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異世界ドクロは自由がお好き‼  作者: 寿限夢
初めての町
21/60

ポコ君、白くなる。

三日かかった……どうしてこんなに遅筆なの!

 試験が終わったその夜、ギースは自室 でぐったりしていた。

 試験が終わった直後、あの仮面の受験者ーーサヨリに、六時間にも渡り、質問責めにあったからだ。


 やれ、カードが何処で売っているのか?

 と、言う質問から始まり、

 買えないなら何処で手には入るのか?

 また、どのようにして作るのか?

 どういった仕組みで操作し、動かすのか?

 召喚出来る魔獣の規模は? 大きさは?

 召喚時に発生する魔力の消費量は?

 など、質問は多岐に渡った。


 一つ返せば今度は二つ返ってくるという、ねずみ算式の質問責めに会い、ただでさえ無茶な魔獣召喚により疲弊していたギースの精神は、どんどん削られていった。

 自身の持てる召喚カードの知識を全て吐き出し、ようやく納得させ、帰らした頃には、ギースの精神と肉体は既に限界を迎えていた。


 「な……なんだったんだ……一体……」


 誰に言うでもなく、一人呟いた。

 突如として現れた仮面の男。

 自身の最強の手札であるタウゼント・ハザードを一蹴し、遂先ほどまで、ギース自身を質問責めにした。

その人物を思い出し、ため息をつく。

 あんな目に会ったのはこれで二度目だ。

 一度目は昔、ギース自身がまだアルバスの研究生だった頃。

 自身の召喚カードにおける論文の発表が終わった後、一人の上級生に捕まり、同じ様に質問責めにされた。

 あの時もまた、自身が疲れ果てるまで質問が続き、ようやく終わった頃には、半日過ぎていた。

 その時の事を思い出し、今度はふっ、と笑いが込み上げて来た。

 そういえば、こんな事は久しぶりだった。

 昔はよく、同じ研究生同士で自身の研究について話し合い、意見交換したものだ。

 確かに色々と大変だったが、自身が好きな事を研究し、話し合うのは、それほど苦には感じず、むしろ楽しかった。

 今思えば、あの上級生やサヨリの質問責めも、中々に有意義な物に感じていた。 

 

 こんっ、こんっ、


 「ギース……」


 ドアがノックされ、ヒラルダが入ってきた。

 いよいよ来たかと思い、ギースはヒラルダに向き合った。


 「ギース……」

 「わかってる、今日の事だろう?」

 「‥……」

 「あれだけの事をしたんだ。ギルドからの追放は免れない‥……色々と悪かったな‥……それじゃあ‥……」

 「その事についてなんだけど‥……」

 「ん?」



 「あんた、ギルド辞めなくていいみたいよ?」


 

 「‥……はぁっ?」


 ヒラルダの口から出た言葉に、ギースは自身の耳を疑った。

 開いた口が塞がらず、間の抜けた顔でヒラルダを見る。


 「どっ、どういう‥……」

 「あの受験者、サヨリ? だったけ? が、こう言って来たのよ」



 「『あれは自分がギースに頼んで、難易度を上げてもらったんだ』って‥……」



 「なっ‥……」

 「だからギースは自分の頼みを聞いてくれただけで、何も悪くないって‥……」

 「‥……」

 「当人がそう言うんじゃね‥……私からは何も言えないわよ‥‥…」

 「‥……」

 「だからギース‥……あんた、辞めなくても大丈夫‥……」


 「そんなのが通用する訳ないだろう!?」


 予想外の発言に、ギースは一瞬固まった。

 だが、すぐに冷静になり、反論する。


 「何人も見てるんだ! それに本部が‥……」

 「周りにいた連中には私から説明しとくよ‥……あれは受験者が自分から望んだ事だって‥……」

 「なっ‥……!」

 「それと、本部の事も気にしなくて良いよ? 私が報告しなきゃ済む話だからね‥……」

 「‥……お前はそれで良いのか?」


反論を全て返され、ギースは唖然とした。

 それでも、一言だけ聞き返した。


 「はぁ?」

 「‥……俺がギルドマスターで、良いのかと聞いたんだ」

 「‥……」

 「別に俺がいなくても、お前の実力なら‥……」

 「嫌だよ、面倒くさい」

 

