第八十七話 決意の刻
バストリア郊外の霧の村でアルデンの影を目撃したアレンは、ヴァルガスと共にバストリア城へと戻る。
アルデン討伐の是非を巡り、仲間たちと話し合うが——。
バストリア城の広間に、アレンたちは集まっていた。
高くそびえる石壁に囲まれたこの部屋には、王族の面影が残る豪奢な装飾が施されているが、今はその威厳を感じる余裕もなかった。
テーブルを囲むのは、アレン、ヴァルガス、ユイ、ミリア、フェン、そしてゼノン。
それぞれが緊迫した表情を浮かべていた。
ヴァルガスが腕を組み、低い声で言う。
「……間違いねぇ。アルデンはまだ生きてる。いや、もう人間じゃねぇかもしれねぇがな」
アレンは黙って頷く。
霧の村で見た"アルデンの影"——それは、明らかに以前の彼とは異質な存在だった。
ゼノンが厳しい顔で問いかける。
「だが、どうする? アルデンが"完全にヴォイド・リーヴァー"になりかけているのなら……止めるなら今しかない」
「行くしかないだろうな」
アレンは静かに答えた。
その決意のこもった声に、ユイが不安そうに身を寄せる。
「でも……アレン、本当に戦うの?」
彼女の震えた声が、張り詰めた空気を揺るがした。
「危険すぎるよ……だって、アルデンはもう人間じゃないんでしょ?」
ユイの言葉に、ミリアも頷く。
「そうよ。確かにアルデンは脅威だけれど、アレンがわざわざ戦いに行く必要があるの?」
「……違う」
アレンは目を閉じ、静かに言った。
「俺しか止められない……」
ミリアが言葉を詰まらせる。
アレンは拳を握りしめた。
「アルデンは完全な存在になろうとしている。もしこのまま放っておけば……バストリアどころか、この世界全体が危ない」
「そんな……」
ユイは不安げにアレンを見つめる。
ヴァルガスが口を開く。
「確かに危険だが、放っておけばもっとヤバいことになる。アイツはもう元人間なんてレベルじゃねぇ」
ゼノンも静かに頷く。
「……確かに、王国の兵を総動員したところで、勝てる保証はない。それなら、アルデンの動きを知るお前が行くのが最善かもしれん」
だが、それでも——ユイは納得できなかった。
「アレン……本当に、絶対に勝てるの?」
彼女の言葉に、アレンはしばし沈黙した。
そして、力強く答えた。
「分からない。でも……負けるつもりはない」
ユイがぎゅっと拳を握る。
「……アレン……」
「これは、俺の戦いだ」
彼の言葉に、誰も何も言えなかった。
フェンが静かにアレンの足元に寄り添う。
まるで、彼の決意を感じ取っているかのようだった。
やがて、ミリアが静かに息を吐き、目を閉じる。
「……行くなら、必ず戻ってきて。約束よ」
アレンは小さく頷いた。
戦いの刻は、迫っていた——。
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アレンはアルデン討伐を決意する。
ユイとミリアの不安をよそに、アレンの意志は揺るがない——。




