会話。そして友人。
※この作品のストーリーはフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。ですが一部の地域や建物など、実在するものも含んでいます。
ウォレス「ユスケ...!!」
声がして振り向くと先程声をかけたお兄さんとテイラーさんが走ってきた。
優助「...テイラーさん。あっ....ありがとうございます...」
そう言ってお兄さんに会釈した。
エリック「いえいえ、大丈夫です。....Wallace, is this boy the ユスケ you were talking about?」
何を話しているか分からないがどうやら俺について話をしているようだ。
テイラーさんはそれに対して頷いた。
エリック「えっと... 多分ゆ“う”すけくんですか?」
優助「は、はい....優助です」
エリック「ウォレスくんのこと、お願いします」
そう微笑みながら言われた。
俺はそれに対してはいとしか答えられなかった。
本当に、優しい笑顔だった。
「エリック〜!行こ〜!」
エリック「はーい!!ゆうすけくん、失礼いたします....!」
優助「は、はい...ありがとうございます」
エリック「Have fun, Wallace.」
深くお辞儀をしてくれた後そうテイラーさんにも何か言ってすぐの声のした方に行ってしまった。
優助「(なんだか明るい人だなぁ....)」
ウォレス「ユスケ....?Uhh…Reisuke、イル、ナイ...」
兄貴の事を気にしているのだろうか?
俺は片手に持っていたスマホに文字を打って首を振ってから見せた。
『今日は零助は居ません。俺と貴方と2人っきりです。(Reisuke isn't here today. It's just you and me.)』
それを見せると先程の不安そうな顔からパァっと顔を明るくさせて頷いてきた。
どうやら伝わったようで良かった。
兄貴がいない事で俺もテイラーさんと謎に同じ気持ちだ。
優助「えと... レッツゴー...?」
ウォレス「ん!Let’s go!」
俺の情けない英語を元気よく言い直してくれた。
歩みを始めるとテイラーさんも一緒に歩いていく。
そこから会話はなく、ただ歩くだけだった。
大学の終わり頃は人が多くて少し困っていた。だがタイミングよくテイラーさんがきた事で少し気持ち的には救われた。
優助「(結構いいタイミングだったんだなぁ...)」
何か横がソワソワしていると思って確認するとテイラーさんが時々俺の方を見てきた。
少し困ったような表情を見せる。
俺はそれに気づいてまたスマホを取り出して翻訳アプリの画面で渡す。
すると素直に受け取って、何かを真剣に打ち出し始めて、見せてきた。
『I’m really happy that Yusuke came to the university by yourself. Why isn’t Reisuke here today?(悠介が一人で大学に来て本当に嬉しいよ。今日はどうして礼介は来ないの?)』
優助「.....」
そう聞かれて昨日の事を色々と思い出してしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ー 昨日 PM6:35〔梅田駅前〕 ー
優助「はぁ.....!!!!??」
零助「うん、そう言う反応するって思っとっわ〜」
兄貴は表情を変えずそう言ってきた。
俺はそんな様子に色々とムカついて頭を掻きむしった。
優助「なんで....っ、もうどげしてそうなぁかね!?」
零助「優助、声——」
優助「どげしてそう先に教えてくれんの!?俺も暇ちゃうんや!!アンタほんま計画性無さすぎるって!!」
そう大声で言うと兄貴は少し真剣な顔で周りを確認する。
その後いつもの目配せをしてくる。
俺はそんな様子の兄貴を見て自分が大きな声を出していた事に気づいて口をつぐんだ。
すると兄貴がため息を吐いた後同じ表情でこっちをまた向き直ってきた。
零助「仕方ないやろ。あんたいっつも1人やん」
優助「1人で良いって...」
零助「あかん。俺がそんなお前を見たぁ無いんよ。」
兄貴は相変わらずらしくない真剣な表情をこっちに向けてくる。
俺はそれに対して上手く返す事も目を合わせる事もできず、俯いて小さく答える。
優助「兄貴には関係ないやん....」
零助「関係ある。俺にも責任があるんや。」
何処が?俺の問題だ。
何故過去のことに、俺が起こした事に兄貴が首を突っ込んでくるのだ...?
