第11話 準備
主人公のキャラが若干崩壊してるかもしれません……
王都リゲルフィア。
34の街や地区からなるアルテイル王国の中心地。
貴族や王族はもちろん、異国の民や商人など多くの人で溢れる流通の拠点である。
王都で取引される金は年間数兆とも言われるという。
ギルドや様々な商店、公の施設も他の街とは比べものにならない規模である。
それが、王都。
――――と、リーナから聞いた。
王都に行きたいと宣言したリーナであったが、僕が何それ?と言う表情をしているのを見て大いに頬を膨らませ、説明を始めた。
説明終了後、「こんな一般常識、どうして知らないの!?」と怒られた。
ここで、興味が無かったから、なんて答えようものなら恐らく更に怒られる。目を輝かせて説明したリーナは王都に何かしらの憧れ?がある様子だし。
何と弁明するか迷った挙げ句、結局沈黙。
ジト目でしばらく睨まれた。
話しながら移動していたわけだが、昼過ぎでお腹が空いてきたため、リーナに声を掛けて近くの食堂に入った。
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「えっと……そんなに食べきれるの………?」
食堂で10品くらい注文したところ、リーナが心配そうに聞いてきた。
午前中の戦闘でそこそこ動いたし、魔力もそこそこ減ってるから回復促進使いたいし、カロリー採っておかないと。
「問題ないよ。それより、さっきの話の続きなんだけど、王都に行くメリットは?」
話を王都の事に戻す。
「あ、うん。そうだねー………物流がいいから、良い武器や防具なんかが手に入り易かったり、とにかく情報が早かったり。挙げると良いことは無数にあるよ?まだ私達には関係ないけど、大きなクエストが多い、なんてのも」
「大きなクエストって?」
「えっと……例えば貴族の護衛、ゴーレムの討伐、ドラゴンの住処の探索、とかかな?」
ドラゴンktkr!!!!
「いいね!!王都!!!!」
「え……ちょっと、どうしたのいきなり………?」
「いや、なんでもないよ。それより、リーナが王都に行きたい本当の理由って何?」
「…………え………?だ、だから、さっき言ったとおり―――」
「違うよ。そんな誰でも言えるようなありきたりな理由じゃなく、あるはずだよ?リーナだけの目的が」
僕は嘘や隠し事には敏感だ。なんとなく雰囲気で分かる。
「え………そ、そんな、こと、ない……よ……?」
…………いや、リーナは隠し事がヘタみたいだ。完全に目が泳いでるし、僕じゃなくてもこれは見破れる。
「隠し事なんかしないでよ。……大丈夫。笑いもしないしバカにも、否定もしない。言ってみて?」
少しの沈黙。
「……ホントに…………笑わない………?」
俯きながらリーナが聞いてくる。
「うん。どんな理由でも笑わないよ。」
「………」
言い辛そうにゆっくりと口を開くリーナ。
「……………魔道具を買いたいんだけど………王都にはね、その………デザインがかわいい……アクセサリーの魔道具を作ってる……工房があるから………。」
――――耳まで真っ赤になり、恥ずかしそうに言った。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・
「…………ゎ……い…」
「え……?」
かわいい。
「リーナ……かわいいぃ………!!!!!」
僕は絞り出すような声で言った。
「ひぇぇっ!?」
ああ、なにこの子。かわいいんですけど!!プラチナかわいいんですけど!!!!
「ちょっと小一時間くらい抱き締めてもいいですか!!!」
「だっ、ダメっ!!!ダメだよ!!?」
「ならお持ち帰りで!!」
「ダメだってばぁぁーーーー!!!」
周りの眼も気にせずにしばらく問答を続けていると、女将さんらしき人がやってきた。
両手一杯の料理を僕達のテーブルに置きながら「色ボケはよそでやんな」と言われる。
あ、だいぶうるさかったかな?自重自重。
ふぅ。…………さて、ご飯食べよっと。
やってきた料理を僕の分とリーナの分に分別する。
あれ??なんかリーナが更に赤くなって固まってる……?………って、僕のせいか。
冷めるよ?と言うと、リーナはハッとして、どこか焦点のあってない様子のまま昼ご飯を食べ始めた。
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昼食も終わり、僕達は今、先ほどの食堂に程近い道具屋の前にいる。王都に行く結論を出したので、その準備をするためだ。
店に入ると、店主らしき中年の男性がいらっしゃい、と声を掛けてきた。
リーナはそそくさ目当てのもの(?)を探しに行ったようだ。
「すみません、携帯しやすい大きさで、大量にカロリーを摂取できる薬?みたいなものってないですか?」店主に質問。
魔力回復促進を効率よく使うために要るものがあるかどうか。
……いや、そんな物無いとは思うよ?ていうか確実に無いよね?ダメ元で聞いてるんだよ?……え?MP回復薬?うん、もしもの時のために買うよ?そこにあるよ?でもさ、スキル鑑定で見ると一番いいやつで回復量約300、だけど値段75000だよ?そんな何本も買えないよ?
