2.脅迫状
聡美は相島財閥の頭取、相島 裕次郎の自宅を訪ねた。
他に抱えていると言う案件が、相島からの依頼だったからだ。
インターホンを鳴らす聡美。
「はい」
「依頼を受けた探偵の坂上です」
「少々お待ち下さい」
少しして、家政婦が出てくる。
「坂上様、お待ちしておりました」
家政婦が中へと案内する。
聡美は家政婦に連れられ、応接室にやってきた。
「今、旦那様を」
家政婦が旦那を呼びに行き、連れて戻ってきた。
「お前は下がれ」
旦那の一言で、家政婦が部屋から出て行く。
「お待たせしてすみません、坂上さん。初めまして、私が相島 裕次郎です」
「坂上 聡美です」
「早速ですが、こちらを」
裕次郎が、聡美に封筒を差し出した。
「これは?」
「脅迫状です。私の妻、聡子って言うんですけども、彼女を殺害すると書かれています」
聡美は封筒から手紙を取り出して読んだ。
内容は、聡子の命を狙っていることと、その狙っている者が、お金を渡せば殺さないが、警察に話したら命はない。と、言うことだった。
「買い物へ行ったきり、聡子が帰ってこないのです。もしかしたら、もう殺されてしまったのではないかと……」
聡美は知っていたが、裕次郎を悲しませることになるので、何も言わなかった。
「坂上さん! お願いします! 脅迫状の差出人を捜して下さい! そしてどうか、聡子を無事に!」
「旦那さん、一つ聞きますけど、矢島という探偵に何か依頼してますか?」
「矢島? 知りませんな」
「そう、ですか……」
ドアのノックの後、家政婦が入ってくる。
「なんだ? 今は取り込み中だ」
「旦那様、警察の方が」
「警察?」
旦那と聡美は玄関に急いだ。
宗方刑事が、聡美を見て驚く。
「坂上さん、何をしてるんですか?」
「刑事さん、彼女を知り合いで?」
「先ほど、殺人──」
「ああ! あの時はどうもー!」
聡美は宗方を外に連れ出し、言った。
「被害者の旦那さんには言わないで欲しいんです。それから……」
聡美が宗方に脅迫状を見せた。
「脅迫状?」
「事件の話を今するのはまずいですよ」
「そうですか」
聡美と宗方が中に戻る。
裕次郎は疑問符を浮かべていた。
「相島 裕次郎さん、警視庁の宗方です」
宗方が裕次郎に警察手帳を見せた。
「先ほど、ある筋から脅迫状が届いたと言う話を聞きまして、取り急ぎやってきたのですが」
「そ、それじゃ犯人に殺されてしまう!」
(バカ……)
聡美は宗方に対してそう思った。
「殺されてしまう?」
「脅迫状に、警察に話したら殺すって」
「そうでしたか」
「ああ、どうしよう?」
「宗方さん」
聡美は宗方を外へ連れ出した。
「あんたバカじゃないの? ショック与えてどうするのよ?」
「すみません」
「仕方ない。全て打ち明けましょう」
聡美と宗方は中に戻る。
「相島さん、奥様の聡子さんですが、先ほど電車に轢かれてお亡くなりになられました」
「こ、殺されたのですか!?」
「警察は事故、殺人の線で動いてます」
「あ、ああ……」
裕次郎は崩れた。




