炎上騒ぎにもご注意を
一日目 四時限目
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SHRから一時限目から三時限目が飛び、いきなり四時限目だ。
場所が体育館であり、俺や後輩、体育館にいる生徒が懐かしのグレー色の体操服を着ているから、この時間は体育の授業なのだろう。
俺たち男子生徒はギャラリーにいて、女子生徒のバレーの試合を見ている。
男女が一緒に体育の授業を受けているということだ。
ここがやっぱ夢なんだよなって思った。
実際の懐かしの学生時代の体育の授業は男女別であり、こんな風に授業を一緒に受けることはなかった……と思う。
「先輩、あのトスはキラーパスっすね。空振り三振を狙うには、十分すぎる張り手っすよ」
隣の後輩が呑気そうに言った。
俺たちが見ているのはサッカーでもなければ、野球でもなく、相撲でもない。
夢の中でも後輩は後輩だなって思ったよ。
「にゃあ! にゃあ! にゃあ!」
転入生の黒猫はギャラリーではなくてステージにいて、楽しそうにムーンウォークを繰り返している。
そんな黒猫が手にしているのは、極上マグロの刺身の入ったプラスチック容器。
夢の中でも黒猫は極上マグロが好物なんだなって思ったね。
「おっさん!」
また戦いの女神の俺を呼ぶ声が聞こえた。
俺は幾分かは張りの減った胃を擦りながら、いつものパターンでしょ、と思った。
声がする。辺りを見渡す。戦いの女神の姿はない。
どうせまた戦いの女神はいないんでしょ。
もう騙されませんよ、夢の中と言えどもね。
「我、参陣!」
珍しく戦いの女神の声が続いたなと思ったら、無駄に肌の露出度の多い鎧を着て、無駄に長い槍を持った戦いの女神がバレーをしている女子生徒に混じり、コート内で仁王立ちしているではあーりませんか!
ご本人、登場。
俺の目の前に初めて出てきたときと同じように、仁王立ちで登場。
まさか夢の中に初めてで来たときも、そのときと同じ仁王立ちで登場とはね。
ただ、コート内で仁王立ちしている戦いの女神はギャラリーにいる俺に気付いていないようだ。
関心があるのはネットの上を行ったり来たりしているバレーボールのようで、まるでモンスターか魔王かのように睨んでいる。
長い槍を持っている腕がプルプルと震えているように見える。
「先輩、戦いの女神さんっすよ」
「言われなくてもわかるよ」
俺が返した直後、
「我こそは戦いの女神ぞ!」
「ほら、戦いの女神さんっすよ」
「だから、わかってるって。本人もそう言ったじゃないか」
そう言い返した直後、
「埒が明かぬッ!」
「先輩、戦いの女神さ」
「だから、わかってるって言ってるだ……あいつ、なにしてるんだ!」
思わず叫んだね。
味方のコートに飛んできたバレーボールを槍で突き刺し、軽やかに飛んだかと思うと、槍を振り落とした戦いの女神を目撃してね。
バレーじゃないですやん。
槍の先から空気の抜けたバレーボールが抜け、相手のコート内に叩きつけられた。
その瞬間、なぜか会社の朝の予鈴が体育館に響き渡る。
予鈴の鳴ったタイミング、コントの効果音みたいに絶妙ですやん。
仁王立ちに戻った戦いの女神。
新しいバレーボールを使用してバレーが続ける女子生徒たち。
「貴様ッ! 無礼であろうッ! 我は女神ぞッ! ひれ伏さんかッ!」
誰が気に食わないのかはわからないが、戦いの女神が怒鳴った。
懐かしいな、その台詞。俺に発した初めての台詞がそれだったものな。
「ええい、埒が明かぬわッ!」
戦いの女神が槍でバレーボールを刺しては相手コート内に投げ返し、会社の朝の予鈴がタイミングよく鳴り、女子生徒たちが新しいバレーボールでバレーを再開する。
そんでまた戦いの女神が槍でバレーボールを……の繰り返し。
なあ、俺は何を見せられてるんだ?
そろそろ夢見ノイローゼになりそうだ。
「家主様! 家主様!」
ステージでムーンウォークを繰り返していたはずの黒猫が俺の肩にしがみついている。
俺の隣にいたはずの後輩はどこにもいない。
「なんだい?」
「女神様の槍さばきに圧巻されるニャ。家主様はどうですかニャ?」
「これが夢だからよかったもんだよ。現実であんなことをしたら、炎上だよ、炎上。異世界炎上娘、現代社会でも炎上騒ぎを起こして現代炎上娘って具合にね。夢で良かったよ。俺の夢炎上娘で済むんだから」
「そうですかニャ。それはよかったですニャ」
「俺、はやく夢から覚めたいんだけどな。夢から覚める方法、黒猫は知ってるか?」
「知らないですニャ」
「……そうか」
「家主様、元気を出すニャ。まもなくお昼休みニャ。食べて元気を出すニャ」
「俺、お腹空いてないんだけどな」
聞こえてきたのは、スマホの起床アラームの音ではなく、授業の終わりを知らせるチャイムだった。




