表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四季帝(しきのみかど)、愛のゆくえ  作者: 紫月 京
序章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/119


桜の花が散り新緑の葉が揺れるさまを、巨木の根元に佇んだ青年がじっと見つめている。

春の終わりに、薄桃の花弁が風に乗ってひらひらと飛んでいった光景は、何度見ても美しく儚いものだった。

そっと胸元を押さえる。

「……親王さま」

密やかな声が背後から掛けられ、青年がゆっくりと振り返る。

「支度は整ったか?」

地に膝をつけ、頭を深く垂れていた黒髪の若者が静かに顔を上げ、小さく頷いた。

「すべては、親王さまの御心のままに」

「……じきに、あちらへ踏み込む」

温度を感じさせない冷たい声に命じられ、黒髪の従者は無言で首肯した。

「必ずや、お方さまをを正しき場所へ」

己に従う若者の言葉に頷き、青年は再び散りゆく桜へと目を向けた。


春の終わりに、この場所から見る桜の花が好きだった。

宮廷で気を張り詰め、疲れた己の心を癒してくれるようで、誰にも漏らせない不安さえも吸い取ってくれるような美しい花。青年にとって、心穏やかでいられる大切な場所だった。

胸に置いた手で、懐に隠し持った包みをそっと布越しに確かめる。

「其方の想いは、無駄にしない」

そして、もう一人、彼を癒してくれた存在――。

「……必ず、取り戻す」

己に言い聞かせるように呟き、青年は青灰色の瞳で空を睨んだ。

「……てる

大切に、そっと愛しい名を呼び、思いを振り切るように踵を返した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