表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/100

第六十一話 血に宿る力

バロッグ・タイラントの異常な耐久力と再生能力により、アレンの攻撃は決定打にならなかった。

どれほど傷を負わせても、すぐに塞がり、まるで無傷のように立ち続ける。

自分の力では勝てないと悟った時、アレンはある可能性に気づく。

バロッグ・タイラントの咆哮が響き渡る。


アレンは息を荒げながら、戦闘の状況を見極める。

この戦い、すでに何度も攻撃を仕掛け、確実にダメージを与えているはずだった。


しかし。


「……嘘だろ」


アレンの目の前で、バロッグ・タイラントの体は何事もなかったかのように佇んでいた。


何度も拳を叩き込んだ。

鋭く貫手を突き込み、深い傷をつけたはずだった。


しかし、結果はどうだ。


「全部……無駄だったのか……?」


バロッグ・タイラントの体には、かすかに裂けた跡が残っている。

だが、その傷はすでに塞がっており、血すら流れていない。


アレンの拳や蹴りは、この怪物の前ではかすり傷にもならないのか。


「……クソッ!!」


拳を握りしめる。


バロッグ・タイラントは、未だに余裕の表情を浮かべながら、ゆっくりとアレンを見下ろしていた。


「まだ……遊びのつもりか……」


圧倒的な力の差。

自分の攻撃は何の意味もなさない。


アレンの中に、じわじわと焦りが広がっていく。


---


「……なら、どうすればいい?」


このままでは勝てない。


バロッグ・タイラントにダメージを与える手段がない以上、ただ戦い続けるだけでは時間の無駄だ。


「クソ……このままじゃ……」


アレンの思考がまとまらないうちに、バロッグ・タイラントが動いた。


巨大な拳が、一瞬にして視界を覆う。


「っ……!!」


回避が間に合わない。


次の瞬間、衝撃がアレンを襲った。


全身が空を舞い、地面に激しく叩きつけられる。

体中に鋭い痛みが走り、呼吸が詰まる。


「ぐっ……!!」


肋骨が軋み、腕は地面に叩きつけられた衝撃で痺れている。


「……ヤバいな……」


体は限界に近い。


しかし、バロッグ・タイラントは変わらず、そこに立っている。

何事もなかったかのように。


「勝てるわけねぇだろ……こんなの……」


アレンは拳を握りしめる。


「どうすれば……どうすれば、こいつに追いつける……?」


---


「……喰うしかねぇな」


その言葉が、思わず口から漏れた。


バロッグ・タイラントは、常識外れの存在。

規格外の強さを持つこの怪物の肉を喰えば、自分もまた——


「強くなれる……!」


迷いはなかった。


アレンは、バロッグ・タイラントの傷口へ向かい、

その巨大な肉塊に喰らいつこうとする。


しかし。


「……硬すぎる……!」


歯が通らない。


噛み砕こうとしても、まるで鋼のような皮膚が邪魔をする。

たとえ傷口に近づいても、筋肉自体が異常に頑強で、引き裂くことすらできない。


「こんなもん……喰えるわけねぇだろ……!」


苛立ちが募る。


さらに、バロッグ・タイラントは明らかに警戒していた。

アレンが近づくたびに、巨体を動かし、距離を取る。


「チッ……今さら、逃げる気かよ……!」


関節の裏を狙おうにも、先ほどの攻撃で学習したのか、

バロッグ・タイラントはそこを完全にガードしている。


「……どうすれば……」


この状況を打破する方法が思いつかない。


だが、その時。


アレンは、ふと手元に目を落とした。


血に濡れた拳。

バロッグ・タイラントの返り血が、指先にこびりついている。


無意識に、アレンはそれを舐めた。


「……!」


次の瞬間、全身に衝撃が走る。


「……おお……」


熱が、駆け巡る。


心臓が激しく脈打ち、筋肉が膨張するような感覚。


「なんだ、これ……」


力が湧き上がる。


傷の痛みが、薄れていく。

折れかけていた肋骨の軋みが消え、裂けた皮膚がじんわりと熱を帯びる。


「……回復……?」


血を舐めただけで、ダメージが癒えていく。


ならば。


「肉を喰えば……どれだけ強くなれる……?」


アレンの目が鋭く光る。


これは、勝機かもしれない。


バロッグ・タイラントを倒すための、最後の鍵。


「……決めるか」


アレンは、血を拭い、拳を握り直した。


バロッグ・タイラントは、なおも唸り声を上げながら立ち上がろうとしている。


だが、もう逃がさない。


「……喰らってやるよ、お前の力ごと」


戦闘の行方は、ここから決まる。


--‐

アレンは攻撃力の限界を感じ、バロッグ・タイラントの肉を喰おうとするが、皮膚が硬すぎて噛みちぎれなかった。

しかし、試しに舐めた返り血によって、驚異的な力の増加とともに、ダメージの回復を体感する。

バロッグ・タイラントの肉を喰えば、さらに強くなれるのか——。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