儚い約束
10話までは毎日投稿です!!
よろしくおねがいします!!
この物語は、小さな花畑から始まる。
小さな花畑から‥‥‥過酷な物語が幕を開ける。
「ーーーセリカっ、早く行けっ!!」
「イヤッ!! 一緒に逃げよっ!!? 私っ、あなたと一緒なら死んだっていいッ!!」
「バカっ、生きなきゃ意味ないだろっ!?」
数奇な運命に翻弄される‥‥‥まだ幼い2人によって。
◆◇◆◇
小さな孤児院で暮らす、2人の子どもがいた。
「ねぇ、待ってよセリカ〜!!」
6歳の金髪少年‥‥‥アベル。
「早くしないと日が暮れちゃうわ!」
6歳の銀髪少女‥‥‥セリカ。
アベルにとって、セリカだけが唯一の家族。
「あ、見えたよアベル!」
先を行っていたセリカが足を止め、笑顔で指を差す。
アベルは肩を上下させ、彼女の指先を目で追う。
「ほんとだ。いつもより早く着いた」
そこには‥‥‥辺り一面が花で覆い尽くされている、小さな花畑があった。
「やっぱりきれい‥‥‥! もうちょっと、孤児院がここに近かったらいいのに」
「ここはもう何度も見てるじゃん。たまには騎士ごっこでもーーーうわっ」
アベルは続きを言おうとした瞬間、セリカにぐいっと距離を詰められる。
「生き物の命は有限なの! この花畑もいつ見れなくなるか、分からないんだから!」
そう言い放つセリカが、額を付けかねない距離で嗜める。アベルは彼女の勢いに押され、少し仰け反りながら口を開く。
「そ、そんなの分かってるよ。でも見た感じ、このお花畑はまだまだ枯れなさそうだしーーー」
「感情だって、ずっと変わらないとは限らないんだよ?」
彼女の言葉に、アベルは目を見開いて息を呑む。
そして無意識に自分の腕を掴む間も、セリカの言葉は続く。
「わたしたちがずっと一緒にいられるか‥‥‥分からないんだよ? 急に離れ離れになるかもしれない、何が起こるか分からないんだから」
セリカが眉を下げて呟いた。表情が少し暗い。
「‥‥‥嫌だ」
アベルは真っ直ぐ見つめ、彼女の両肩に手を置く。
「ぼくは、セリカとずっと一緒にいたい。生まれた時から一緒に過ごしてきたのに、セリカがいない生活なんて‥‥‥ぼくには考えられない」
「っ、アベル‥‥‥」
セリカが目を潤ませる。アベルは真っ直ぐ、想いを伝える。
「たとえ離れ離れになっても、ぼくが必ずセリカを探して会いに行く。セリカが嫌じゃなかったら、だけど‥‥‥」
そう言い切る直前、アベルは次第に声が小さくなっていた。顔が熱くなるのを感じ、目を合わせられない。
「嫌なわけないっ!!」
するとセリカが必死に、訴えるように抱き着く。顔を真っ赤にして、一筋の涙を流しながら。
「私も‥‥‥アベルとずっと一緒にいたい。あなたがいない人生なんて、耐えられない」
「セリカ‥‥‥ぼくもだよ」
アベルはすぐに言葉を返しながら、彼女の背中を優しく摩る。ゆっくり、ゆっくりと。
「‥‥‥それ、ほんとう?」
顔を上げたセリカが、息を止めて小さく呟く。今も涙を溢れさせ、頬は真っ赤になっている。
「ヴっ‥‥‥!?」
すると突然。
アベルは歯を噛み締め、左肩を押さえ始める。
滲み出した、針を刺されたような鋭い痛み。
右手で力強く押さえ込み、必死に堪える。
「アベルっ?」
その様子を見た、セリカの口から声が漏れる。
「‥‥‥だい、じょうぶ。昔の古傷が痛んだだけ」
アベルは深呼吸しながら、しっかりと彼女を見つめて‥‥‥口を開く。
「ぼくは‥‥‥ずっと昔から、セリカが好きだ」
「‥‥‥‥‥‥嬉しい。私は、ずっと大好きだからね‥‥‥」
「だから、ぼくもだって」
「‥‥‥うん、そうだといいな」
アベルは、何よりもセリカの事が大切だった。
そんな感情を、いつから持ち始めたか‥‥‥覚えていないくらいに。
「はい、アベル!」
花畑に座ったセリカが、笑顔で花の冠を渡す。
「ありがとう」
アベルは感謝を告げて手を伸ばすと、花の冠をーーー掴めなかった。
