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第十四話

 エレベーターは六階に着いた。

 そして、扉が開いた。


「ん?」


 僕は目の前に見えた景色に違和感を感じた。

 

「加藤くん、ここって?」

「ここは……僕たちのマンションじゃない……」


 僕たちが着いたのは、どうやら僕たちのマンションではなかった。

 外は明るかった。

 エレベーターを降りたところで、しばらく呆然としていると、近くのドアが開いた。

 僕たちは咄嗟に階段の陰に身を隠した。

 すると、そのドアから僕と美月先輩が出てきた。

 ふたりの指にはお揃いの結婚指輪が光っていた。

 ふたりは手を繋ぎながらエレベーターに乗り込んで、やがて降りて行った。


「おめでとう。君たち、どうやら結婚したみたいじゃない」

「そ、そうみたいですね……」

「手なんか繋いじゃって。みてるこっちが恥ずかしくなるわ」

「なんか、すみません……」

「でも、よかったわね。これで安心して今に戻れるわ」

「はい!」


 確かに、未来で僕たちは結婚していた。

 とても幸せそうだった。

 本当によかった。安心した。

 そして、これでやっと未来との戦いが終わった。


 僕たちは六階から地上を見下ろした。

 僕と美月先輩が並んで歩いているのが見えた。


「微笑ましいわね……」


 柳先輩が言葉を発したその直後だった。


「パンッ」


 乾いた銃声と共に、美月先輩がその場に倒れ込んだ。

 みるみるうちに、美月先輩の胸が赤く染まった。


「美月先輩……」


 僕たちは、すぐさまエレベーターに乗り込んだ。

 一階のボタンを押し、エレベーターは下降を始めた。

 嫌な予感がした。

 そして、それは的中した。

 エレベーターの階数表示は消え、下降は止まらなかった。


「くそっ」


 やっとエレベーターが止まった。

 外に駆け出すと、外は暗かった。

 そして、そこには見慣れた景色が広がっていた。


「僕たちのマンションだ……」

「やっぱりね……今に戻ってきちゃったみたいね……」


 ふと、近くに人影が見えた。


「お久しぶりです。加藤彰人くん、柳明里さん」


 見たことのあるスーツが目に映った。

 そこにいたのは、あの組織の女だった。


「どういうことだ?」

「そう焦らないでください、加藤彰人くん。まずは、実験お疲れ様でした。結果として、あなたは死を回避されました。実験は成功です。おめでとうございます」

「今はそれどころじゃないだろ。美月先輩は、どうなるんだ?」

「ここは五年後の未来になります。そして、白川美月さんはこのままですと殺害されてしまいます。そこで、我々は新たな実験を行いたいと考えています。あなたたちが未来への行き来により、彼女を救うことができるのか。考えていただけますでしょうか?」

「……当たり前だ。やるに決まっている」

「柳明里さんは、どうされますか?」

「……私もやる。美月ちゃんが死んじゃうって分かってて、それを見過ごすことなんてできないわ」

「ありがとうございます。それでは、また近いうちに未来をお見せ差し上げます。健闘を祈っております」


 組織の女はそう言い残すと、マンションの前に停めてあった車に乗り込み去って行った。


「残念ながら、戦いはまだ続くようね……」

「はい……」


 僕はこの状況を悲観してはいなかった。

 僕には美月先輩を必ず救う自信があった。

 根拠は無い。だが、僕は絶対に諦めない。

 そして、諦めなければ必ず未来は変えられる。

 僕はそう信じている。

 そして、この手で僕たちの幸せな未来を掴むんだ。


 こうして、僕たちはまた新たな戦いに駒を進めたのだった。

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