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23話 温泉街の友人

 さて、ここ温泉街ガイアナはそこそこ大きな街だ。

 そして俺もあまり土地鑑があるわけでもないので、あまり名所にも詳しくない。

 ……そこで。


「ラルド、どこに向かっているの?」


 横を歩くチョコに聞かれ、俺は答えた。


「この街にいる知り合いのところ、冒険者ギルドだな」


 そう、俺はこの街にいる知り合いに観光名所を聞きに行くことにした。

 それからそのまま観光に移れるように、精霊三人も連れて来ている。

 ……ちなみにシルリアは疲れが出たのか眠ってしまったので、報告や後始末を終えて宿に戻ってきたミアやサフィアと一緒に休んでいるところだ。


「……まぁ、何かあったらシルリアも任せろって言ってたし。あの二人なら大丈夫か」


 と、そう独りごちているうちに目的地が見えてきた。

 木々を組む独特な東洋の造りで、あちこちに狐の模様が彫られている一際大きな建物。

 冒険者ギルド【妖狐の灯】の本拠地である。


「さて、あいつはどうせこの時間から飲んだくれているだろうけど……おっ、いたいた」


 ギルドに入って中を見れば、併設されている酒場の方に茶髪の青年が座っていた。

 片手にはジョッキを持っていて、明らかに酒が入っている様子だった。


「よう、ジグル。また昼から酒か?」


 そう言いながら近寄ると、青年……ジグルはこちらを向いて人懐こい笑みを浮かべた。


「おぅ、ラルドじゃねーか! 昨晩は闇ギルドからお嬢ちゃんを保護したってここに駆け込んできたけど、そのお嬢ちゃんは元気なのか?」


「今は疲れて寝てるけどな。でもミアやサフィアが一緒だから問題ない」


「ああ、あの聖剣持ちと【抗魔力】スキル持ちの二人が一緒ならな。遺跡に潜むドラゴンが出たって問題なさそうだ。……さて、お前はお嬢ちゃんを無事助けられて、俺も闇ギルドの連中を潰した懸賞金が入ってお互い良いことがあったっていうのは分かった。……でもよ」


 ジグルは俺の後ろにいた精霊三人を指して、目を剥いた。


「おいラルド、この可愛い子ちゃん三人組はどういうこった!? お前昨日助けた子は銀髪って話だったじゃねーか。……ケッ、まさかナンパで引っ掛けてきたってクチかこの色男モドキめ!?」


 ジグルは何故か、妙に不機嫌だった。


「おいおい何言ってんだよ、そんなことする訳ないだろ。と言うかそもそも、ジグルだってこの前会った時に彼女いるって自慢してきただろうが」


 ……すると、ジグルは卓に突っ伏しながら短く答えた。


「……別れた」


「……御愁傷さま」


 俺が女の子を連れていることに過剰反応した理由はそういうことか。


「ま、まあ前置きはこれくらいにしてだ、紹介するよ。マロンにチョコ、それにプラムだ。三人とも実は精霊で、俺の店を手伝ってくれてるんだ」


「ご紹介に預かりました、マロンです」


「チョコ〜」


「妾がプラムだ。マスターの友人よ」


 各々自己紹介した精霊三人を見て、ジグルは頷いた。


「精霊……なるほど精霊か。だから三人ともこんなに可愛いと。……でも精霊が武器職人を手伝うって、この子らはブラウニーって訳でもないんだろ? どれ、ちょっと見てみるか」


 そう言いながら、ジグルは瞳に魔力を集めてスキルを行使した。

 ジグルは剣士だが、持っているスキルは【魔眼】系のものだ。

 中でもジグルの【魔眼】は見た相手の魔力の様子などから、その動きを先読みできるタイプのものである。


 聞けば奇襲や斬り合いに回避まで、先読みのメリットは様々な面で活かされているとか。

 そしてその能力の副次的なものとして、ジグルは見た相手の魔力の質を「色」として見ることができるらしい。


 ジグルはしばらく唸ってから、驚いたように目を見開いた。


「んー……って、何だこの魔力量!? 三人とも【聖剣】並みだし、ちょっと見たことない魔力の色してんな……虹色かこれ? こんな色の魔力を持った精霊、見たことも聞いたこともないぞ」


 ははぁ〜と半ば呆れたような声を漏らすジグルに、俺は言った。


「三人ともちょっと特殊な精霊なんだよ。……で、そろそろ本題に移りたいんだが」


「あー、言いたいことは大体察したぞ。どうせ精霊たちとのデートコースをご所望とかだろ?」


 自信ありげに言ったジグルに、俺は苦笑した。


「デートかどうかはさておき、この辺の観光名所でも教えて欲しくてな」


「やっぱしな。土地鑑のないお前のことだからそんなことだと思った。まぁそういう話なら地元がここの俺に聞きにきたのはいいが……」


 ジグルはふと、周囲の様子を伺ってから小声で言った。


「……一応、街を歩くなら用心しておけよ? 昨日潰した【双頭のオロチ】の残党や関係者が少なからずまだうろついているかもしれない。ミアやサフィアに守られている銀髪のお嬢ちゃんはともかく、お前がお礼参りに遭わないか心配だ」


「んっ、心配してくれてるのか?」


 聞くと、ジグルは笑いながら言った。


「するに決まってんだろ。お前の武器には新米の頃よく世話になったし、わざわざこの街まで何度も届けてくれた恩も忘れちゃいない。……また何かあったら遠慮せずに頼ってくれ。これでも今はA級冒険者だ、昨日の晩みたく力にもなれる」


「ああ、また何かあったらよろしく頼む。それと昨日は改めて、ありがとうな」


「今更かしこまるなよ、良いってことよ。それじゃお前も、せいぜい精霊三人を上手くエスコートしろよな」


 ジグルはそう言って、俺にこの街のことをあれこれと聞かせてくれた。

 そして俺たちはジグルから話を聞いてから、冒険者ギルド【妖狐の灯】を出たのだった。


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