頭に血が昇るのを感じた。
優助「何が?兄貴に責任....?どこに?」
零助「約束した。」
優助「...誰とだよ。なんでアンタが——」
零助「柿田理騎くんとだよお前がいじめたァ!」
怒鳴りそうになった瞬間、兄貴の口から大きく発せられた久しい名前に身体が完全に固まる。
今一番聞きたく無い名前だった。
なんならこれからもずっとだ。
思わず呼吸が乱れて目線は行き場を失った。
目の前が真っ暗になる感覚に陥った。
優助「....なんで.....?あいつと何を.....?」
零助「......お前のこと、ちゃんとした奴にするって」
脳に意味が伝達してこない。
何を言っているのか分かるのに理解ができなかった。
優助「.....」
零助「....俺はあんたにしっかりとしてほしい。もう10年近くも前の話なんて言わせる気はない。いじめは意外にもずっと続くんだよ。あんたが想像している以上に」
優助「........ぅん」
知ってる。そんなの分かりきってる。
そう口から出そうだった。
でも自分でも分かっているからこそ口に出すことは許されないし許せなかった。
そうしていると兄貴が俺の腕を掴んで引っ張ってきた。
零助「....お母さん達心配するわ。ほら、歩き?」
そう言われて小さい歩幅で歩いた。
まともに脚を動かして歩ける気がしなかったのだ。
すると歩いている間も兄貴はさっきより落ち着いたトーンで話しかけてきた。
零助「.....理騎くん、あれから引っ越しとか...何気に苦労したと思うよ」
優助「......ん」
零助「......あんたもまた明日から頑張ればいいんよ。人はいつでも変われるんや。あんたも、そうなんやで」
俺の頭は靄がかかったようで兄貴の言葉が頭に入らなかった。
その様子を受けて兄貴は鼻息を強く出してからまた息を吸った。
零助「まっ、明日はあんた1人で大学終わったらお願いな。お兄ちゃん、仕事だから。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
これで俺の夏休みも削れて生まれの地である島根に帰っておじいちゃんとおばあちゃんに会う予定も俺1人だけ無くなった。
1人での時間ややりたい事を全て削る事になってしまったようだ。
ただし兄貴がテイラーさん関連でお金を使う場合は全負担してくれるらしいが...
それ以前に普通に困る。
まだ大学が始まったばっかりなのに予定が増やさないでもらいたい。
優助「.......ぅぅ」
思い出すと色々な感情が吹き出そうで頭痛がし始めて頭を叩いた。
テイラーさんはその様子を見てあたふたとしている様子で俺のスマホを少し強く握ってこちらにゆっくりと近づけてくる。
優助「え、あぁ.... 」
俺はスマホを受け取って文字をまた打つ。
『零助と軽い喧嘩をしてしまいました。(I got into a small fight with Reisuke.)』
それを見せるともっとあたふたとする様子だった為大丈夫と伝えた。
すると少し心配そうな顔をしつつも頷いてくれた。
優助「(外国人って分かりやすい顔してるんやなぁ)......あ、そうや... 忘れとった....」
少し歩いてから目的地を一切知らない事に気づいた。
『今日は長い間一緒にいれませんが、何処に行きたいですか?(We won't be able to spend much time together today, so where would you like to go?)』
そう見せるとテイラーさんも自分のスマホを取り出して何か検索し始めた。
優助「......」
テイラー「Uhh, えぇ...、はな....?はな!」
優助「鼻?」
イントネーションがそれだったが流石に違うと思って頭を振った。
優助「えっと... フラワー?花?」
テイラー「Yes!!」
うろ覚えの英語で聞いてみると嬉しそうにコクコクと頷いて返事をしてくれて安心した。
意外にも花などが好きなんだと思った。
なんと言うか酷い偏見かもしれないが外国人はもっと野蛮なものを好きだと思ってたのだ。
