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異世界ドクロは自由がお好き‼  作者: 寿限夢
初めての町
22/60

修業のお時間♪

 久々に目が使えなくなった。

 眼精疲労って怖い!!

  スズちゃんの手厚い看病(?)のおかげでポコ君が正気に戻った後、自分達は鍛練をするべく町の外れにある空き地へと向かった。

 店の前の通りは勿論の事、店の裏口にある裏庭でポコ君を含めた計四人が動くには、些か狭かったからだ。

 最初、外灯も無い町外れで見えるのかと心配したが、復活したポコ君が持っていた野営用の灯りを灯す魔導具があるとの事で、そのまま使わせてもらう事にした。


 案内された空き地はおよそ十メートル四方の小さな更地になっていた。

 少し前までは小さな店が在ったらしいが、取り壊され、そのまま放置されているらしい。

 町外れなだけあって周りにある建物も殆ど空き家らしいので、近所への音の心配なども必要ない。

 広さも充分にあるし、鍛練をするには丁度良さそうだ。


 「それじゃあ、ポコ君♪ 灯りお願い♪」

 「了解っす!」


 ポコ君が元気よく返事をし、持ってきた小さなボール型の魔導具を取り出した。

 見た目は手のひらに収まるほどの小さなボールだが、ポコ君が地面に置いて手を叩いた途端、三メートルほどの高さまで浮いて光りだし、空き地全体を照らした。

 

 「おぉ! すごいな!」

 「へへっ! 少し前に仕入れたばっかの新商品っす!」


 そう言って自慢気に胸を張るポコ君。

 何でも、球の中心に魔方陣があって、それの力で空気中の魔力、 " 魔素 " を取り込む事によって光り、浮くのだそうだ。

 空気中の魔素を使うから半永久的に使えるとか。


 「お買い求めはローディアの道具屋 " ロココポ " までっす!」


 お昼の通販番組か! と、ツッコもうとしたけど止めた。

 言っても通じなさそうだし。

 と言うかあの店そんな名前だったの!? 

 

 そんな感じにポコ君の商品紹介が終わった後、早速鍛練をするべく準備に取りかかる。

 まぁ準備と言ってもあらかじめ用意した鍛練用の杖や木刀を配るだけだが。

 

 「ところで、ポコ君の武器は何かな?」

 「? 武器っすか?」


 鍛練を始める前に聞いとく。

 武器によっては、教える戦い方や鍛練法何かが、だいぶ違ってくるからだ。


 「そ♪ 参考までにね♪」

 「それなら、オイラの武器はコレっす!」


 そう言ってポコ君が取り出したのは、刃渡り二十センチほどの小さめの短剣。

 刃は片刃で、先端部にのみ反りがある。 

どちらかと言えば、短剣と言うよりもサバイバルナイフに近かった。


 「こりゃまた随分と小振りなのを選んだね~♪」

 「はいっす! でも、こういった小さな得物を使うのが、犬頭族(コボルト)の伝統っす!」

 「伝統?」


 気になったので聞いてみた。

 なんでも犬頭族(コボルト)は今でこそ一族で商売を生業とする変わった種族らしいが、それ以前、五百年前の戦時中は、主に斥候や密偵などを専門とする、諜報部隊のような事をしていたらしい。

 斥候として素早く情報を味方に伝えなくてはならないため、素早く動けるよう、小さくて軽い武器を好んで使っていたらしく、その名残なんだとか。

 

