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血塗れの患者

「だーかーらー!!この人はここ出入り禁止なんです!!」


「出入り禁止ってなんだよ!?俺の恩人が死にそうになってるんだ!治療してくれよ!!」


「他をあたってください!!」


朝礼を終えしばらくして昼に差し掛かろうという時。

回復所の入り口の前ではマトさんとガタイのいい冒険者の男性が口論をしていた。

ことの発端は少し前のこと、



「カルツさん〜。院長かマトさん知りません〜?」

朝の診察を終え、廊下を歩いていたところ、ゆったりとした口調で呼び止められた。

話しかけてきた女性はセナウさんだった。

白に近い水色の髪を肩くらいで切り揃えている。

セナウさんは俺より少し前にこの回復所で働き始めていた人だ。

普段は落ち着いた雰囲気のある人だが、今は少し慌てている感じがあった。

「どっちも見てないんですけれど…どうしました?」

「いえ、あの、緊急の治療を要する患者さんがお見えになったんです〜。それで、回復士が必要で〜。ただ、新人のわたしが対応するわけにはいかないので〜」

「本当にこの回復所、回復士が少ないんですね」


聞いたところ、今までこの回復所には回復士が4人しかいなかったらしい。院長、マトさん、アリスさん、そして新しく入ってきたセナウさん。


基本的に回復所には夜でも治療のできる人を常駐させておく必要があるので、どんなに小さい回復所でも十数人は回復士の人材を雇うものだが、まだ回復所ができて間もないため、人材が少ないのだということだった。


結構大きい回復所で郊外の森の中という需要も少なくはない土地にあるのに、回せていることに疑問と驚きを感じたのも記憶に新しい。


「すみません呼び止めてしまって〜わたし探してきます〜」

そう言ってセナウさんは行ってしまった。

と思ったら戻ってきた。

「あ!もしよければ呼んでくるまで患者さんを見ていていただけますか〜?入り口のところに待たせてしまっているので〜」



「はい!………?」

待たせている…?急を要するような容体なのに……?


もしかすると回せてはいないのかもしれない、と思いながらもとりあえず入り口に急ぐ。

入り口に辿り着くともうマトさんが治療に取り掛かろうとしていた。そばにセナウさんはいない。どうやらセナウさんが言って回ったことで事務の人がマトさんを呼んでくれたらしかった。


担架の横には男性が心配そうにその様子を見ていた。

「だ…大丈夫ですかね?この人は俺をかばって…」


「落ち着いてください。見せていただきますね…」

少ししてマトさんの手が止まる。

その場に緊張感が走ったように感じた。

しばらく時間が空いた後、突然口を開いた。

「あんたまた来たの!?もう来るなって言ったでしょうが!!」


そしてマトさんが治療を拒否し、今の、マトさんと付き添いの冒険者が口論している状況になってしまったのだった。



「マト、いったいどうしたんだ?」

いつのまにかアリスさんが来ていた。

マトさんの表情が引きつる。

「そっちはこの間の冒険者じゃないか?名前は確か…バランといったはずだ」

「そうです!この間はありがとうございました!」

「担架にいるこの人は?」

「ああ、そうだった!実は…」

そこでマトさんが慌てた様子で間に入る。

「アリス!そういえば院長が呼んでたわ!アリスに大事な話があるって!」

「えー…あとでもいいんじゃないか?どうせ遅刻のことだろ…?」

「今行ったほうがいいわよ!ほら、この間も大目玉だったじゃない!」

「ちょっと!ええ…」

マトさんがアリスさんを押してどこかへ行ってしまった。


そしてこの空間には俺だけが残されてしまった。

バランと呼ばれていた冒険者の男性が、唖然としている。


「…俺が見ておきましょうか?」


「あ、ああ。頼む!」

「最善を尽くします」

そう言いながらも、俺は内心この人は助からないと感じていた。


顔は血の気がなく、冷たくなっている。

鎖骨の上あたりが大きくえぐれていた。牙の噛み跡もあることから、獣型のモンスターの仕業だろう。

一番ひどいのは顔だった。皮膚が削がれたようになって、血は固まり、全く表情が分からなかった。あるところでは骨も見えている。

息は…あった、が弱い。

正直、出血量から見ても、もう…

「…がほっ!」


え…


急に血まみれの患者が起き上がった。その勢いで飛ばされた血が白衣に点々とシミを作る。

傷だらけの手が掴んでくる。

力が強い。

「そうだ!君、さっきアリス見なかった?」


さっきまで息も絶え絶えだった患者は、はっきりとした口調で、そう言った。

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