17話 【聖剣】回収の報酬
【聖剣】を回収した翌日。
俺は店に来たミアやサフィアから、ずしりと重い金貨の詰まった袋を渡されていた。
「ちょっ、何だこの大金!?」
「何って、ラルド兄さんや精霊たちが【聖剣】を回収してくれたことへのお礼だよ? あっ、勿論ギルドから出たお金だから安心してね」
ミアがあっけらかんと言いつつ、ギルドマスターからの書状などを俺に手渡してきた。
……なるほど、それらを見ると確かにギルドから出た報酬金らしかった。
「でもこれ、店の儲けの何ヶ月分だ……!?」
中々恐ろしい金額を渡されて戦慄いていると、サフィアが言った。
「そう恐々とすることもない。寧ろあなたのお陰で我がギルドは新たな【聖剣】を確保できた。【聖剣】回収はギルドを問わず、基本的に早い者勝ちだからな。寧ろあれだけの手際で【聖剣】回収ができたのだから、これくらいは当然だとも」
さらに聞けば【聖剣】が増えればギルドの勢力図も変わってくるとか、報酬の多い国からの大きな依頼の数も増えたりするのだとか。
【聖剣】は遺跡の至宝とも呼ばれるそうだが、その呼び名は伊達ではないらしい。
「やっぱり【聖剣】って色んな意味ですごいんだな……。力にもお金にもなるってか」
俺が金貨の詰まった袋の中身を見ながらそう言うと、後ろから様子を伺っていた精霊たちが瞳を輝かせて口々に言った。
「ご主人さま、今夜はハンバーグを山盛りにしたいのですが構いませんか?」
「あ、チョコはステーキ」
「妾はいつもよりちょっと良い酒を飲んでみたいぞ、マスター!」
武器だった頃はできなかったことを好む精霊たちは、特に食事に対しては貪欲だった。
俺は苦笑しながら言った。
「分かった分かった。【聖剣】を回収できたのは皆のお陰だから、今夜はいつも以上に良いものを食べよう」
「おぉ……! 話が分かるマスターで妾は嬉しいぞっ!」
プラムは感極まったのか、ひしっと抱きついてきた。
……この子、出るとこは出ているので自分の破壊力をもうちょっと理解すべきだと思う。
精霊と分かっていても、年頃の男としては中々悶々とさせられてしまう状況だ。
それと何より……!
「むぅぅ……またそうやってわたしの前でぇ……」
ミアがジト目で若干むくれていた。
「……プラム、ちょっと一旦離れて……な?」
俺がそう言うとプラムもミアの不穏な空気を感じたのか、渋々と言った様子で離れていった。
「ラルド、あなたは中々気が多いようだがミアの前ではもう少し気をつけるのだな。ミアは中々嫉妬深いぞ?」
サフィアは何故かくすりと微笑んでいた。
俺は色々不可抗力だと思った。
「しかし何はともあれ、改めて礼を言わせて欲しい。あなたのお陰で【聖剣】回収も済んでわたしたちも大分落ち着いた。本当に感謝している」
「いいって、友達の頼みだったし。持ちつ持たれつで行こうってこの前も言っただろ?」
「ああ。……ああ、そうだったな」
そう満足げに呟くサフィアに、俺もどこか暖かな気持ちになった。
出会った当初、サフィアは硬い女騎士といった様子だったけれど、ここ最近はいくらか雰囲気が柔らかくなったような気がする。
こんなふうに砕けた感じになってよかったな……と思っていたところ。
「……。じぃ〜っ……」
ミアは俺どころかサフィアにまでジト目を向けていた。
そんなミアを見て、サフィアは何を思ったのかにやりと笑った。
「大丈夫だミア、わたしとラルドは多分そういうことにはならない」
「た、多分!? 多分じゃまずいですよサフィアさんーっ!?」
少しだけからかう様子で言ったサフィアの「多分」に、ミアはまた慌てた様子で反応していた。
大袈裟だなぁと苦笑しながら、俺はその様子を見守っていた。