 「成る程ね~♪ なら、その短剣を活かした技術を教えていくね♪」

 「お願いするっす!」


 教える技術の方針も決まったので、スズちゃん達にも声をかける。

 ポコ君に教える技術を見て、こういう戦い方もあると覚えてもらうためだ。


 「それじゃあ、鍛練を始めるよ~♪

 「「「はい!」」」


 三人共いい返事を返してきた。

 やる気充分、良いことだ。


 「今日は新しく仲間になったポコ君に、短剣を使った戦闘術を教えるから、二人もそれを見て、よ~く覚えてね♪」

 「「はい!」」

 「よし、それじゃあポコ君。コレ」


 そう言ってポコ君に短めに切った木の棒を手渡す。

 さっき、ポコ君の得物を教わった後、持ってきた木の棒のうち一本を短くしたのだ。


 「とりあえずそれでやるから」

 「えっ? でもコレ……オイラの短剣より長くないすか?」


 ポコ君が不思議そうに聞いてきた。

 確かに自分がポコ君に手渡した棒は、刃渡り五十センチほどで、ポコ君の短剣より倍以上長い。

 しかし、これにはちゃんとした理由があるのだ。

 

 「ポコ君が使うような武器は、短くて軽い分、速さと手先の器用さが求められるんだ。 手首の返し、フェイントなんかも全部ね。 だからまずは少し長めの棒から練習を始めて、感覚を覚える事が大事なんだ」

 「そっ……そうなんすか……」

 「感覚を掴めたら今度はそれに合わせて棒を短くしていって徐々に本物と長さを一緒にしていくから……ここまでで、何か質問あるかな?」

 「い……いや、大丈夫っす……」

 「それじゃあ次に行こう」


 質問が無さそうなので次に移行する。

 何かスズちゃんとポコ君が「人違くないっすか?」「鍛練の時はいつもああだ」とか言ってるけど気にしない。


 「じゃあ、まずは基本の型を教えるから、ポコ君、こっちに」

 「……あっ! はいっす!」


 ポコ君が正面に立ち、二人がちゃんと見てるのを確認してから、棒を持って構える。

 右足を軽く前に出し、棒を持った右手を前に少し突き出す。

 棒を持ってない左手は胸の前に添えるように構えた。 

 

 「基本の構えはコレ、よく見て……武器を持った方の手と足を前に出して、持ってない方の手は胸の前に」

 「はっ……はいっす……」


 ポコ君がおそるおそる構える。

 若干、前屈みになり過ぎていたり、力み過ぎていたりしたので注意すると、すぐに直した。

 初めてにしては、なかなか様になっている。

 才能がありそうだ。


 「それが出来たら次は攻撃。 基本的な攻撃は斜め・横・突きの計五つ。 撃つときは手首だけでなく、肘を使って撃つ」

 

 構えた棒を使い、ポコ君に向かって右斜めにゆっくりと降り下ろし、当たる寸前で止める。

 そのまま続けて、左斜め・右横・左横と棒を振り、最後に突きを放った。

 

 「基本はこの五つ。 コレの他にも型は色々あるけど、まずはコレを覚えてから次に移る。 質問は?」

 「はい! サヨリ様!」


 スズちゃんが元気に手を挙げた。

 何か気付いたのかな?


 「何かな? スズちゃん?」

 「はい。今見てて思ったんですけど、今の動きって、昼間、サヨリ様が使っていた動きと似てますけど……同じものですか?」


 成る程、そこに気付くか……。

 スズちゃんの言う通り、自分がポコ君に教えているのは、自分が試験で使ったものと同じ、フィリピン発祥の武術、"エスクリマ" または"カリ"と呼ばれるものだ。


 この武術の特徴は、短剣やナイフによる素早い攻撃と、相手の武器を奪う、または落とすといった技術に特化している点だ。

 他にも、武器や素手の技術が共通していて、同じような動きで様々な武器が使えるなど、幅広い順応性に特化しており、その順応性から、アメリカ海軍やSPなどが、正式に採用しているくらいだ。


 その事をいくつか、かいつまんでスズちゃん達に説明すると、「そうですか……」と、何故か二人共しょんぼりしてしまった。

 何故だろう? 何かおかしな事でも言ったかな?