手を下げたセリカが、頬が膨らませている。
「ちーがーう!! わたしに被せて!」
「え? う、うん」
アベルは少し困惑しながらも、渡された花の冠をセリカの頭に乗せる。両目を閉じて待ち続ける、彼女の頭に。
「ありがとっ!」
両目を開けて、はにかむセリカ。頭にある花の冠を、彼女は両手で優しく触る。
「今回のは自信作なんだ〜! きれいでしょ!?」
そう言ったセリカが、自信満々に微笑む。
その姿に、アベルは目が離せなかった。
「ーーーっ」
彼女の笑顔は、満開の花畑の中で‥‥‥一際輝いているように見えた。
「‥‥‥うん。本当に綺麗だよ」
アベルは素直な感想を呟く。本心が自然と口から漏れていた。微笑む彼女から、アベルは今も目が離せない。
「えへへ〜‥‥‥じゃあ次はアベルね!」
「えぇ!? ぼくは別にいいよぉ」
「今作ったから」
「はや!?」
「お揃いだね、アベルっ!」
アベルはいつものように、セリカと幸せな時間を過ごす。ありきたりで、平穏な生活を。
この生活を、アベルはずっと望んでいる。
「これからも、ずっと一緒にいようね! アベルが、私を嫌にならない限り‥‥‥」
どうやら、それはセリカも同じようだった。だが語尾を小さくして、彼女は少し俯いてしまう。
「後半の言葉は必要ないよ。ずっと一緒にいよう」
「ほんと‥‥‥? その言葉、嘘じゃない‥‥‥?」
そして、一点を見つめて呟くセリカ。その表情は、どこか儚い。
(なんで、こんなに不安そうなんだろう?)
アベルは湧き上がる疑問に首を傾げつつ、彼女を不安にさせないよう話しかける。
「本当だよ。セリカは疑い深いなぁ」
「‥‥‥うん。そうだよねっ」
気持ちは、確かに通じ合っていた。
これからも、幸せな時間を過ごしたい。
(セリカと、ずっと一緒に‥‥‥)
そして大きくなっても、彼女との変わらない日々を‥‥‥アベルは強く望んだ。
「アベルっ、あれやろっ?」
笑顔のセリカが、小指を向けてくる。
「‥‥‥うん。わかった」
アベルは穏やかに笑い、自分の小指を差し出す。
「ーーー何があっても」
「ーーー離れ離れになっても」
アベルとセリカが交互に呟いた後‥‥‥小指を絡ませ合う。
「「心は、ずっと一緒に」」
昔からやっている、アベルとセリカの儚い約束。
アベルは笑顔のセリカを見て、幸せな気持ちに満たされる。
ーーーズバッ!!!
だが突然‥‥‥花畑の中に走る鋭い音。そして、花弁が瞬く間に吹き飛んでいく。
アベルとセリカは、その衝撃による強い突風に晒された。
「いったいなにがっ」
アベルは咄嗟に、彼女の両肩に手を乗せる。そして一緒にしゃがみ込む。だが花畑の中に入っても、突風が全身を激しく打つ。
そして、2人が頭に付けていた花の冠は‥‥‥すぐに吹き飛ばされていた。
「あぁっ、冠が!」
セリカが必死に手を伸ばすが、既に花の冠は視界から遠ざかっていた。
「セリカっ、危ない!!」
アベルは歯を噛み締めながら、自分たちの無事を祈って姿勢を低くする。
やがて風が弱まっていき、2人が立てるようになるまで落ち着いてきた時。
「ケケケケケ」
アベルとセリカは呼吸を忘れ、無意識に上を向く。耳障りな声が、聞こえる方へ。
「きゃぁぁぁぁッ!!!!」
セリカが、口を歪ませて絶叫した。
「バケ、モノっ‥‥‥!!」
2人を見下ろしている‥‥‥異形の生物。
人間とは思えない化け物‥‥‥まさに、魔物。
ゴブリンという言葉が、しっくり来る。
「小さな雄と雌かァ〜。こりゃ美味そうだナァ」
再び低く唸るような声が、ゴブリンの口から発せられた。アベルは一歩前に出て、深呼吸して口を開く。
「‥‥‥セリカっ、先に逃げて。僕が注意を引くっ」
6歳の少年は、勇気を振り絞って前に立つ。
「ぇっ‥‥‥?」
後ろで涙を流す‥‥‥大切な人を守るために。
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