第四十二話 『現れる巨顔 虚無のエネルギー』
「う……く……」
視界が晴れると、俺達は周囲を見渡す。するとそこにはダンジョンと化した学校ではなく、黒と紫の禍々しい色が広がる空間にいた。
「ちぃ、どうやら技の発動を許したみたいだな……またこの空間に飛ばされるなんて……」
「ええ……あ! 卓也さんと貴明さん下手に動いちゃだめよ、此処から落ちたら、どこに行くか分からないわよ。ここは次元と次元の狭間だから……」
動き出そうとしている卓也と貴明に向かってリサは窘めるように言った。
「マジか……」
「だとしたら戦い憎いな、俺達の足場はここだけかよ……流石に狭いぞ……」
貴明はそう言って足場を見た。おそらく、先ほどいた部屋のタイルごとこの空間に飛ばされたのだとは思うが、それが俺達の足場になっていた。
「あ~、確かに貴明が言う通り足場は狭いが……五畳分……くらいはあるんやからマシやで? 前にこの空間に引きずり込まれた時は、良くて半畳。運悪かったら座布団くらいしかなかったからな……」
「マジかよ、お前それでよく倒せたな……」
俺の言葉に卓也と貴明は驚愕という表情で俺を見る。
「ハッハッハ、もっと褒めろほめろ」
「三人とも、じゃれている場合じゃないよ 来るよ!」
リサが叫ぶと、俺達は正面を見る。すると、先ほどから稲妻をバチバチと散らしながら広がる暗雲が勢いよくはじけ飛ぶと、そこから巨大なアロタロスが姿を現した!!
「な、なんじゃあれ……」
「が、顔面だけ?」
リサは目を見開き、眉をひそめて言う。貴明と卓也も同じ表情をする、もちろん俺もだ。なぜなら現れたアロタロスの姿は巨大な顔面だった、赤いマスクを付けた大岩のような顔面だ。
「ちぃ、こいつの力ではこの程度が関の山か……不細工すぎて泣けてきたぞ……」
俺達が驚愕しているとアロタロスの声が再び二重に聞こえてきた。だが、先ほど前とは違い、アロタロスの声にダブっていた声の方がはっきりと聞こえ、アロタロス自身の声は小さくなっていた。
「あなた何者なの? そんな姿をして、ふざけているつもり……?」
リサはそう言うと鞭を構えた。
「ふざけているわけではないが……まぁいい、我が名は虚無のエネルギー……様々な時間、世界を渡り歩き手にしたものにより性質が変化する力だ」
「アロタロスではないと思っていたけど、まさか、虚無のエネルギーそのものが現れるとは……ね……」
「虚無のエネルギーって言うたら、実態もなんもない存在のはず、なぜ今実体を持っているんだ?」
「持つものにより性質が変わるって今こいつ自身が言ったな? まさかアロタロスのバカが握ったことで、性質が変わったとか!?」
俺の言葉にリサが答えようとした瞬間、虚無のエネルギーの声が響いた。
「そうだ、俺には本来自我はない、善人が持てば進化、繁栄、平和を生み出す力になる。しかし、悪人が持てば破壊、没落、滅亡を齎す力、だが、アロタロスが手にした事で俺の性質は大きく変化したのだ!!」
虚無のエネルギーの声が空間に大きく木霊する、だが奴はまだ話をつづけた。
「奴の邪な感情はすさまじく、それを取り込んだ俺は奴の消滅に合わせ自我と肉体を手に入れた。だが、奴の感情を基にしているせいか欲が出てな、この肉体は力はあるがいかんせん頭と見た目が悪い、より強くて美麗な物を探そうとしたが六賢者が邪魔をする。そこで思い出した、ター君貴様の存在を」
虚無のエネルギーの言葉に俺はドキッとする。なんだ、俺がなんだというんだ?
「貴様は玉響の勇者同様異世界の人間だ、と、なれば、貴様らの世界に行けばより強い力を持った人間がいるのではないかとな、世界を渡るなんぞ、俺からすれば容易な事、世界を渡る前に七つの大罪とか言うのを配下に置いたのち、貴様の思念を辿りこちらの世界に転移したのだ、もっともその途中で二人ほどやられてしまったがな」
虚無のエネルギーは俺達に今までの現状を語った。なるほど……だが
「人間の負の感情という奴がヤバいのか……」
「ただのエネルギー体に、此処までするほどの自我を与えるほどのアロタロスとか言う奴自身がヤバい奴なのか分からんが……」
卓也と貴明はそう言って、虚無のエネルギーを見ながら構えた。
「おそらく両方でしょうね、負の感情という奴の力の源がアロタロスという人間によって増大された……それにしても考え方まで支配されてるじゃない……」
「この世界に来て思った、この世界の人間は秘めた力があると、ならばこの世界とこちらの世界を合わせ、こちら側の人間の力を引き出した後、強力な力を持つ複数の人間を俺の依り代のための部品にしようとな……さぁ、無駄話は終わりにしよう。そしてお前らも俺の依り代のための部品になるがいい!!」
虚無のエネルギーが叫ぶと奴の両端の空間が裂け、そこから二本の腕が飛び出してきた。
「そう言うタイプのボスね、なら左腕優先か……復活されんようにな」
「何の話か分かんないけど、来るよ……!」
俺の言葉にリサが叫ぶと虚無のエネルギーは動き始めた! 仮面の額が光り輝くと魔力が放たれた!!