 「では、サヨリ様の得意と言われる大鎌も、ポコと同じ……」

 「? いや、違うけど?」

 「「えっ?」」

 

 何故かうらやましそうにポコ君を見つめる二人に言った。

 自分がこの武術を使えるのは昔、自分に[死神](ボーク・スミェールチ)の称号くれたロシア人……ラビがこの武術を使っていたからだ。

 ラビは元軍人であると同時に大の格闘技マニアでもあり、自分が使っている斧と短剣の二刀流も、元はラビが使っていたものだ。

 コポさんの店で斧と短剣を見た時、それを思い出し、大鎌が無い代わりに、急遽採用させてもらったのだ。

 

 「この武術は元々、自分の親友が使っていたもので、自分が使う大鎌術とは、まったく別の代物なんだ」

 「そうなんですか……」

 「ご友人の……」

 「うん、それにどちらかと言えば自分の使う大鎌術は、二人に教えてるモノの方が近いかな」

 「えっ……!」

 「そうなんですか!」

 「? うん、体捌き何かは、スズちゃんに教えた剣術に近いし、武器の扱い何かも、チエちゃんに教えた杖術とかに近いかな」


 突然、しょんぼりしていた二人が物凄い食いついてきので、軽く説明する。

 すると二人共「そうですか! 同じですか!」と、今度は上機嫌になった。

 よくわからないが、機嫌が良くなったなら、まぁ良いか。

 それに可愛いし!


 「それじゃあ、他に質問が無いなら、練習の続きを始めるよ。良いね?」

 「「「はい!」」」


 とりあえずそんな感じに練習を再開し、一通りの基本をポコ君に教え込んだ。

 その後、少し休憩した後、軽い模擬戦をしようとした、その時だった。


 「お! いたいた!」


 何か出た。




        *   

  

 

 声のした方を振り向くと、そこにいたのは十四・五くらいの、腰に剣を履いた赤毛と黒毛、二匹のガキだった。

 今日、解体(ばら)し損ねた、ギルドで会ったあのムカつくガキ共だ。


 「こんな所にいた!」

 「探すのに苦労したぜ~!」


 へらへらと笑いながら、ガキ二匹がこちらに近づいてきた。

 正直、今すぐにでも解体してやりたいが、一応町中なので、まだ我慢する。

 解体したくなるのをグッと抑えて、様子を見る。


 「どこ探してもいないんだもんな~おかげであちこち探し回ったよ!」

 「まさかこんな町外れにいるとはな~考えつかなかったぜ!」

 

 何か好き勝手言っているがこの二匹、どうやら自分達を探していたようだ。

 とりあえず解体するのは後にして、聞き出してみる事にする。


 「……何か用か?」

 「まぁ、そう言うなよ!」

 「俺達、あんたに用が有って探してたんだ!」


 相変わらすへらへらしながら喋る二匹。

 用ってなんだ?

 解体してくれと言うなら付き合うが?

 いつでも解体せるように身構えていると、とんでもない事を言い出した。


 「あんたさぁ、俺達の仲間になってくれねぇ?」


 突然、阿呆な事言い出した。

 あまりの馬鹿っぷりに呆然とする自分に、二匹がまくし立てた。


 「昼間のあんたの闘いっぷり見てたんだけどさぁ、あんた凄えなぁ!」

 「あのタウゼント・ハザードを一人で倒しちまう何てよ! あんなん、二ツ(ツヴァイ)クラスでも敵わないってのに!」

 「あんたがいれば怖いもん無しだ! だからな? 俺達の仲間になってくれよ? な? 悪い話じゃねぇだろう?」


 ……こいつら……頭大丈夫か?

 何で自分がこいつらと組まなきゃなんないだよ?

 悪い話じゃないって……充分悪すぎるわ! 

 あれか? 自分をストレス死させる作戦か?

 自分の戸惑いに気づく事なく、二匹はまだ喋り続けている。

 いい加減黙らせようかと思っていたところで、さらに馬鹿な発言をしてきた。


 「それにさ、あんただって仲間がいた方が安心だろ? あんな雑魚い魔族なんかじゃなくてさ!」

 「少なくとも俺達、あんなチビ共よかずっと使えるぜ?」




 「あっ? 今何つった?」




 何かふざけた事ほざき始めたので聞き返した。

 えっ? 何?  幻聴だよね?


