第27話 修練所
なんというか説明回みたいな………
次話では戦闘シーンもあるかと思います……。今回はこれでご勘弁下さい……。
ギルド長からのクエストを終えて報酬を受け取った僕達は、ベンチに座って一段落ついていた。
「それで、午後からの訓練はどこでやるの?」
僕の質問に、3人の動きが停止した。
「え…………」
リーナが驚いた表情でこちらを見ながら、声を洩らした。
「修練所をご存知無い………!?」
眉間に皺を寄せたエルが、ギギギと音がなりそうな動作で振り向き、言う。
「ご、ご存知無いよ………?」
修練所、なんて便利そうなものがあったなんて………!!
「………情弱……」
ティファ、憐れむような眼でそんな事言わないでくださいお願いします………。
「はぁ………お前、しっかりしてるようで偶にうっかりしてるよな……。」
「い、いつもうっかりしてるエルに言われたくないよ!」
「う、言い返せねぇ……。」
「糾弾弱っ!!…………で、その修練所ってどんな施設なの?」
僕の問いに口を開いたのはリーナ。
「えっと……リゲルフィアの南西にある、国直営の公共施設でね、比較的安価で訓練ができる所なの。冒険者はもちろん、王宮仕えの騎士も訓練に来るんだよ?」
なるほど。総合レジャー施設的な………あれ?違う?
「ありがとうリーナ、よく分かった。」
お礼を言い、60度の角度でお辞儀をする。
「そ、そんなお礼言われる程の事じゃないよ……。誰でも知ってるようなことだし……」
リーナが謙遜しながらそう応えるが、僕の心がダメージを受けた………。誰でも知ってること聞いてごめんね………。
「おい、そんなちっさくなってねえで早く行こうぜ?」
しゃがみこんで頭を抱える僕をエルが催促し、一行は修練所へと向かった。
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「あ、ここ?」
20分ほど歩いた所で、修練所らしき大きな建物が目に入ったので指を指す。
「………いや、そっちじゃなくてあっちだ」
エルの指はその建物のすぐ右を指し示し―――――
「小さくない!?」
――――小屋程度の大きさの建物で止まった。
「………あれは入り口だけだ。施設は地下にあるんだよ。………初めてきた奴はよく隣と間違える……っていうか間違えさせるためにあの外観らしいぞ……?」
「……国の施設なのになんでそんな捻くれてるの………?」
「……分からん。計画練った奴が捻くれ者だったとか、軽くボケてたとか……色々説はあるけどな。」
戸惑いつつも、修練所に入る。
「おう、よく来たな。若えのに鍛錬に来るとは関心なこった。」
入ってすぐ、受付に座っている40歳くらいの男性が話しかけてきた。
「はあ、どうも」
軽く会釈。
「んで、ここに来るのは初めてだよな?説明聞いとくか?」
「いや、別にいらね「説明、お願い」
面倒だったのだろう、説明を省こうとしたエルにティファが言葉を被せる。
「あー。んじゃあ端折りつつ説明してくか。俺はバルドっつう名前で、えーっと……ああ、ここの施設は地下1……3階?とか15階とか大体そんくらいあってな、来た奴の鍛錬内容の危険度とかによって階層が分けられてる……はずだ。たしか。」
……………いや、アバウトすぎる………。
たしか、とか大体、とか………説明をする人の台詞じゃないよ……。
まあ、僕は特に指摘しないけどね(多分無駄だし)。
「えっとな……、下の階に行くごとに壁や床に掛かってる障壁魔術がたぶん強くなってっから、この紙にきちんと内容を書いて……浅い階じゃあ強い魔術なんかは使わないようにな?」
バルドさんが一枚の用紙を見せてくる。
「そこに氏名、年齢、鍛錬内容、あとは……ああ、時間か。その4項目を各々記入してくれ。……って、値段言ってなかったな。えーと、地下1階から9階が1人1時間あたり1000ニル、それ以降は1時間2000ニル………だったと思う。」
「ええと………大丈夫なのか……?その説明正確か……?」
はっきりしないバルドさんの言葉にエルが心配そうに聞く。
「んー……まあ、大丈夫だろ。……………たぶんな」
おい、結局最後あやふやじゃないか。
「まあ、んなことはどうでもいいだろ。お前らさっさとこれ書いちまえ」
そう言いつつ、用紙をピラピラと振る。
「あ………はい…」
リーナがそれを受け取り、受付の傍らに置いてあるペンを手に、各項目を記入していく。
暫しの間、カリカリというペンの音だけが響く。
「書き終わりました」
「おう。えーと……身体強化魔術に重力魔術………模擬戦と……治癒魔術、か。………こりゃあ、10階から下の階だな………。」
「やっぱり重力魔術ですか?」
複合魔術だし、周囲への影響は大きいから強い障壁じゃないと危ないんだろう。
「まあ、それが大きいが……身体強化魔術も結構調整が難しいからな。低い階で壁に埋まられても困る」
………壁に埋まるとか何そのシュールな光景……。
「時間は……5時間か。じゃあ一人当たり1万ニルになるな。ほらほら、さっさとよこせっ」
なんだそのキャラ。と言いたいのを我慢して、それぞれが銀貨を出していく。
「毎度あり。んじゃ、ちょっくら待っててくれ」
銀貨を受け取りながらそう言うと、バルドさんは別の書類に目を通しつつ何かを書いていった。
「んー………あ、ここにすっか………。んで、これとこれを書いて………よし。お前らは地下12階の4部屋目だ。このカードを入り口に差し込めば部屋に入れる。時間になったらブザーが鳴るようになってるから、10分以内に戻ってくるようにな。戻って来なかったら俺が行くハメになっちまうから、手間は掛けさせねえでくれよ?」
バルドさんがカードを渡してくる。
「あ、はい。分かりました」
言いつつ、リーナがそれを受けとる。
「下に降りるにはその昇降機を使え。数字を押せばその階まで運んでくれるからな」
指差された方に目をやると、格子戸のついたエレベーターらしきものがあった。
こっちでは電気的な技術は殆ど発達してないし、恐らく何らかの魔道具を使って作ったんだろう。
そんな事を考えながら、昇降機に乗り込む。
ぬぅ、見れば見るほど(一昔前前の)エレベーター。………いや、僕がこっちの世界に来て14年経ってるし、あっちではもう二昔前とかになるのかな?
思いつつ、地下12階のボタンを押す。
「じゃあ、またな。頑張れよ」
格子戸が閉まり、降下が始まる。
笑みを浮かべるバルドさんの姿はすぐに見えなくなった。
読んでいただきありがとうございます。次話、修行するぞ回になります。