


「『国境線上の恋』……ね」


 国境という言葉に、リナフィアは先日のベルハイク領視察での出来事を思い出す。

 丸一日寝込むほど、神力を使ったのは久しぶりだった。

 リナフィアは、命に関わらない多少の傷で神力を使うことはない。

 力の根本は聖女の生命力であり、無制限に使えるものではない。ただ、使用した分は休めば回復するものだから、そこまで神経質になる必要もない。


「やっぱり、国境の駐屯地で使いすぎたからかしら」


 駐屯地の兵士達は、常に戦闘にさらされており、傷が癒える間もなく戦うことが多いと聞いた。だから、リナフィアは神力を使って、駐屯地の兵士全員の傷を治療したのだ。


「結構、人数がいたものね」


 一人一人の傷は大したことなくとも、それが何百人ともなれば、やはりそれなりに神力を消費する。そして、夜の敵襲ときたものだ。休む暇なく、命のほぼを蘇らせるほどの力を使ったから、あのように突然倒れてしまったのだろう。


「まあ、一日休めば私は回復するし、それより夫人を助けられたのは大きかったわ」


 目が覚めたあと、まず部屋にやって来たのはベルハイク伯爵と夫人だった。二人は心の底から安堵したという顔で腰を折り、次の瞬間、夫人に勢いよく抱きつかれた。何度も何度も耳元で、「良かった」と涙混じりの声で呟かれたものだ。


 二人とも夜着のままで、報せを受けてすぐに来てくれたのが分かった。

 それに、伯爵達だけでなくその側近や侍女まで、自分の目覚めを良かったと喜んでくれたのだ。初めは、この北部視察は、夫人を助け、ベルハイク伯爵を取り込むためのものとしか考えていなかった。しかし、今は心の底から行って良かったと思えた。


 リナフィアは本を引き抜き、パラパラと捲る。領地を隣にする、敵国同士の伯爵と令嬢の恋愛小説だった。


「ふぅん、面白そうな話ね」


 思わず、その場で読み進めていたのだが、話の中で伯爵を奪う恋敵が現れ、思わず本を閉じてしまった。描写されていた出で立ちも、言葉遣いもまるで誰かを思わせるもので、リナフィアは奥歯を噛みしめる。

 リナフィアは手の中の本を覚めた目で睨み付けると、元あった場所に戻そうとした。


「あ、あら? よっ、ほっ!」


 戻す場所に他の本が倒れてきて、本を入れるスペースがなくなっていた。しかも、ちょうど手を伸ばした先にあり、上手く本を入れることができない。


「んんんん~~あと少し――――って、え?」


 すると、突然、手の中から本がふっと消えた。

 何事かと見上げれば、背後から伸びた手が本を棚に入れてくれていた。

 誰と聞かずとも分かる。装飾された華美な袖から出る手は褐色の肌で、鼻腔をすーっと通る清涼感のある香りは、彼愛用の鈴蘭の香水。


「ありがとうございます、それでは」


 リナフィアは振り向かずに、横から出ようとした。が、目の前にぬっと現れた彼の腕に、進路を塞がれてしまう。


「話がある、リナフィア」

「私はありません、陛下」



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