 「だって知ってるか? あの二人、ホーン・ラビットにさえ手こずるんだぜ? ありえねぇって!」

 「スキルも魔法も使えないんじゃなぁ! 役に立たねぇよ!」

 「本当、魔族じゃなくてよかったよなぁ!」

 「違ぇねぇ!」

 「だからさ? そんな雑魚より俺達と組もうぜ? な?」


 ……どうやら幻聴じゃなかったようだ。

 ずいぶんふざけた事ほざいてくれる。

 とりあえず、五体解体して晒し物にしようと思ったが、いい事を思い付いたので、誘導するべく、発言する。


 「断る。何で自分がゴミと組まねばならん」

 「「あっ?」」


 まずは手始めの挑発。

 馬鹿だからすぐ食いつくはずだ。

 案の定、ちっぽけな自尊心を傷つけられた二匹が、顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいる。

 さらに挑発するべく、言葉を重ねた。


 「聞こえなかったのか? 頭だけじゃなく、耳まで悪いみたいだな、クズが! ならばもう一度言う。 貴様等のようなゴミ以下の雑魚と組むなど、お断りだ!」


 「……っ!」

 「……このっ!」


 二匹は何か言いたそうにしているが、何も言わない。

 ただこちらを睨んでいるだけだ。

 大方、自分より下と思った相手しか相手にしていなかったから、自分よか強い相手には、言い返せないんだろう。

 ……いや、考え過ぎか。

 単に頭が悪いから、言い返す言葉が思い付かないんだろう。

 どちらにせよ、後一押しだ。


 「それに、貴様等の下らない論法だと、ますます自分が貴様等と組む事があり得なくなるぞ? 何故なら、あの子達の方が、貴様等より遥かに強いからだ!」


 「「なっ!」」


 挑発された馬鹿二匹がスズちゃん達の方を見る。

 次に言ってくる事は大体予想がつくので、ここで決める。


 「……ふざけんな!」

 「俺等があのチビ共より弱い訳が……!」


 「だったら、実際勝負してみるか? 最も、結果は目に見えているがなぁ!」


 トドメの一言を放つ。

 すると予想通りの返答が返ってきた。


 「上等だ、こらぁ!!」

 「望み通りやってやらぁ!!」


 計画通り!!

 仮面の下で、思わず顔が悪い顔になるのを感じる。

 あっ、表情筋ないんだった。


 「ならば実戦形式での試合を始めるが、問題無いな?」


 「ったりめぇだ! こら!」

 「ぼこぼこにしてやらぁ!!」


 何処までも予想通りの返答。

 何処の世界でも、馬鹿は皆同じのようだ。

 とりあえず馬鹿は無視して、スズちゃん達の方へと向かう。

 見ると、ポコ君がアワアワしているのに対し、スズちゃんとチエちゃんの二人は、落ち着いた感じだった。


 「サっ、サヨリさん! 何であんな事……」

 「聞いてた通りだけど、二人共大丈夫?」


 慌てるポコ君を無視し、二人に問いかける。

 すると、二人共心配そうな目で見てきた。

 

 「サヨリ様……」

 「良いんですか?」


 二人が心配そうに聞いてくる。

 その心配と質問の意図はすぐに分かったので、キッパリと返答した。


 「気にせず、本気でやっちゃいなさい♪」

 「っ! はい!」

 「わかりました……!」


 自分の許しを得て、二人が元気良く返答した。

 さて、これで、準備は整った。

 後はゆっくりと始まるのを待つだけだ。

 


 

 

 

 

 「そう言えば、サヨリ様の親友って、どんな方なんですか?」

 「ん、そうだな……とりあえず毛深いよ!」

 「そっ、そうなんですか……」

 「あと、体と声が大きくて、肉が好物だよ!!」 「へっ、へぇ……」

 「あとそれから、女の子が大好きで、よく女の子に飛びついて、追いかけられてた!!」

 「サヨリ様の友達って……?」



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