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第49話 闘技大会:Ⅶ(二日目)

時間は少し進み、試合開始直前となる。

マスターピースを相手取るのは6人組Bランクパーティ。構成は剣士、斧使い、槍使い2人、そして弓使いと魔術師だ。

4人で6人を相手取らなければならないため、その表情はやや固く、緊張を窺わせる。

両者が所定の位置につくや否や、カウントが始まる。

0になるとともに、剣士、斧使い、槍使いの3人が駆け出す。一方のマスターピースはというと―――


リューが宙を舞っていた。


エルが大剣の上に彼を乗せ、膂力に任せて投げ飛ばしたためだ。


リューは滞空しながら風魔術を使い、体勢を整えながらも加速して一直線に敵へと向かっていく。


延長線上に居たのは剣士だった。彼は回避を一瞬考えたが、体勢が崩れることに懸念を抱き、盾で受け止めるという判断を下した。勢いを削ぐことができれば、仲間2人が十分に対処できると考えたからだ。


一方、滞空しているリューはというと、自らを狙って放たれた矢を弾き落としたところだった。そして直後、更に加速をする。

剣士が構えた盾を勢い良く踏みつけ、止まるどころか踏み台にして剣士の背後へと跳ぶ。


慌てて振り向く剣士。それに対してリューは狙いすましたように魔術を放つ。


ただ一言、『水』と呟くだけで。


彼に攻撃しようとしていた斧使い、槍使い、そして剣士の顔面を覆うように水球が出現する。

突然息ができなくなった彼らは、苦しみながらも咄嗟に水を取り除こうと指をかける。

が、指で水を掴む事など当然出来ず、憐れに僅かな水滴を散らすのみだった。


その光景に危機を感じたのは、後衛に留まったもう一人の槍使いだった。日頃から猪突猛進な気質がある彼は、後衛を守る役目も忘れて駆け出す。

それを視界に収めつつ、リューは悠々と着地―――すると同時に再び飛来した矢を斬り払う。


体勢を整え、走り来る槍使いを正面に見やる。


しかしここで、最奥に位置する魔術師の元から、風魔術らしきものが高速で飛んでくるのを確認した。

身構えるリューだったが、それは彼を避けるように通過していく。まさかとリューが振り向くと、丁度風魔術が水を散らしているところだった。

前衛の3人が解き放たれる。


このままだとリューは4人を相手取ることになりそうだが―――


そのタイミングで、リーナが宙を舞う。

先ほどで感覚を掴んだのか、またはリーナが軽いからなのか、その飛距離はリューの比ではない。前衛の戦いの場を飛び越え、魔術師と弓使いのいる場所までも届きそうだ。

こちらへ走り寄っていた槍使いは、これはまずいとUターンしていった。


その光景に一瞬できた間を見逃さず、リューは前衛3人に先制攻撃を仕掛ける。

魔術で十余りの火弾を作り出しつつ、双剣で剣士に攻撃を浴びせていく。

斧使い、槍使いの2人は武器で火弾を防ぐしかないが、剣士は盾も持っているからだ。

加えて剣士にも2つほど火弾をけしかけることで、ダメージは着実に蓄積していった。


実際は1人で魔術を使いつつ双剣を振るうという同時並行の仕事をこなしているため、リューはあまり余裕が無い状況ではあったのだが。

しかしそれもエルが前線に追いつくことで負担は減った。

が、そうは言っても人数不利は否めない。リューは仕留めに行くのは他に隙を見せることになると考え、水魔術で水球をぶつけるなどの牽制に留めることにした。


一方のリーナであるが、空中で案の定矢を射掛けられる。

だが、なんと驚くべきことにそれを彼女は素手で掴み取り、魔術師に目掛けて投げつけた。

普段から投げナイフも使うことがあるため、その要領だったのだろうか。

投擲された矢は意外な威力で、かつ正確に魔術師へ向かう。たまらず避けるが、詠唱を乱す結果となった。

矢が通じないことを確認するや否や、弓使いは腰についた鞘から大ぶりのナイフを引き抜く。それが彼のサブウェポンであるようだ。

