19.ゆうべはお楽しみでした
宿に戻ると俺たちは各々のんびりとくつろいだ。外はもう暗く、夕食も既に済ませてある。ルナは本を読んでおり、ジャンヌと俺はベッドで寝転がってゴロゴロしていた。
「でも良かったのユーマ?」
「なにが〜?」
「鑑定スキルの方が高かったからお得だと思うけど…」
「ああ、うん、別に大丈夫」
そう、俺は鑑定スキルではなく、収納魔法を選んだ。確かに鑑定スキルの方が値段が高くお得で勇者や魔王も持ってる。でも珍しい方がなんかカッコいい…選んだ理由はそれだけだ。
「ほら、こうして出し入れできるし」
俺は収納魔法にしまっていた十握剣を出し入れさしてみせた。うん、充分便利だ。
「まぁユーマがいいなら私はどっちでもいいけど〜」
ジャンヌは何故か自分の事のように嬉しそうにしていた。そしてその横でルナもウンウンと頷いていた。
俺たちは3人とも目的の物を買えた。しかも俺なんて2つも手に入った。俺は十握剣に収納魔法。ジャンヌは魔剣レス。ルナはパワーの魔法。全部合わせると軽く1000万Gは超える。それが15万G。
いや〜いい買い物をした。剣と魔導書、理想的だ。後は鑑定スキルだが、もう別にいい。いや、欲しいは欲しいが流石にもう無理だし、おじちゃんの護衛報酬で5000万Gは無理がありすぎる。なのでキッパリ諦められる。
「明日は何買ってもらおうかな〜」
そう、俺の興味はもう既に明日の『市』にあった。どんな掘り出し物が出るのか楽しみだ。なので今日は早めに寝たいと思う。
「それじゃあおやすみ〜」
「え〜ユーマもう寝るの? 明日には帰るんだし、今日はもうちょっと起きてようよ」
「う、うん…もうちょっと皆でお話ししてたいな…」
2人が中々寝させてくれなかった。途中でゲームをしたり、お話ししたり、夜食を食べたり、と3人で遅くまで起きてました。
♢
朝になり、今日は商人のおじちゃんと師匠と5人で朝食を済ませた。朝食後は宿の精算も済ませた。この後、市に行って報酬分の買い物をしたら昼過ぎにはそのままハルシオン街を出ることになっている。
おじちゃんが精算をしていたら、月影亭の店主が俺の方をチラリと見てきた。
「?」
「ゆうべはお楽しみでしたね」
遅くまで起きて遊んでいたのがバレてた。うるさかったかな?
「うん、楽しかったー!」
「はい、遅くまで起きちゃってました」
ジャンヌとルナは朝からキャッキャっとテンションが高かった。
「…よし、それじゃあ行こうかね」
「フォフォフォ」
精算も終わり俺たちは宿をあとにした。
♢
ルードウィン領最大の街ハルシオン。年に一度、そして数日にわたって行われる『市』は今日、最高潮を迎えた。
俺たちが来た一昨日も人が多かったが、今日はそれ以上だった。
「うわ〜凄いね〜」
「ま、迷子になりそうです…」
「じゃあまた3人で手を繋ごうよ」
ジャンヌの提案で今日も3人仲良く手を繋いで歩くことにした。
「……そうだ! おっちゃん、用を思い出したから先に報酬分渡しておくわ。好きなもん買ったら街の外に来な。馬車で待っとくから」
おっちゃんは逃げた。そりゃ逃げたくもなる。この人の多さだ。
「フォフォフォ、ならワシも護衛として街の外で待ってようかのう」
師匠も逃げた。
「ほいよ、1人1万Gね。あ、少ないとか文句言うなよ。お前さんらの親に、あげすぎるなって釘刺されてんだから」
先に言われてしまった。しかし、これならやはり昨日のうちに欲しい物を買えて良かった。さあて今日は何を買おうかな〜。
♢
数時間後
「お、終わった…」
俺たちはようやく買い物を終えて街の外へと出てきた。流石に疲れたぞ。
「ね〜、疲れたね」
「わ、私もう歩けない…かも…」
大丈夫だルナ、帰りは馬車だ。
「フォフォフォ、こりゃ帰ったらまた鍛え直しじゃな」
逃げた師匠に言われたくない。
「で、何買ったんだい?」
おじちゃんは馬車の中で煙草を吸いながら顔だけは出してきた。出る気はないみたいだ。
「俺はこれ!」
「私これー!」
「わ、私は…!」
「あー分かった分かった…分かったから同時に喋んじゃねぇよ…」
俺たちのテンションにおじちゃんは呆れていた。こんな大人にはならない様に気をつけよう。
結局何を買ったかと言うと…ルナは本を数冊買った。物語や絵本の創作物だったり、ちょっと難しそうな本だったりと、中古の本屋があって嬉しそうに何冊も買っていた。
ジャンヌは魔剣レスに合う鞘を買っていた。後は、ルナと一緒に動きやすそうな服や靴なんかも買っていた。
で、俺はと言うと…ふっふっふっ、皆驚くぞ。
なんと…『雷の勇者に落ちる恋・幻の⑧巻』を見つけたのだ!
しかも、『全能勇者迷宮踏破物語⑤』、『水の勇者とお姫様⑨』、『魔王の俺が勇者に転生しちゃった②』、『火の勇者⑩』と、うちに無かったというか欠けていた本を沢山見つけた。
「あ〜……まぁ、良かったんじゃねぇの?」
おっちゃんは俺たちのテンションの圧に負け、若干引いていた。自分から聞いておいてこの有様だ。全く、お客の要望も分からないから左遷されたのだろう。
「んじゃ、まぁ、帰りますか?」
「フォフォフォ」
「はーい」
「はーい」
「はーい」
俺たちはルードウィン領ハルシオン街を後にした。




