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Private Detective Satomi  作者: 坂上聡美
3.北の国で

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12/33

2.結婚詐欺

 刑事がホテルから出て行こうとしていた二人の人物を呼び止めた。

「すみません」

 警察手帳を提示する刑事。

「……なんですか?」

 振り返る二人の男女。

「先ほど、このホテルで事件がありましてね」

「私たち急いでるんです」

「まあまあ。その事件なんですが、どうやら殺人の様でして……」

「殺人!?」

「刑事さんは私たちを疑って!?」

「事件直後にホテルから去ろうとしていましたからね。とりあえず、現場まで来てもらえますか?」

 刑事は二人を事件のあった部屋に誘導した。

 部屋では聡美が室内を調べていた。

「探偵さん、何かあったか?」

「いや、特にこれといって」

「そうか。とりあえず、容疑者とおぼしき人物を連れて来たが……」

 刑事の言葉に、容疑者の男が訊ねる。

「何で探偵が捜査に混じってんだよ?」

「今年の一月から探偵業法が変わったんですよ」

 そう答えるのは聡美だ。

「そうなのか?」

 聡美は探偵手帳を提示した。

 縦開きの手帳には、警察の徽章きしょうに似たバッチの上部に私立探偵、下部にはDetective Agentと書かれていた。

「え? マジ? 超カッコいいんですけど!」

 と、容疑者の女のテンションが上がる。

「それで、あなた方、名前は?」

「あ、私、山下やました 恵子けいこって言います」

「俺は小堺こさかい 哲郎てつろう

「お二人はどういうご関係で?」

「大学時代の友達ですよ」

「亡くなった小御門さんとは?」

「小御門が亡くなった!?」

 小堺が驚く。

「やはりお知り合いだったのですね」

「誰に刺されたのよ?」

 と、山下が訊ねる。

(……!)

「山下さん。どうして刺されたということをご存知なんです?」

「殺しって言ったら、刺殺だと思うでしょ? あ、今ので私がやったというなら大間違いですよ」

「なるほど」

 聡美は考え込む。

(この二人の内のどちらか、もしくは両方か……?)

「小御門さんはどんな人物なんですか?」

「優しくて誠実な方ですよ。そんな彼が殺されるなんて考えられません。私、付き合ってて、近々結婚を考えてたんです」

 聡美は小堺の服の襟元にある弁護士バッチに気付いた。

「小堺さん、あなたは弁護士なんですか?」

「はい」

(弁護士……、結婚……。まさかね。でも……)

 聡美の頭にある構図が浮かんでいた。

「小堺さん、小御門は結婚詐欺師では」

「……!?」

 顔色を変える小堺。

「健助が詐欺師なわけないでしょ!? ちょっと探偵さん、バカも休み休み言ってくれる?」

「山下さん、あなたは小堺さんに小御門のことを調査してもらっていたのでは?」

 その問いに戸惑う山下。

「探偵さん、俺たちの関係は友達恋人だよ。あいつが詐欺師なわけないだろ」

「そうですか。でもこっちは調べがついてるんですよ。小御門 健助が東京で小野田おのだ 正樹まさきという名で結婚詐欺で逮捕されていたということがね。先ほど、小御門のお住まいがある東京にいる友人に調べてもらったので、間違いはありませんよ」

「ぐっ……」

 崩れる小堺。

「俺が殺しました」

「やめて、てっちゃん。本当は私がやったの。探偵さんの言う通り、小御門は結婚詐欺師よ。あいつ、結婚に必要な資金が欲しいって言って、私にものすごい金額を要求して来たわ。それで不審に思って、てっちゃんに調べてもらったの。すみませんでした」

 刑事が山下に手錠をかけた。

「署までご同行願います」

 山下は刑事に連れられ、道警へ向かっていった。


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