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王妃様による最高の再婚〜夫と愛人聖女に飼われるくらいなら離婚させていただきます。あ、慰謝料はもらいますけどね~  作者: けい


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どうして私が抱き締められてるの?

 反対側から出ようと踵を返せば、そこにいた者に、リナフィアは目を丸くした。


「リナフィア様ぁ、ルーベント様がお話があるって言ってるんですから、ちゃんと聞きましょうよぅ」

「マリア……っ様」


 呼び捨てにしてやりたかったところを、ギリギリで敬称をつける。彼女の間延びした甘えた声は癪に障って仕方がない。

 しかし、背後は本棚、右はルーベントの腕、左はマリア、そして正面はルーベント自身ときたら、素直に話を聞くしか逃げ道はなかった。


「……ミレーネが待ってますので、手短にお願いします」


 もう逃げないと分かったのか、ルーベントの腕は外され、彼は威圧するかのように腕組みした。彼の隣にひっつようにマリアが身を寄せる。


(大したものね。こんな大っぴらにいちゃつくだなんて)


 目の前には、彼の妻もいるというのに。


「リナフィア、視察ではマリアを突き飛ばしたそうじゃないか」


 思わず目の下がひくついた。


「そんなことが聞きたかったのですか?」

「どうなんだ、リナフィア」


 すーっとリナフィアは息を吸い、身体の内側と一緒に頭も冷やす。


「ええ、事実ですよ。あのまま、あそこで呆けられていたら、夫人の命はとっくになかったでしょうし。邪魔なものを払って何が悪いのです」

「ひどいっ! リナフィア様が、あたしの存在を邪魔だと思っているのは気付いてましたが、あんな侍女やメイドがたくさんいるところで、いじめなくたっていいじゃありませんかぁ……っ」

「リナフィア。君は王妃なんだ、言い方を考えろ。マリアも民の一人で、国母である君の子も同然なんだぞ!」


 こんな子の母親にされるくらいなら、国ごと捨ててやる。

 目尻に涙を浮かべたマリアは、ルーベントの腕に顔を押しつけ「ひどい」と呟いていた。わざとらしいしゃくり上げの声が、実に腹立たしい。袖の中で握りしめたリナフィアの拳には、爪が食い込んでいる。

 本当は怒鳴り散らしたいところだが、痛みのおかげでどうにか冷静を保てていた。


「では、私も国母として言わせていただきますが、マリア様は離宮にいる資格はないように思われます」


「なっ!?」とルーベントが目を剥いた。


「国庫の大半は民からの税でまかなわれております。当然、離宮の管理やそこに勤める者達の給与も。ですのに、マリア様は離宮に住むにふさわしい責務を果たされておりません」

「そ、それは、マリアはまだこの世界のことがよく分かっていなくて……」

「こちらの世界に来て幾月過ぎましたか? 分からないのならば、先生を付けられればよろしいこと。とても博識で厳しい家庭教師を紹介いたしましょうか?」

「っあ! あたしは、神力の使い方を学ぶのでいっぱいなんです! それに、神力は自分の命を削って使うだなんて怖くて……っ調整もまだ下手ですし。もし、二度とルーベント様にお会いできなくなると思うと……リナフィア様には分からないでしょうけど!」


 リナフィアは「へぇ」と片口をつり上げ、冷笑を浮かべた。

 明らかにあおっている。

 だが、ルーベントに未練などない自分には、意味のないあおりでしかない。


「死にかけている夫人を目の前にして、救う力を持ちながら医者に任せれば良いと言うマリア様に、神力を使おうとする意思があったとは驚きました」


 気まずそうに顔をそっぽ向けるマリアを、リナフィアは鼻で嗤った。


「それは、まだマリアは神力を上手く使えないからだ。いい加減にしろ、リナフィア。どうせ一日休んだら回復するものだろう。王妃のお前が出し惜しみなどするなよ」

「出し惜しみ……ですって?」


 しかも休んだら回復するとも言った。馬鹿にしているのか、この男は。隣の女に同じ事が言えるのか。


「陛下が私のことを、どのように思っているかよく分かりました」


 妻でも、王妃でも、聖女でもなく、国のために命を捧げる『神力』としか見ていないと分かってしまった。愛されていないことは知っていたが、ここまで自分を道具扱いするとは。


《――役目を与えてくれたここにいる者達全てに感謝して……逝け》


 思い出された、前回死に際にかけられた彼の台詞は、やはり自分を道具扱いしていた。

 もう、悲しみなどない。あるのは清々しいまでの憎悪だ。


「では、マリア様こそ出し惜しみされませんよう。いざという時、私に頼らないでくださいね。もし……この国が滅ぶことになっても……」


 リナフィアの眼光の鋭さに、マリアはヒッ、と小さく声を漏らしルーベントの背に隠れた。


「では失礼します」


 ルーベントがまだ背後で叫んでいたが、リナフィアは聞こえないとばかりに無視して図書館を出た。


「え、あら……レイス卿」


 扉を出た目の前に、想定外の人物が立っていた。

 夜色の髪をした白い近衛兵の制服を着た男――レイスだ。

 彼はリナフィアの姿を見ると、目をじわりと大きく見開いていく。


「ああ、まだ陛下の護衛兵なのね。ご苦労――」


 様ね、までは言えなかった。

 気付けば、リナフィアはレイスの腕の中へと収められていた。





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