「なに?………ああ、そういや前に遊び半分で作った丸薬にそんなもんがあったな。……少し待ってな兄ちゃん。」そう言って店の奥に入っていく店主。
………え、ちょっと……??あるんだ?てかなんで遊び半分で作ってんの?
1、2分したのち、店主が戻ってくる。
「ほら、これだ。10粒で50ニル。全く売れねえからくれてやってもいいんだがな」
小さな紙袋に入った丸薬と、見本を見せてくる。
「あ、とりあえず100粒買います。あとこれも」MP回復薬2本を差し出す。
「おう、合計で15500ニルだ。しかしこの丸薬を買おうなんて物好きだな?」
「はい、15500ニル………作る方も物好きじゃないですか?」
代金を渡しながらそう言うと、ちげえねぇ!!と言って爆笑していた。
リーナが買い物を終えるのを30分ほど待って、道具屋を出た。
「あれ?リューは保存食とか買わなかったの?」
僕の買い物の荷物が少ないのを見てリーナが質問してきた。
「え?あ、うん、宿に置いてる荷物の中に結構あるから」
母さまに渡された分の食料だ。
「へぇ、そうなの?量は大丈夫?」
「んーっと、王都まではどれくらいかかるかな?」
「そうだね………急いで1週間かからないくらいかな?」
「あ、それなら多分大丈夫かな。それで、他に何か買うものってある?」
うーん、とリーナが顎に手をあてて考えている。
「……あっ、そうだ。道中少し寒いかもしれないから、コートかローブを買っておきたいな。」
「確かに最近肌寒くなってきてるしね。僕も買っておこうかな。」
そういうわけで、次は服屋に行くことになった。
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服屋でそれぞれローブを購入。リーナが「私服も買いたい」と言うので、僕もそれに引っ張られる形になった。
「これリューに似合うんじゃないかな?」
「ん?」
言われてリーナの方を見てみると、持っていたのは白のワンピースだった。
「………」
「ね、試着してみない?きっと似合うよ?」
「………………」
バチバチバチバチバチ
「わーっ!!待って待って!!雷魔術やめて!!ごめん!半分冗談だから!!!」
「………………」
バチバチバチバチバチ
「ほ、ホントに怒ってる??………どうしたら許してくれる………?」
「…………リーナがそのワンピース買って着るって約束するなら許すよ」
「……………え……?そ、そんな………私…こんなの似合わないよ……?」
いや、似合うでしょ。着れば清楚系アイドルで売り出せるレベルだって。
「……着ないの?」
バチバチバチバチバチ
「……………着ます……」
少し説得すると、リーナは了承してくれた。いやあ、良かった良かった。
その後もお互いの服を見繕ったりしていたが、気がつくともう夕方だった。
お腹も空いてきたので、宿に戻った。
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「そういえばさ、リーナはいつから冒険者やってるの?」
宿で夕食を採りながらリーナに聞いた。
「えーっと……………大体1ヵ月前くらいからかな。」
「へぇ、1ヵ月かあ。でも、全くの戦いの素人から冒険者に、ってわけでもないよね?」
「そうだね、10歳の頃から5年間は武術とか習ってたよ。
…………でも、初クエストは怖かったなあ………。
いけると思ったからFランクを請けて、ゴブリンがあまりにも醜悪だったから…………怖じ気づいて一回逃げ出したんだ。まあ、その後ちゃんと倒しに行ったけど。」
「なんだ、結局倒したんだ?」
「…………もの凄いへっぴり腰でね。その点、リューはすごいよ。初クエストであんな敵の数だったのに物怖じしないし、その日の内にランク上げるし。……ホントに何者?」
んー………そこは……年の功かな………?………それと……
「………ゴブリンなんかとは比べものにならない強さの人にしごかれ……鍛えられたからかな」
「ふふ…そっか。………さてと、明日から一週間お風呂入れないし、今日はちょっと長めに堪能したいな。じゃ、お先ー。」
そう言うと、リーナは席を立った。
僕もほどなくして食べ終わり、風呂に入りながらMP回復促進を発動して、その後就寝した。
次回から王都に移動し始めます。
9/9 一部修正