 ヒラルダがばっさりと切り捨てた。


 「‥……」

 「ギルドマスターなんて、私の性に合わないんだよ‥……私は、しがない受付で充分さ‥……それに‥……」

 「‥……それに?」



 「あんたがギルドマスターじゃなきゃ、私が嫌なんだよ」



 「‥……えっ」

 「そう言う事だからさ‥……んじゃ、また明日‥……」


 それだけ言って、ヒラルダはさっさと帰ってしまった。

 残されたギースは一人、呆然としていた。

 呆然としつつ、ヒラルダの出て行ったドアを眺めていた。


 「‥……まったく、なんて日だ‥……」


 ぽつりと一言、それだけ呟いた。

 その顔には、どこか吹っ切れたような微笑みが浮かんでいた。


 


        *




 「むむ!? 何処からか甘酸っぱい青春の香りが!!」

 「いきなり何言ってるっすか!?」


 突然椅子から立ち上がったコポさんの発言に、ポコ君がツッコんだ。

 あまりのアホな発言に、その場にいた全員がずっこける。

 青春の香りって‥……いきなり何言うてはるん? このわんこ‥……。




 自分達は現在、コポさんの店の奥にある二人の家の居間にいる。


 試験が終わったあの後、試験官の男ーーギースに召喚カードについて聞きたい事を聞いていたら遅くなってしまい、急遽コポさん達の家に一泊させてもらうこの事になったのだ。

 生憎と召喚カードを手に入れる事は出来なかったが、代わりに貴重な情報をいくつも手に入れたので良しとする。

 長い間質問に答えてもらったお詫びに、受付の女の人ーーヒラルダさんに軽くフォローをお願いしといたし、これでチャラにしてもらおう。


 そんなこんなで色々あり現在、夕食が終わった後、コポさんが自分に大事な話があると言うので聞こうとした矢先に、この奇行である。

 思わず変な方言になろうというものだ。


 「いや、つい懐かしくてなぁ‥……こう見えても父さんだって昔は‥……」

 「そう言うのいいから!! それよりサヨリさんに大事な話があるんじゃなかったっすか!?」

 「おぉ! そうだった!!」


 ポコ君に言われ、ようやく落ち着いたコポさん。

 本当にマイペースだなぁ‥……。


 「いや~すみません、お騒がせして‥……つい、昔を思い出して‥……」

 「あぁ、気にしなくって良いですよ♪ それで話って何でしょう?」

 「おぉ、それなんですが‥……」


 まぁ、コポさんだし仕方ないか、と、思い、とりあえず本題に移ってもらった。

 じゃないと、いつコポさんワールドが発動するか、分からないからだ。


 「サヨリ様は、これからどちらに向かわれるのですかな?」

 「とりあえず、アルバスの首都の魔法学院に向かおうと思います。 チエちゃんが魔法使い志望だし、自分も色々と調べたい事があるんで」

 「ふむ、そうですか‥……その後は?」

 「特に決めてないですけど‥……それが何か?」

 「はい‥……サヨリ様、折り入ってお願いがあります。 その旅に、家のポコを一緒に連れていってもらえませんかな?」

 「えっ!?」


 コポさんの発言にポコ君が驚く。

 どうやら、聞かされていなかったらしい。

 コポさんは構わず続けた。


 「この子は幼い頃に母親を亡くしてからずっと、男手一つで育ててきたんですが‥……私に似ず賢い、良い子に育ってくれました。 店の手伝いも自分から進んでやってくれて、いつかは、私の店も継いでくれるとまで言ってくれたんです‥……ですが私は、この子にはもっと広い視野で、世界を知ってもらいたいのです」

 「父さん‥……」 

 「サヨリ様が呪いを解いてくれたのも、何かの縁でしょう‥……お願いします。どうか息子を、旅に連れていってやってください」


 そこまで言い、コポさんが自分に頭を下げた。

 ポコ君は黙って、それを見つめている。

 ‥……これは、自分だけで決める事では無い。

 そう思い、スズちゃんとチエちゃんに問いかけた。

 すると、

 

