1.モンタージュ
聡美は電車に乗っていた。
ガタンガタン……。
電車が通過するはずの駅で、急ブレーキをかけた。
「わわ!?」
つり革に掴まって立っていた聡美がバランスを崩して倒れた。
「痛……!」
痛そうな表情をしながら立ち上がる聡美。
運転席の方を見やると、ちょうど電車から血相を変えて降りる乗務員の姿が見えた。
聡美は車掌の元に行き、探偵手帳を見せて電車を降りると、運転席側へ回った。
「私立探偵です。運転手さん、何が?」
運転手に探偵手帳を提示しながら訊ねた。
「人が飛び込んできたんですよ」
線路を見ると、夥しい量の血だまりができていた。
「飛び込み自殺、ですか……」
聡美はホームから線路内に降りた。
「現場検証しますので、上がってもらえますか」
「あ、は……はい!」
運転手がホームに登る。
聡美は現場を調べ始めた。
(遺体は粉々に引き裂かれてる……)
電車の下を覗きながらそう思った聡美。
「運転手さん、駅員に改札の出入りを封鎖してもらって下さい」
「わかりました」
駅員がハンドマイクで駅員室に事情を説明した。
同時に、警察にも通報が行き、鉄道警察隊がやって来る。
「君、現場を荒らさないで」
聡美は捜査員に探偵手帳を見せた。
「失礼しました!」
聡美がホームに上がると、入れ替わりに鑑識員が線路内に入って調べ始める、と同時に捜査員が彼女に警察手帳を見せた。
「警視庁鉄道警察隊の宗方です」
「私立探偵の坂上です。遺体はバラバラで身元を特定するのは困難かと」
「それでは防犯カメラで確認して見ましょう」
聡美含む捜査員たちは、駅員室へと足を運び、防犯カメラの映像をチェックする。
防犯カメラの映像で、何者かが人を突き飛ばす瞬間が確認される。
「殺人事件……」
呟く聡美。
「宗方さん、突き飛ばした人物を捜して下さい。まだ駅構内にいるはずです」
捜査員の捜索で、容疑者が見付かり、駅員室へ連れてこられた。
「俺じゃねえよ!」
騒ぎ立てる容疑者。
聡美はその容疑者に見覚えがあった。
「矢島くん?」
「え?」
容疑者が聡美を見る。
「あ!」
「どうしたんですか?」
宗方が問う。
「彼は私と同業者ですよ」
「私立探偵の方、ですか?」
「矢島くん、こんなところで何を?」
矢島 光一。私立探偵。
「俺は被害者を尾行してたんだ!」
「事件の調査?」
「ああ、そうだよ」
「どういう事件?」
「不倫の調査だよ」
「不倫?」
「ああ。旦那から相談されてね」
「亡くなったのは女性なのね。名前は?」
「相島 聡子、二十五歳」
「相島 聡子って、相島財閥の相島?」
「ああ」
「突き飛ばしたの、あなた?」
「やってねえよ! 犯人追おうと思ってたら鉄警に捕まったんだよ!」
「犯人を見たの!?」
「男だったな」
「どういう男?」
聡美はどこからか画用紙と鉛筆を取り出した。
矢島が犯人の特徴を聡美に伝えると、聡美がモンタージュを作成する。
「こんな感じ?」
「ああ、そいつだ」
「宗方さん、この人の捜索をお願いします」
聡美は宗方にモンタージュを渡した。
「坂上さんは?」
「私は他に抱えてる案件があるので」
「そうですか。では、このヤマはこちらで預かります」
捜査員たちはモンタージュの男性の捜索に向かった。




