第33話 たぶん、もう
嫉妬していた。
認めたくないけれど認めてしまった。
あの日から私は妙に落ち着かなかった。
「七瀬ー」
「ん?」
「聞いてる?」
「あ、ごめん」
友達に呆れられる。
「最近どうしたの」
「何が」
「上の空」
図星だった。
私は曖昧に笑う。
自分でも分かっている。
原因は一人しかいない。
黒瀬凛花。
私の義妹。
そして。
「……」
恋人。
その言葉を思い浮かべるだけで変な気分になる。
付き合い始めてから、まだそんなに経っていない。
なのに、以前よりずっと意識してしまう。
放課後。
先に教室を出た私は、昇降口で凛花を待っていた。
しばらくして。
「お待たせ」
凛花がやってくる。
だけど。
「黒瀬さん!」
知らない男子が声をかけた。
同学年だろうか。
私は見たことがない。
「何」
「今度の文化祭さ」
楽しそうに話し始める。
凛花は相変わらず無表情だけど。
ちゃんと返事はしている。
「……」
胸の奥が少しだけざわついた。
別に。
本当に普通の会話だ。
何もおかしくない。
なのに。
「七瀬?」
凛花がこちらを見る。
「帰ろ」
「……うん」
歩き出す。
男子は残念そうな顔をしていた。
少しだけ、本当に少しだけ安心した。
帰り道。
「また」
凛花がぽつりと言う。
「何が」
「嫉妬した」
「してない」
「した」
「してない」
「した」
「……」
反論できない。
すると、凛花が小さく笑った。
「可愛い」
「は?」
「七瀬」
心臓が跳ねる。
最近ずるい。
こういうことを平然と言う。
「やめて」
「嫌」
前にも聞いた返事だけど今は少しだけ嬉しい。
家が見えてくる。
いつもの道。
いつもの景色。
なのに隣を歩く彼女がいるだけで違って見えた。
「ねえ」
凛花が呼ぶ。
「何」
「私ね」
少しだけ真面目な声。
「七瀬が思ってるより、七瀬のこと好きだから」
「……」
一瞬、言葉が出なかった。
心臓がうるさい。
「何それ」
やっと出た言葉はそれだけ。
「そのまま」
凛花は平然としている。
ずるい、本当にずるい。
私だけがこんなに振り回されている。
でも、嫌じゃなかった。
むしろその言葉がどうしようもなく嬉しかった。
たぶん、私は、思っていたよりずっと凛花のことが好きなんだと思う。