 「スズは構いませんよ?」

 「私も‥……問題ありません」


 との事。

 まぁ、大体予想していた答えだ。

 と、なれば後はポコ君次第だ。

 ポコ君に向き合い、問いかけた。


 「ポコ君はどうしたい?」

 「‥……」


 自分の問いかけに、ポコ君は黙っていた。

 上手く心の整理が出来ず、戸惑っているようだ。


 「父さん‥……良いの?」

 「ポコ‥……お前ももう十六だ。父さんの事は気にせず、自分のやりたい事をやりなさい」

 「‥……わかったっす」


 迷うポコ君に、コポさんが諭すように言った。

 その言葉で、ポコ君も決心がついたようだ。


 「サヨリさん! オイラも旅に、連れていってください!! お願いします!!」


 ポコ君が真っ直ぐに自分を見て言った。

 その目には、もう迷いは無い。

 ならば当然、自分の答えは決まっている。


 「ん! 良いよ!!」

 「ありがとうございます!!」


 こうして、新たな旅の仲間が一人加わったのであった。




        *

 


 「あの……」

 「サヨリ様!」

 「ん?」


 突然、チエちゃん達が話しかけてきた。 何だろうと思い、向き合う。


 あの後、ポコ君が早速準備すると言い、そのまま解散となった。

 ポコ君は旅立ちの準備のため自室へと向かい、コポさんも今日はもう休みますと言って自室へと向かった。

 自分は疲れないし寝る必要も無いので、鍛練をしに外に出ようとしたところで声をかけられたのだ。 

 

 「どしたの? 二人共?」

 「あの……今日も‥…いつもアレ……お願いしても良いですか?」

 「スズ達、昼間のサヨリ様を見てたら、体が疼いちゃって‥……」


 そう言って二人は自分を見つめてきた。

 いつものアレとは……恐らくアレの事だろう。

 

 「良いけど……明日も早いけど、二人共大丈夫?」

 「大丈夫です……お願いします」

 「それに、どちらにせよこのままじゃ、興奮して寝れませんよ!」


 どうやら二人共、やる気まんまんのようだ。

 まぁ、自分としても色々と助かるので、キリのいいところで終わらせれば大丈夫か。


 「ん! わかった♪ それじゃ二人共、外に……」

 「ちょっ、ちょっと待つっす!!」


 突然、慌てた声を上げながらポコ君が部屋から飛び出してきた。

 何だかひどく慌てた様子だ。

 どうかしたのだろうか?


 「あれ? ポコ君、もう準備終わったの?」

 「あっ、はい、そっちはもう終ったっす。荷物用の魔導具があるんで……って! そうじゃないっす!! サっサヨリさん!! いっ、一体二人と、なっ、何するつもりっすか!?」


 途中、噛み噛みになりながらポコ君が聞いてきた。

 何だかわからないが、すごい狼狽えっぷりだ。

 本当にどしたの? 

 

 「どうしたんだ? ポコ? そんなに、慌てて……」

 「どうかしたの……ポコ君?」


 スズちゃん達も不思議そうな顔でポコ君に問いかけた。


 「どうしたもこうしたもないっす!! ふっ、二人共!! いっ、いつからサヨリさんと、そっ、そんな関係に!?」






 「? 五日前からだが?」


 「ええっ!?」


 「私達から……お願いして……」


 「えっえええー!?」


 今度は絶叫し始めるポコ君。

 もう夜なのにテンション高いなぁ。  ご近所からのクレームとか、大丈夫なのだろうか? 


 「なっ、なっ、なっ……」


 「最初から凄かったよね~サヨリ様♪」

 「うん……もう、何が何だかわからないくらい……」

 「スズも、気がついたら後ろから攻められてて……」

 「私も……攻めてたのに……いつの間にか受けに回ってたり……」

 「してる時だけ、人が変わるんだよね!」

 「いつもは優しいのに……してる時は……獣みたい……」

 「でも、優しいのは変わらないよね!」

 「うん……いつも優しく……手取り足取り……教えてくれる……」


 「二人共照れるなぁ~♪」


 二人の発言に思わず照れる。

 褒められたって自分、何も出ないぞ?


 「そっ、そんな……二人は……そこまで大人の階段を……!」


 二人の会話を聞いたポコ君、今度は真っ白になって固まっていた。

 コポさんといい、ポコ君といい、随分と芸達者だなぁ。

 てゆーか、大人の階段って……鈴○キサブローか!


 「? どうしたんだ、ポコ?」

 「真っ白だよ……ポコ君?」


 二人が心配そうにポコ君に話しかけるが、ポコ君に反応は無い。

 目は虚ろで、手をだらんっ、とぶら下げたまま立ち尽くしている。

 ……って、まさか! コポさんみたく死んでないだろうね!?