着地を狙い、ナイフを振るう。

リーナはそれを転がりながら避け、しなやかな動きで身体を起こす。そして両手にナイフを握ると、容赦なく弓使いに攻撃を加えていった。

魔術師は短い詠唱で低威力の魔術を発動させるが、リーナはどこに来るか分かっているかのように容易に回避を繰り返し、弓使いを攻め続けた。


だがその状況も長くは続かない。槍使いが戻ってくると、リーチの差もあってか、リーナは積極的には攻められなくなった。

回避をするか、1対1になるような位置取りをして、時間を稼ぐ。


そして戦況が膠着し始めるころ、ティファの魔術が発動する。


使用されたのは、氷魔術。闘技場の地面がパキパキと音を立てながら凍りついてゆく。瞬く間に氷が広がっていき、周囲一帯の気温も急激に下がっていくのを肌で感じるほどだ。前衛の皆は足元を氷に包まれる。

先程リューが水魔術を使っていたのは、このための布石もあってのことだった。


足全体、酷い者は腰の上まで硬い氷に覆われた彼らになす術は無い。

リューが1人を、エルが2人纏めて薙ぎ払い、戦闘不能に追いやった。


前衛は全て片が付き、残るは3人に。


リューがリーナの元へ合流し、そのタイミングで回避と牽制に徹していたリーナも攻めに転じる。


投げナイフを魔術師へ投げつけ、的確に脚へ当てる。

痛みに呻く魔術師であったが、意地を見せたか詠唱を止めることは無く、そのまま魔術を完成させる。

地面から生じた土槍は、リーナ目掛けて一直線に伸びていく。


が、その矛先はリーナに当たることは無く、不自然に逸れる軌道を描いた。


なぜ、と驚く魔術師が目にしたのは、地面に片手をつけたリューの姿だった。

土魔術の発動を予期した瞬間に、彼はその魔術への干渉を試みた。

魔術師が詠唱をし、魔力を注いでいるタイミングで、地面に魔力を注ぐ。魔術師の発動する魔術に自分の魔力を紛れ込ませることで、不十分ではあるものの魔術の制御を乗っ取ったとも言える行為だ。

ちなみに、技術的にもそこそこの難易度があるが、この手法には大きなデメリットがある。ひとえに、消費する魔力量の膨大さだ。

一度事象が固定され、発現するはずのものを無理やり捻じ曲げる。一般的に、発動する魔術に注ぐ魔力の5〜10倍の魔力がそれには必要とされている。

非常に効率の悪い魔術阻害。それをリューは豊富な魔力量を以て行ったのだった。


そしてその事に考え至る前に、魔術師はリーナの猛攻によって沈黙した。



―――と、さすがにもう無理だと察したためなのか、残りの2人は揃ってギブアップを表明。


彼らの4回戦進出、そして最終日での出場が決まった瞬間であった。




試合が終わり彼らが観客席へ戻ると、ショーンとセレスは待ち構えるようにして出迎えをした。そして興奮した様子で口々に称賛の言葉を浴びせる。

苦笑しつつも賛辞に礼を述べる彼らだったが、どうにも周囲から視線がしばしば向けられていることに気付く。

耳を澄ましてみれば、どうやらリュー達4人の顔を覚え始めた者が一定数出てきたらしい。その前の試合では奇襲が主であったものの、先程の試合で見せた氷魔術で実力を確信したのだろう。

興味や期待の目で見ている者も多いようだ。


そしておまけではあるが、解説の2人がマスターピースの試合を見られなかったことをいたく残念がっていたらしい、という情報も入ってきた。

上にかけあって次の試合以降は必ず実況解説に入れるようにする、と息巻いていたのだとか。


その後の4人は連れ立って残りの試合の観戦をしながら過ごす。珍しい魔術を見るや、ティファが多弁に語るのがお決まりとなってきていた。試合で昂った気持ちを冷ますように、時間は2日目終了までゆっくりと流れていった。







2日連続で投稿しましたが続きはまだできてません()

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