第22話 魔道具
すみません、短めです。
「デートだねぇ」
「なっ…ぁ……」
宿に荷物を置いて、魔道具店への道中にそんなことを言ってみた。本当にデートできたらどんなに良いかはと思うが、この発言はもちろんジョーク。
「冗談だよ」
顔が茹でダコ状態のリーナを横目に見ながら言う。
「ぁ………そ、そっか……。」
「そういえばもうそろそろ昼だし、何か食べてから行く?」
話題を変えてそう聞くと、リーナは考え込んだ表情で言った。
「んー……どっちでも良いんだけど………どうする……?」
………僕もどっちでも良いんだよね……。
決めかねている僕達の下に、第3者の声が届いた。
「こんにちは、美しき冒険者のお嬢さん方。迷惑でなければ私とランチへ行きませんか?」
僕達は同時に声の方向を見る。
いかにも騎士といった恰好をした青年が立っていた。身長は170後半といったところで、顔立ちはかなり整っており、所謂イケメンである。
えっと………ナンパ……みたいな軽い感じじゃないけど……むしろ紳士的な感じで好感は持てるけど………。
「あ、僕男ですから」
「なっ!?」
うわー、何そのショック!!って感じのリアクション。こっちがショックだよ。
「も、申し訳ない。その………お二方共に美しかったのでてっきり……。」
まあ、リーナはかなり可愛いからつい声かけたくなっちゃうかもしれないけどさー。僕は当てはまらないじゃん。それに服装で男って分からないかな?失礼しちゃうなー。
「た、確かに………男物の服ですね……。」
あ、しまった。声に出してたか。………リーナが恥ずかしそうにモジモジしているのはご愛嬌ということで。
「と、いうことで、出直してきやが……ってください。」
そう言うと、再び魔道具店へと歩を進める。騎士はしばらく呆けたように立っていた。
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街の北側に20分ほど歩き、お目当ての店に到着した。
看板には『工房ナタリー 魔道具販売・修繕・製作依頼承り中』とある。
女性が入りやすいようになのか、外見は喫茶店のような感じの装いだ。
リーナはというと、目を爛々と輝かせて一直線に入口へ向かっている。
入口のドアを開くと同時にベルが鳴る。
「はーい、いらっしゃいませー。ごゆっくりどうぞー。」
ベルを聞きつけたのだろうか、奥から間延びした女性の声が聞こえてきた。
20代であろう、小柄な女性店員(?)が姿を現す。
「店主兼店員兼魔道具職人のナタリーですよー。ご自由にご覧くださーい。」
ご自由に、と言われた途端、リーナが魔道具を見るためにそれらが置いてある棚に移動した。………は……速い……!
ていうかこの人がナタリーさんなのか。色々兼ねすぎだと思う。
「おやー?男性のお客さんとは珍しいですね。恋人ですかー?」
ナタリーさんが僕に声を掛けてくる。
「恋人ではなくて、パーティー仲間です。何か買うつもりじゃあ無いんですけど付き添いというか、どんな物があるのか見てみたくて。」
「なるほどー、つまりは冷やかしなわけですねー。帰っ……ゆっくりしていってくださーい」
ちょ、本音が垣間見えたんだけど。
「今明らかに『帰ってください』って言い掛けましたよね?」
「言ってませんよー。言いがかりはやめてくださいこのカs……お客様。」
「暴言が4分の3聞こえてるんですけど!?」
これはヒドい。
「うるさいですよこのゴミ……あ、いえ、お客様」
「完璧に暴言言い切った!!」
「じゃあ、ご自由にどうぞー。何かあっても面倒だから呼ぶんじゃな………いえ、何かあればお呼びくださーい。」
「働く気無さすぎる……!!」
店主としても店員としてもアウトだと思われる台詞を残し、ナタリーさんは奥へと引っ込んで行った。
………あの人何しに来たんだ……?
疑問を抱きつつ、店内に所狭しと陳列されている魔道具に目をやる。
『妖精の翼』63000ニル
風魔術補助・効果小
『天使の羽根』150000ニル
光魔術補助・効果中
『妖精の翼』はブレスレットで、魔道具(以前母に見せてもらった)特有の無骨さは微塵もない、銀に細かな細工が施された可愛らしいデザイン。
『天使の羽根』はネックレス型で、銅色のチェーンの先に1センチ程の赤い宝石らしきものが付いている。
「……この宝石って何なんだろ……。」
気になったらすぐ行動。スキル:鑑定を発動。
魔力鉱石
純度:43.138%
成分:魔力鉱石43%、酸化アルミニウム16%、二酸化ケイ素11%、炭素7%、酸素6%、その他16%
宝石じゃなくて魔力鉱石……か。
ブレスレットの方もよく見ると小さな石がはまっている。多分魔力鉱石だろうけど、色が違うのは純度なんかの関係なのかな?
………あ、そういえばリーナは……?
店内を軽く見回すが、姿が見当たらない。
「もしかしてもう外に―――出てなかったか…。」
棚の前にしゃがみ込んでいるリーナを発見。その目の前にはひとつの魔道具があり、そこに熱視線が送られている。
「…リーナ?」
僕が声を掛けると、リーナはピクリと小さく肩を震わせてこちらに目を向けた。
「あ………リュー……?」
「どうしたの?何かめぼしい物は見つかった?……今見てたそれかな?」
「うん。………でも……」
再びリーナが魔道具に目を向ける。
白いブレスレットに、銀色の輝きを帯びた魔力鉱石がはまった魔道具だった。
『竜の息吹』436000ニル
光魔術補助・効果大
光魔術……ああ、治癒魔術か。
それにしても………竜の息吹か。良い名前だ。
「まだお金足りないから………もうちょっとだけ眺めてようかなって思って。」
ああ……。確かに。43万はキツい。……けど、それなら―――
「それ、買ってあげるよ」
「………え………?」
「ほら、僕リンコマの一件で結構貰ってるし。分けようとしたら3人とも拒否しちゃったから。」
「……で、でも……いいの?」
「うん。リーナが必要だと考えたんなら、買っといた方がいいと思う。『思い立った日が吉日』って言うしね」
「うん………えっとー………?」
ああ、この諺は分からないかな。
「何かを思い立ったらその日のうちに行動に移すのが良いっていうこと。」
「そっか………それじゃあ……お言葉に甘えて……!!」
嬉しそうにそう言うリーナの笑顔は天使のようだった。




