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26.異世界から最強の剣がきました①



 悲鳴がした方へ駆けていると、別の冒険者パーティが地面に座り込んでいた。全員おっさんで着ている簡易な鎧はボロボロだった。



「何かあったんですか?」

「はぁはぁはぁ…さっきそこで【怪物放浪(ワンダリング)】が…」


 怪物徘徊(ワンダリング)…それは稀に起こるボスモンスターの移動の事をいう。通常は5階層毎にいる強いボスモンスターが規定の位置にいるのだが、稀にそのボスモンスターが魔物の群れを率いて移動をする事だ。



「マジか…」

「俺たちはまだ群れから離れていたからギリギリ逃げられたんだが、俺たちの前にいた若い冒険者パーティは逃げられずに完全に捕まっちまった」


 俺はそれを聞いた瞬間に駆け出した。



「おいよせ! ガキが1人行ったところでどうにもならねえぞ! それにワンダリングだけじゃ、……!」


 最後の方はもう聞こえなかった。



「ガキが行ってもどうにもなんねぇのに…」

「ああ、早くギルドに報告しねぇと…」

「それにさっきのガキ、例の【普通の冒険者】だろ?」

「くそ、これだから夢見がちなガキは…自分ならどうにか出来るとでも思ってんのか…」


 おっさん冒険者パーティは疲労困憊であったがゆっくりと起き上がり、外に出てギルドへ報告しようと歩き出した。







 俺は駆けた。

 もし取り残された冒険者パーティがいなかったのなら俺も引き返していただろう。俺1人でどうにか出来るなんて思っていない。それでも、俺が目指したい英雄は…英雄ならきっと困っている人を助けるに決まってる。


 逃げたくなかった。


 ああ、きっとこれが子供冒険者が早死にする理由なんだろうな。自分の可能性、憧れの英雄像、そういったものが引き際を間違えるんだろうな。



 そんな事を考えていたら洞窟の先の方が明るくなったので、俺は急停止した。



「着いた…っ!」



 嘘だろ…

 想定していた倍以上の数…有に百は超える魔物の群れがいた。全てゴブリンだった。洞窟内は今までと違いかなり開けており、天井までも相当高く開けていた。その中心にいたのは、【大鬼(オーガ)】だった。


 確か5階層のボスモンスターは、ボブゴブリンだった筈…まさか、【魔物進化】までしていたのか。


 魔物進化は、これも極稀に起こるボスモンスターが進化することをいう。種族が変わるものもいるし、強さが桁違いに跳ね上がる。



「マタニンゲン、オマエラ、コロセ」

「⁉︎」


 オーガって喋れるのか⁉︎

 ゴブリン達はオーガの指示で俺に襲いかかってきた。俺は襲いかかるゴブリンを迎撃する。普段と違いゴブリンは更に殺気だっていた。動きもいつもと違って速く感じる。



「誰か、生きてる人はいますか!」


 俺はゴブリンを薙ぎ払いながら生きてる人がいないか確認した。



「誰か来てくれたのか⁉︎」

「こっちよ! 動けない怪我人がいるけど5人生きてます!」


 ゴブリンの群れで見えないけど、声の方向からおおよその位置はわかった。ぶっつけ本番だけどやるしかない。



「嵐魔法、ライジングテンペスト!」


 昔大怪我した懐かしい魔法を久々に唱えた。あの時から俺も少しは成長してるし、今は身体強化のスキルもかけてある。洞窟もあの時に比べて格段に広い。大丈夫。


 雷を纏った風の球体をゴブリンに向けて放った。もの凄い威力の魔法がゴブリン達を吹き飛ばした。



「見えた」


 俺は縮地を使って、冒険者パーティの元へと駆けた。



「ありがとう、って子供⁉︎」

「君1人…?」

「そんな…」


 男女混合の冒険者パーティだった。年も俺に近い気がする。見ると、男女1人ずつ倒れており血が大量に流れていた。僧侶風の女の子が回復魔法をかけ続けているが間に合っていない。今すぐにでもここから離れなくては。



