2.消えたモルヒネ
聡美は屋上に上がった。
手すりを調べると、体をこすったような痕跡を見つける。
(横川 敏夫さんがここから落ちたのは間違いないみたいだ)
聡美は屋内に戻り、聞き込みを始めた。
看護師に訊ねるが、誰も横川の存在を知らない。
患者ではないのだろうか……。
聡美は美琴の部屋に入った。
「美琴、横川 敏夫……って人は知らないよね?」
「横川さん? フリーの事件記者の?」
「知ってるの?」
「仕事で何度かお会いしたわ。その人がどうかしたの?」
聡美は横川が亡くなったことを話した。
「嘘でしょ?」
「本当よ」
「横川さん……」
「美琴、横川さんなにか言ってなかった?」
「……そういえば、前に病院のスキャンダルを調べてるって言ってたけど」
「病院のスキャンダル?」
「なんでも、院内から消える薬物の謎を調べてたみたいよ」
聡美は部屋を出た。
ナースステーションに行き、看護師に訊く。
「最近、この病院で何かが無くなったりしたことってありますか?」
「消える薬物の謎ですか?」
「あったんですね?」
「はい。でも詳しいことはわかりません」
聡美は院長室を訪ねる。
「すみません、こういう者ですが、薬剤室を見せていただけませんか?」
聡美は院長に手帳を提示した。
「薬剤室ですか?」
「はい」
「それじゃ、もう例の件を?」
「消える薬物の謎ですよね? どうやら、亡くなった横川さんもそれを調べていたみたいですよ?」
「そうですか。そういうことならご協力いたしましょう。薬剤師の方に連絡しておきますので、職員棟の薬剤室へ行って下さい」
聡美は職員棟へ行く。
薬剤室の前に白衣の女性が立っていてる。
「薬剤師の方ですか?」
「あなたが院長の言っていた探偵さんですか?」
「私立探偵の坂上です」
聡美は手帳を見せると、薬剤師と共に部屋に入る。
「ここで無くなった薬剤というのは……?」
「モルヒネです」
「モルヒネ、ですか」
聡美は棚に置かれてる薬剤を見て回る。
「この部屋に入れるのは?」
「薬剤師と医師なら」
あら?──と、何かに気づく薬剤師。
「どうされました?」
「モルヒネがまた無くなってるんです。昨日の帰りに確認した時はあったんですが」
「モルヒネが置かれていたのはここですか?」
聡美は何かが置かれていた痕跡を見つける。
「そうです」
「警察への届けは?」
「一応、捜査三課が動いてはくれているんですが……」
「犯人特定には至っていない」
「はい」
二人は部屋を出る。
「昨晩、当直だったドクターの方を知ってますか?」
「私にはそのような情報は来てないですよ」
「そうですか」
聡美は薬剤師と別れて院長室へ。
「ああ、探偵さん。何かわかりましたか?」
「いいえ。これと言って収穫なしです」
「はあ、そうですか……」
「院長、昨晩の当直の医師はわかりますか?」
「万丈目くんじゃないかな。麻酔科の」
「その万丈目さんは、今日は?」
「麻酔科へ行って直接ご確認されてはいかがでしょう?」
「そうですね」
聡美は麻酔科へ向かった。




