猫族のピンキーと、入浴中の女神ちゃん
「ルビー様に何かあったら大変だわ。でも、あの光に鐘の音……あれは、猫族に祝福をくださった女神様が起こした神の御業だわ。村にいた幼い頃に見た、きっとあれに違いないわ!」
考えを巡らせつつ、ピンキーはあっという間にルビーの寝室の扉前までたどり着いた。
「ルビー様、失礼いたします!」
言い終わるか終わらないかのうちに、彼女は扉を蹴破るような勢いで中へ飛び込んだ。
一方、おじさんは悩んでいた。これからどうしたらいいのだろう。女神様は「異世界ライフをエンジョイしろ」と言っていたが、その具体的な方法は示してくれなかった。魂だけのルビーは「ピンキーを大事にしろ」と言い残したが……。
(まさか、エッチなことを……。いやいや、今の私は女だし、そんな欲求はないはずだ)
そう一人ごちていると、目の前にキラキラと光る羽虫のような綺麗な何かが浮かび、次第にはっきりと形を成してきた。
人のような、羽の生えた小さな何か。おじさんは思わず声を上げた。
「……女神様、ではありませんか?」
「はははは、見つかったか!」
わざとらしいほど幼い声で、その小さな存在が言った。
「今は神の離宮で入浴中だが、それもわが身。このサービスショット中の我もまた、我なのだ。過去未来、すべての宇宙の事象に同時に存在しているからな。おじさんのガイド役に、妖精さん風の『女神ちゃん』として登場してやったぞ」
「助かりました……何をすればいいか分からなくて困っていたんです」
ピンキーは不思議に思っていた。ルビー様はなぜ私に気がつかないのだろう。
お嬢様は、蝋燭よりもずっと明るい光を放つ「妖精ちゃん」と話し込んでいた。あの子は、村にいた頃に見たことがある。私のお姉さんと仲が良かったはずだわ。
ピンキーは猫族得意の忍び足で、音もなく天蓋の近くまで歩み寄った。
「ルビー様、妖精ちゃん……。お二人で何をなさっているんですか? 凄い光と鐘の音がしたから、飛んできたんですよ」
「おお、ピンキー! 我のことを覚えていてくれたか。今はそなたの姉と話しつつ、同時にこのルビーとも話をしておるのだ。過去の姉、今のルビー。同時並行の会話だ、凄かろう!」
「また、わけの分からないことを言うのね、妖精ちゃん」
呆れたように、ピンキーが少し小首をかしげる。
「ふむ、その仕草が可愛いな。うんうん、誰からも愛される『加護』を私が与えたからな。猫族全体に、だ。それからピンキー、そなたの心の中などお見通しだぞ。ルビーがそなたに気がつかぬのは、我と話している間は我に集中するように、特別な魔法をかけておるからなのだ」




