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第六十二話 喰らう

バロッグ・タイラントの返り血を舐めたことで、アレンは自身の肉体が変質し始めていることを実感した。

しかし、敵は依然として立ちはだかる。

さらなる力を求め、アレンは新たな一歩を踏み出す。


バロッグ・タイラントの咆哮が大地を揺らす。


巨大な拳が振り下ろされ、岩を砕く衝撃が周囲に波紋のように広がる。

土煙が舞い上がり、視界が一瞬ふさがる。


しかし、アレンは迷わなかった。


「もう、そんな攻撃じゃ俺は捉えられねぇよ」


バロッグ・タイラントの拳が地にめり込む一瞬の隙を突き、アレンは一気に駆けた。

風を切る音が耳をかすめる。


そのまま跳び上がり、バロッグ・タイラントの腕に手をかけると、反動を使って肩まで一気に駆け上がる。


「今度は……喰える場所を狙う」


バロッグ・タイラントは身をよじり、振り落とそうとするが、

アレンの動きはすでに別次元に達していた。


攻撃を受けたときとは比べものにならない速さ。

筋肉が、反応が、まるで自分ではないかのように鋭敏になっている。


「こいつの肉は噛みちぎれねぇ……なら……」


アレンの視線が、狙うべき一点を捉えた。


皮膚ではない。

関節の裏でもない。


もっと柔らかく、再生すら一瞬では追いつかない場所——


アレンは、バロッグ・タイラントの眼球に噛みついた。


「グオオオオオッ!!!」


バロッグ・タイラントの巨体が激しく揺れる。


視界が黒く染まり、口内にドロリとした感触が広がる。


「……ッ!!」


噛み締める。


「ブチィッ!!」


眼球の膜が裂け、粘ついた液体が弾けた。


「ガアアアアアッ!!!」


バロッグ・タイラントが吠える。


巨体がのたうち回り、周囲の地面が大きく震える。

その衝撃に耐えながら、アレンは口の中に広がる眼球を咀嚼した。


ぬめりとした質感、鉄の味が舌を覆う。


「……これが、お前の力か?」


アレンは、喉を鳴らし、それを飲み込んだ。


次の瞬間。


「ドクンッ……!!」


心臓が跳ねた。


「……ッ!!」


熱が、駆け巡る。


筋肉が膨張し、骨が軋む音が響く。


「グググッ……!!」


皮膚が熱を持ち、細胞が覚醒するかのような感覚。

視界が一気に広がり、空気の流れまでもがはっきりと見える。


「これは……!」


バロッグ・タイラントの動きが、一瞬遅く見える。


風の流れが、明確に把握できる。


「力が……湧き上がる……!!」


アレンは拳を握りしめた。


バロッグ・タイラントは、吠えながら片目を押さえ、なおも襲い掛かろうとしている。


だが、今のアレンには、すべてが見えていた。


「今度は……こっちの番だ」


新たな力を手に入れたアレンが、ゆっくりと拳を構えた。


戦いの行方が、今まさに変わろうとしていた——。


---



血を舐め、回復し、身体能力を向上させたアレンは、バロッグ・タイラントの体を駆け上がり、眼球を噛みちぎった。

さらに、それを飲み込んだことで、いまだかつてないパワーアップを果たす。

この戦いの流れは、ついに変わるのか——。

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