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申請

「遂に……遂に揃った!」


 高崎と栗原が部活申請書を書き終え、それを受け取った篠宮は両手で持って天井に掲げて言った。


「でもまだ空欄あったろ」


 俺が前に見た時にも、いくつか空欄があったのをおぼえている。例えば、部活名とか。


「そう言えば、部活名かいてなかったな」

「活動内容も書いてませんでしたよ」


 新入部員二人が早速突っ込み。なかなかいい点をついているではないかと感心する。


「それで、部活名どうするんだ。ストレートにネトゲ部じゃダメだろ」

「心配するな。それについては考えてある」


 篠宮はそう言って申請書に何かを書き始めた。書き終えると篠宮はそれを見せて来た。見た所さっきまで空欄だった部活名の欄が埋まっていた。物凄く長ったらしく。


「これならどうだ」


 低年齢特化型現代文化研究部。欄にはそう書かれていた。


「長すぎるだろ! だいたい、何にこだわってそうなった?」

「進藤、わからないのか?」

「え? わかるの?」

「はい」


 何故か新入部員二人はわかるらしい。て言うか何でわかるの。


「低年齢特化型現代文化研究部。約してネトゲ部だ」


 そう言われてようやく気付いた。年齢の『ね』に特化の『と』、現代の『げ』。これを合わせてネトゲ部と言う事だろう。確かにこれならネトゲをする事も対象になっているので間違ってはいない。


「なるほど……お前らよく気付いたな」

「こんなの大した事ないだろ」


(え、そうなの)


 高崎の一言にあえて反応しなかった。これ以上何か言ったら自分が馬鹿すぎて笑われてしまう。


「それで、活動内容はどうするんだ?」

「中高生を対象とした文化について研究するって事でどうだ」

「確かに、それなら問題ないな」

「さっきから気になってたんだけど、何でお前らそんなにネトゲ部を隠したんだ?」


 高崎が確信に満ちた質問をして来た。そう言えばこの事を俺達はまだ二人に話していない。


「生徒会にネトゲ部なんかがあるとバレれば即座に廃部させられるんだ。それを阻止するためだ」

「そういう事か。わかった」


 高崎の反応を見た篠宮は直ぐにペンを走らせ、活動内容の欄を埋めた。


「それじゃ、生徒会室に行くとするか」

「ああ」


 四人はこうして部室を後にした。




「確かに、四人集まっている。顧問の先生もいる様だな」


 今生徒会室の中。長机がコの字に並んでいて、会長、副会長二人に書記と会計の五人が座っていた。


 部活申請書をメガネをかけたクソ真面目そうな生徒会長に渡すと、帰って来た言葉がこれだった。これなら申請も通るだろう。


「なら……」


 篠宮もそう思って口を開いたのだろう。だが、その言葉を生徒会長がかき消した。


「だが、この中高生を対象とした文化と言うのは少しわからない。一体なんなのか説明してもらおうか」

「え……」


 篠宮の口が止まった。まさかこんな返しが来るとは予想してなかったのだろうう。高崎と栗原も同様に表情が曇った。完全にまずい。


「それは……」


 篠宮は俯き加減に黙った。これは本当にやばい。


「説明が出来ないのなら申請は拒否させて……」

「例えば、SNSとかですかね」


 俺は会長の申請拒否に対して口を開いた。


「と言うと?」


(食いついた)


 俺はそのまま話を続けた。


「SNSは今、中高生以外でも使っていますが、頻度が高いのはやはり中高生だと思います。しかし、SNSには危険が伴います。例えば、その呼びかけなどはどうでしょうか」


 俺がそう言うと、何処からか会長達とは違う視線を感じた。それは、会長の隣に座る副会長のものだった。超絶美人の彼女は進藤を見て何故か笑みを浮かべている。


(あれが副会長)


 早水との会話が頭を過る。男子生徒を犬にしている。まさかその次の対象が俺ではないかと一瞬思ったが、直ぐに無いと確信する。何故なら俺はこの人と初対面なのだから。そんな事を考えているうちに会長が口を開いた。


「なるほど。わかった。申請を受理しよう」


 会長の言葉に三人が笑顔で顔を見合わせた。


「ただし、少しでも学校内での不適切な事をしていたら直ぐに廃部する。その事を頭を入れている様に」


 会長の念押しを聞き、「失礼しました」と言って生徒会室から出た。


「やった! 成功だ!」


 篠宮がガッツポーズをとった。


「一時はどうなるかと思ったぞ」

「進藤君。ありがとう」

「いや、別に大した事は……」

「そんな事はない。進藤のおかげで助かった。ありがとう」


 篠宮がそう言って接近して来る。心臓の鼓動が少し早まる。俺はその純粋な眼差しを見て目をそらした。近いです離れて下さい。


「これでやっと活動ができる」

「昨日もしたけどな」


 そんな事を言って盛り上がっているとチャイムが鳴った。


「あ、部活動終了時刻だ」

「これじゃ部活出来ないじゃん」


 高崎が一番悔しがっていた。


「まあ仕方がないさ。今日は帰るとしよう」

「そうだよ祐奈ちゃん」

「はあ、ゲーム出来ると思ったのになー」


 三人はそう言いながら部室へと歩き出した。俺はその背中を見た後、副会長が笑みを浮かべたのを思い出した。


(何なんだ、あの人?)

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