18話 【精霊剣職人】と休息
遺跡から【聖剣】を回収してしばらく。
今夜も売れた武器の補充分を作ろうと、閉店後に作業場へ入って【精霊剣職人】スキルを起動させてウィンドウを開いていたところ。
「ご主人さま、こんな夜分まで働かれて大丈夫なのですか? 少し休まれてはいかがでしょうか?」
ふと作業場へ入ってきたマロンは、不安げな表情と声音でそう言った。
「大丈夫だよ、冒険者を目指していた頃に鍛えていたから体力はそれなりにあるつもりだし。……どうかしたのか?」
聞くと、マロンはうつむきがちに言った。
「……その、わたしはご主人さまが心配なのです。最近お店が繁盛しているのはとてもよいことですが、この前の定休日は遺跡へ行って休めなかったではありませんか。そしてその前の定休日は、武器の素材を仕入れに行くと言って遅くまで戻りませんでした。……先日ギルドからもらった報酬もあることですし、少しまとまったお休みを取られてはいかがですか?」
「まとまった休みか……」
言われてみれば、ここ最近はあまり休めていない気がする。
充実した日々が続いて特に疲れも感じなかったが、実際にはマロンの言う通りに中々体が休めていなかったのかもしれない。
……と、そう考えていた時。
「……チョコも心配。ラルド、ちょっと頑張りすぎな気がする」
「妾も【精霊剣】となって日が浅いものの、マスターがよく働いているのは分かる。ここはマロンの言う通り、少し休むのもいいと思うぞ?」
マロンに続いて、チョコやプラムも作業場へ入ってきた。
チョコはいつも通り眠たげな表情ながら少し心配そうにしていて、プラムも腕を組んで少し困り顔といった様子だった。
……三人にここまで言われては作業を強行する方が野暮だろうかと、俺は心を決めた。
「分かったよ、少しまとまった休みを取ろう。オーダーメイドの依頼も昨日で終えてあるし、ちょうどいいかもしれない」
そう言うと、精霊三人はほっとした様子になった。
「聞き入れてもらえて安心しました。それにご主人さまの【精霊剣職人】スキルは意外と魔力を消費するものですから。もしこれ以上頑張られるつもりなら、意地でも休んでいただくつもりだったのですが……」
「いや、三人にこれ以上心配をかけるのも悪いからな。ここは今後のためにもゆっくりと体を休めるさ。となると、一週間くらいは部屋でゴロゴロすることになるのかな」
そう言ってみたところ、プラムが何か閃いたように口を開いた。
「そうだマスター、人間が体を休めるには温泉なるものがいいと聞いたぞ。ここはひとつ、湯治に行くというのは?」
プラムの言葉に、マロンとチョコが微笑んだ。
「よい案ですね。ご主人さまにしっかりと疲れを癒していただくべく、温泉旅行というのもありかもしれません」
「チョコもいいと思う〜」
「温泉旅行か、確かにいいかもな」
よく考えたら最近は仕事ばかりで旅行にも行っていなかったし、中々の名案かもしれない。
となれば、善は急げとも言う。
それから俺たちはすぐに向かう先を決め、明日の出発に備えて早めに床につくことになった。
……のだが。
「チ、チョコ? どうかしたのか?」
「ラルドがちゃんと眠れるように、チョコが抱き枕になる」
ふと俺のベッドに潜り込んできたチョコが、そんなことを言い出した。
いやそこまでしなくてもと言いかけたが、これもチョコなりに俺の身を心配してくれているのだろうと受け入れることにした。
「それじゃあ、一晩頼むな」
「ん、任せて」
体が小さいチョコは抱き心地もちょうどよく、暖かくて甘い匂いがした。
チョコの方から抱き付いてきたのを感じながら、俺は腕の中のチョコの暖かさもあってすぐに寝入ってしまった。




