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12話 【精霊剣職人】と武器の修復

「……ん、何だこれ?」


 サフィアに買われたブロンズソードの補充分を作ろうとして、【精霊剣職人】スキルのウィンドウを開いたところ。

 端の方に『修復』という文字が現れていた。


「こんなの前はなかったのにな。スキル進化時みたく、押すと何か起こるとか?」


 そう言いつつ軽く触れてみるが、特に何かが変わった様子もない。

 それから試行錯誤していると、店の掃除をしていたマロンが作業場に戻ってきた。


「ご主人さま、何をしているのですか?」


 小首を傾げたマロンに、俺はウィンドウを見せた。


「この修復ってやつ、前にはなかったんだけどさ。これって何だか分かるか?」


「おお……これは!」


 マロンは嬉しそうな様子で言った。


「おめでとうございます。どうやらこれは、ご主人さまの【精霊剣職人】スキルのレベルが上がったことで現れたもののようです」


「おっ、そうなのか?」


「はい。先日のサフィアさんとの戦闘、あれがレベルアップのきっかけにもなったのでしょう。わたしたち【精霊剣】を使用していた訳ですし、十分にあり得るかと」


 なるほど、【精霊剣職人】スキルのレベルは【精霊剣】を使っていれば戦闘でも上がるのか。

 ……危ないことはあまりしたくないので、このレベル上げ方法は常用できないかもだけれど。


「それでこの修復っていうのは、文字通り武器を直せるのか?」


「そのはずです。何でしたら、わたしを診てみませんか?」


 そう言って、マロンはブロンズソードの姿になった。

 俺はマロンを握って、ウィンドウの『修復』を押してみる。


「……おぉ、何だかマロンの状態が頭の中に流れ込んでくるな」


 修復の前段階として武器の調子を確認できるということなのか、マロンの様子が手に取るように分かった。

 刃こぼれや曲がりはないようだが、先日【聖剣】と打ち合ったことで疲労が溜まっているらしかった。


「そっか、マロンも頑張ってくれたもんな。疲れて当然だよな」


 いつもありがとう、と刀身を優しく撫でるとマロンから「ひゃうっ!?」っと高い声が漏れた。


「……マロン?」


「す、すみません。少しくすぐったくて……」


「あ、ああ。悪かった」


 ……何だろう。

 今のマロンの声が少し艶っぽくて、剣を撫でただけなのに妙な気分になりそうだった。

 いやいや、別に女の子に乱暴した訳でもないのに。


「……じ〜っ」


 ……しかしチョコはそうは思ってくれていなさそうだった。

 チョコは物陰から、目を細めて俺を見つめていた。


「チョ、チョコ。どうしたんだ? 風呂に入ってたんじゃなかったのか?」


「……お風呂から出たら変な声がしたから。来てみたら、ラルドとマロンがいちゃついてた。……ずるい」


 チョコはそう言って、俺の方へと駆けてきた。


「チョコも撫でて? でないと、ミアに今のこと言っちゃう」


「おいおい、誤解を招くからそれは勘弁してくれよな」


 俺は苦笑してチョコの頭を撫でつつ、試しにウィンドウの『修復』を押してみる。

 するとチョコの状態の方も、すぐに分かるようになった。


「チョコは遠距離武器のブラッククロスボウだからか、あまり消耗してないみたいだな。修復箇所も特にはなしと」


「……?」


 チョコは首を傾げていたが、頭を撫で続けると気持ちよさが勝ったのかすぐに目を細めた。


「そう言えばわざわざ『修復』って書いてあるんだから、マロンの疲労を回復させる方法とかないのか?」


 そのままウィンドウを弄ってあれこれ調べていくと、ウィンドウに武器の修復方法が表示された。

 どうやら通常の武器やアーティファクトの類は、スキルで作った炉に入れれば直ってしまうらしい。

 それから肝心の【精霊剣】は……。


「精霊を……マッサージ!? 嘘だろ!?」


 思わず、口に出してしまった。

 どうやら【精霊剣】は武器から精霊状態に変身させ、その上で手に魔力を込めて全身をほぐせば疲労が抜けると言う寸法らしい。

 ……説明を見れば、精霊状態でのコンディションがそのまま武器状態にも直結するから、とかいう理由のようだが。


「まあ、物は試しって言うしな。なあマロン、ちょっと試したいことがあるんだけど……」


 マロンの疲労をそのままにもしておけないので、ウィンドウを見せて事情を説明してから寝室のベッドへ移動。

 うつ伏せになったマロンを、俺はウィンドウの指示に従い揉んでいく……のだが。


「うっ、くぅっ……ご、ご主人さま。そこは……っ!!」


 ……何だこれ。

 精霊状態のマロンは可愛い上に出す声もより艶っぽくなり、何だかイケナイことをしている気分になってきた。

 ついでにチョコが「気持ち良さそう、次チョコもね」とせがんできて、いよいよまずいかもしれない。


「で、でもこれでマロンの疲労が抜けるなら安いもんだ。普段から頑張ってもらっているんだし、これくらいは……!」


「ご、ご主人さま……っ!」


 俺は自分の顔が赤くなるのを感じながら、ただひたすらに【精霊剣職人】スキルのウィンドウの指示に従いマロンの体をほぐしていった。


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