「君、他に仲間は⁉︎」

「あなた1人なの?」


 3人を守るようにリーダー格らしき剣士の男の子と、拳で戦う格闘家の女の子はボロボロになりながらも必死でゴブリンと戦っていた。



「すいません、俺1人です。でも皆さんは必ず逃します。もう一度さっきの魔法を俺が来た方向へ放ちます。お二人は倒れている人を担いでとにかく走ってください! 僧侶さんは走りながら回復をお願いします!」


「くっ、それしかないのか…」

「いいのマサ? こんな子供の…!」


「時間がありません、早く!」


 2人は一瞬躊躇うも、頷くと倒れてる仲間へと後退した。俺は戦ってる2人と交代してゴブリンを相手にした。



「いいぞ!」

「お願い!」


 2人は倒れてる仲間を背中に担いだ。



「いきますよ、俺が魔法を放ったらとにかく走ってください!」


 俺は力一杯剣を振るってゴブリンを薙ぎ払った。一瞬の間が出来ると俺は魔法を放った。



「ライジングテンペスト!」


 嵐魔法は再びゴブリンを吹き飛ばした。



「走って!」


 俺たちは一斉に駆け出した。



「ニガサン、オマエラ、コロセ」


 オーガの指示でゴブリン達は道を塞ぐ様に俺たちを囲い出した。



「くそ、くそ、くそ!」

「だめ、もうだめよ…」


「諦めないで下さい!」


 逃げる人達を守りながら戦うのは相当きつかった。ゴブリン達は四方から襲ってくる。こんな時に結界や中距離の攻撃方法があれば良かった。



「きゃっ…」

「しまっ…!」


 僧侶風の女の子はゴブリンに足を掴まれ転倒した。俺たちは足を止めてしまった。



「くそったれー!」

「こんなところで…っ!」


 剣士マサさんと格闘家の女の子は完全に生を諦めた。俺は僧侶風の女の子の足を掴んでいるゴブリンを切り裂いた。だけど…完全にゴブリンに道を塞がれた。もう一度魔法を放ちたいが間に合わない。


 ここまでなのか…






『我を使え』



 え?

 変な声が聞こえたと思ったら周りの時が止まっていた。いや、正確にはもの凄くだがゆっくりと動いている。



『我が主にはこんな雑魚ども如きに苦戦してほしくないな』



 一体誰だ?



『分からんか? いま主が手に握っているものだ』



 まさか、十握剣?

 剣が喋るなんて…



『それよりもコイツらを薙ぎ払う力が欲しくないか?』



 そりゃ…欲しいけど…



『ならば我が今から異世界より最強の剣を呼び寄せてやる。主にも所縁のある世界、【大和(ヤマト)世界】最強の剣…その名も、【草薙剣(クサナギケン)ムラクモ】。万の軍勢すら一振りで薙ぎ払う最強の剣だ』



 え?

 ヤマト…?

 クサナ…え、何?

 そんな世界知らないし、てか最強最強言い過ぎじゃね?



『いくぞ我が主よ、その名を叫べ、時が動き出すぞ!』



 い、いや、ちょ待っ…ええい、くそ!

 もうどうなってもいいや!

 いくぞ!



『第九の剣、』

「草薙剣ムラクモ!」



 十握剣は輝くとただの鉄の剣から、刃も鍔も柄も真っ白で一体となった神々しい剣へと姿を変えた。そして俺はその場で剣を横薙ぎに振るった。


 一瞬だった。


 周りにいた数百以上のゴブリンは全て一瞬で消し飛び魔石と化した。その場にいたのは、俺たちとオーガだけだった。



『初めてにしてはまぁまぁだったな。勿論こんな狭い場所でこんな少数では本来の力の百分の一も威力は出ないがな』



 嘘でしょ…

 これで百分の一…?



『草薙剣ムラクモは相手が多ければ多い程、絶大な威力を発揮する剣だ。言ったであろう、万の軍勢すら薙ぎ払うと』



 お、おう…凄い。

 てか凄すぎてもう意味が分からない。


 ま、まぁ何にせよ後はオーガだけだ。

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