 コポさんの昇天未遂を思い出し、慌てて駆け寄った。

 脈をとり、呼吸を確認する。

 ……大丈夫、気を失ってるだけだ。

 とりあえず、ほっ、と一息。

 

 「おぉ~い、ポコ君。しっかりするだ~♪」


 ぺちぺちぺち、


 「……はっ!」


 軽く頬を叩いたら反応が帰ってきた。

 先生、手術は無事成功です。


 「大丈夫か? ポコ君?」

 「サっ……サヨリさん……二人が……二人が大人に……」


 うわ言のように呟くポコ君。

 大丈夫だと思ったら駄目だった。

 まだ意識が混乱してるっぽい。

 と言うか、二人が大人って……何の事だ?


 「何だ! さっきから訳のわからない事ばかり言って! サヨリ様の手を煩わせるんじゃない!!」

 

 いい加減焦れったくなったのか、スズちゃんが声を荒げた。

 形のいい眉をつり上げ、ポコ君に詰め寄る。

 

 「スっ、スズちゃん……」

 「そんなにあれならサヨリ様ではなく、スズが相手になってやる! 表に出ろ!」


 「ええっ!!」

 「ぬぉっ!!」


 いきなり蘇生したポコ君にびっくりして、思わず変な声が出てしまった。

 てゆーか、スズちゃん。

 何で喧嘩腰になってるの?

 

 「なっ、何言ってるすか!? そんな事……!? しかも外で!? いや、それ以前に二人は……!!?」

 「小さな事でぐだぐた言うな!! 大体、さっきから何だ!!




  " 戦闘術の鍛練 " に大人とか階段とか、訳がわからん!!」




 「……えっ?」


 スズちゃんの発言に、またポコ君が固まった。

 今度は真っ白にはなってないが、その場で呆然としている。

 いちいち忙しいなぁ、もう。


 「……戦闘術の鍛練?」

 「そうだ!」

 「‥‥…五日前から?」

 「そうだ!」

 「……二人で……サヨリさんと?」

 「そうだ! って、最初からそう言ってるだろう! 何を聞いていたんだ! お前は!!」

 「……」


 そこまで聞いた途端、ポコ君がまた真っ白くなってしまった。

 しかし、今度は固まらず、ゆっくりと動き出した。


 「……ん? どうした、ポコ?」

 「……ポコ君?」 


 ゆっくりと、足を引き摺りながら、歩くポコ君。

 そのまま部屋の隅にまで行き、しゃがみこんでしまった。

 一体、どうしてしまったんだろう?


 「ポっ、ポコ君? だっ、大丈夫かな」


 心配になって声をかけてみた。

 すると、


 「あっ、大丈夫っすよ。心配しないで。うん、オイラ、ぜんぜん大丈夫っすから。うん、大丈夫っすよー。ははっ、オイラ元気ー。……はぁ、死にたい」


 「いや! ぜんぜん大丈夫じゃないよね!?」 


 あまりの変貌っぷりに思わず唖然。

 何か口調も変だし、絶対やばいよね!

 

 「ちょっ!? ポコ君しっかりするんだ!」

 「あっ……サヨリさん……大丈夫っすよー大丈夫っすー。ちょっとオイラー自分の汚れっぷりに愕然としてただけなんで……大丈夫っす……大丈夫っすから……」

 「何が大丈夫なもんか! そうやって大丈夫大丈夫連呼する奴に限って大丈夫じゃないんだ!!しっかりするんだ! ポコ君!! ポコくーーん!!」





 その後、必死に呼びかけたがポコ君は元に戻らず、キレたスズちゃんがポコ君に刀を突き付け、「起きろ」っと脅すまで、この状態が続いた。


 


 ~コポさん自室~


 ドウシタモコウシタモナイッス!

 「ZZZ……」

 エエエッ!

 「ZZZ……」

 フッ、フタリハ……ソコマデオトナノカイダンヲ……!

 「ZZZ……むにゃ、」

 「……むにゃ……大人の……階段のぉぼる~……むにゃ……君はまだ……むにゃ、シンデレラさ……」

 ポコクーーン!!

 「ZZZ……」


 ドスッ ……オキロ。

 「はっ!?」

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