「ちぃ!」
「躱すのを見越しての攻撃ね……皆こっちに来て! 防ぐ」
リサが魔導書を開きながら叫ぶが、それよりも早く貴明が前に出た。そして足を止め深く腰を落とすと左腕を引いた。
「避けられないなら……撃ち落としたらいいだろう……カイゼル・パァァァンチィツ!!」
そして、左腕を叩きつける様に、飛んでくるビームのような魔法に向かって振るった! 貴明の左腕から炎の拳が打ち出された瞬間、ビームの軌道を変える様に上空に弾き飛ばした!!
「へへへ、どうだ……」
貴明はそう言い、軽く笑うが拳からは出血していた、あの野郎……無茶しやがって……。
「面白い……ならばこれでどうだぁぁぁぁぁっ!!」
虚無のエネルギーは叫ぶと右手に斧を握り、それを勢いよく貴明に目がけて振り下ろした!!
「確かに足場は不安定だ……だが、それだけで俺たちが不利になっていると思うな! ツイン・ライトニング・ブレイカー!!」
卓也は叫ぶと貴明の前に出る、そして剣を二本重ねる様に突き出した!!すると刃先から巨大な稲妻が発生、虚無のエネルギーが振り下ろした斧に命中すると奴の右腕を大きく弾き飛ばした!!
「デカくなってるから当たりやすいってわけか!!なら、喰らえ、旋風突一閃!!」
「そう言う事ね! じゃあ、ロック・エッジ!!」
俺はムラマサに風の魔力を剥がすと、手首を捻りながら前方に突き出し、リサは鞭を構えると腕を大きく振り上げ、そのまま叩きつけるように腕を下ろし鞭を振るった!!
ムラマサの刃先からは、回転する風の斬撃と礫のように針の斬撃が飛び出し、虚無のエネルギーの顔に、リサの鞭も顔面に向かって突き進むが、奴は左手を突き出して俺達の一撃を防いだ! その時!!
「ぬっ!」
リサの鞭が命中した瞬間、奴の左腕は勢いよく上空に弾け腕の籠手も砕け散った!!
「ぐぅ、なんて威力だ!」
「ナイスだリサ!!」
俺はリサに向かって叫ぶ、しかし彼女はそのことに驚いているのか、鞭を左手に持ち替え右手を何度も開いたり閉じたりしていた。まさか、何かあったのか?
「武久ぁ! 風を出せ! 今の内に畳みかけるぞ!!」
リサに近寄ろうとした瞬間、貴明の声が聞こえ俺は足を止めた。そして、貴明にお返事をするとムラマサに風を纏わせた!!
「無双旋風連斬!!」
「カイゼル・ボール!!」
俺はムラマサを縦横無尽に振り、風の斬撃を放つと貴明も炎の玉を無数に作り、それを放り投げた! そして俺達の技は見事、虚無のエネルギーの顔面に命中、炎上し奴を後ろに下がらせた!!
「ぐぅぅぅ、やはりこの力では無理か……ならば!」
虚無のエネルギーが声を荒げると奴の体が、光輝いた! 何をする気だ!?
「この形態の最大の技で貴様らを倒す!」
「あら? それが切り札じゃないでしょ?」
虚無のエネルギーの言葉に警戒し構えるが、リサは一歩前に出ると涼しげな声色で虚無のエネルギーに言った。
「あなた、もう一段階変身できるわよね? だって、七つの大罪のメンバーを取り込んでるんですもの、そこからアロタロスの肉体を取り込めば不完全とは言え、あなた自身の肉体で戦えるはずよ?」
リサの言葉に虚無のエネルギーは返答せず、言葉が詰まった様な様子になる。図星か?
「だって、あなたの魔力が不自然なんですもの、大方、その状態で大した反撃もせず私達の体力を無駄に使わせておいて、途中で本当の姿をさらすつもりなんでしょ? でもそんな茶番に付き合っている暇はない、あなたが全力を出した瞬間、私も最大の技で叩き潰す、嫌ならさっさと第三形態になる事ね」
リサがそう言うと彼女が魔力を纏う、すると彼女の服の姿が変わった、淡い黄土色の服は白く輝き、白いスカートは金色に近い黄土色へと輝いた。ってその姿は!?
「いいだろう、ならば喰らうがいい! シャイン・ライト・メテオ!!」
「そう、あくまでも隠すのね、なら、受けなさい!!ガイア・フロル・アース!!」
虚無のエネルギーの体がより光をまし、俺達に突っ込んできた瞬間、リサは両腕を前方に突き出し、魔法を放った!
リサの放った魔法は虚無のエネルギーに命中! 奴は断末魔を上げる間もなくそのまま後方に弾き飛ばされ漆黒の闇の中へ、光を放ちながら消失した!!
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