なんならテイラーさんは銃社会に住んでいた人だ。
銃とか血とか... まぁ物騒なものを好きなんだと思っていた。
優助「(....ガチで酷い偏見だな...)」
とにかく俺も自分のスマホから近くの花屋や庭を検索した。
意外にも近くにあるらしく徒歩10分だ。
俺はナビをつけてからスマホをまた片手に持って歩いた。
優助「花、レッツゴー」
そうやって進む方向に指を指すとテイラーさんはまた嬉しそうに笑ってから前を向いて歩いていく。
俺も時々スマホをチラッと見ては言ってる方向が合っているか見て進んだ。
優助「テイラーさん。赤信号」
進む場所は結構車通りが多く、信号や歩道が多かった。
正直横断歩道橋を渡れば良いとは思ったが、テイラーさんと横を通る度に酷い反応を見せる為なんだかダメな気がした。
理由など聞いても良かったかもしれない、だが面倒事は避けたい方だ。
とにかく信号を待った。
ウォレス「ユスケ!ニホンtraffic lights!!」
優助「あー、日本のチュラフィックライツ」
その“チュラフィックライツ”とやらがよく分からなかったが相変わらず相手はぴょんぴょんと楽しそうなので合わせた。
正直自分ができる事はこれくらいしか無さそうだ。
兄貴のように英語は喋れないが本人が望んでない事は昨日分かったのだから少しでも自信を持って関わろうと思ったのだ。
ずっと街の中を歩いている道中も周りを楽しそうに見ていた。
時々店の看板に書いてある漢字などに驚いて俺に知らせてきたり聞いてきたり...そんな事を数回繰り返しながら気づけば目的地のガーデンが目の前に見えてきた。
桜の木が咲いていて、それを囲むかのように花が咲いている。
丁度良い季節だからだろうか?調べた時に出てきた画像よりも花が綺麗に咲き誇っている。
ウォレス「ユスケ!はな!サクラ!」
そう言って真っ先に走って行った。
俺も遅れを取らないよう自転車などが走ってこないかを確認してから少し早めに追いかけて歩く。
ウォレス「…. How wonderful…」
着いてからすぐにしゃがんで楽しそうにしている彼を遠目に見ていた。
確かに綺麗だと思う。
俺も花は嫌いじゃない。
おとといの大学でのチューリップ達には酷く癒されたくらいだ。
今日は近くに高い建物はあまりなく暖かい春風が通ってきて気分が良かった。
ウォレス「ユスケ!はな!」
優助「え、ぁえっ、うわぁっ...!」
そう言って遠くで見ていただけの俺にしっかり見せようとこっちに来て引っ張られる。
目の前までくるとしゃがんで、と言われるかのように肩を押してくる為しゃがんで花を見る。
確かに近くで見た方が綺麗だと思った。
するとテイラーさんも隣でしゃがんできた。
顔を見ると相変わらず嬉しそうに笑ってる。
一度顔を見合った後テイラーさんは下の花弁を見ていた。
桜の花弁だ。それを一枚一枚丁寧に拾い上げて花壇を囲んでいる石レンガの上に丁寧に置いた。
そういえば昨日丁度桜を貰ったのを思い出す。
気になってそのまま口を開いた。
優助「桜.... 好きですか?」
ウォレス「....Yes! スキ!」
どうやらこの言葉は通じた様子で安心する。
この人は今どれだけの語彙を持っているのだろうか?
どう話せば時間がかかる翻訳を使わずに会話を成立させられるだろうかと少し考える。
優助「(好き、は伝わる....なら嫌い、も伝わる.....?)」
すると横から聞き覚えのあるハーモニーの鼻歌が聞こえた。
そうだ、童謡のさくらさくらだ。
歌詞は知らないが曲は番組などでよく耳にする。
俺ら以外に他に誰かいるのだろうかとハーモニーの聞こえる方に向いた。
澄まして聴くとかなり近いようですぐ振り返る。
優助「......テイラーさん...?」
ウォレス「mmm?」
音の主はテイラーさんだった。
日本の童謡を知っているとは思って居なかった為非常にびっくりした。
俺が驚いた表情で固まるとそれで分かったのかテイラーさんは笑った。
ウォレス「I can sing サクラサクラ!」
優助「えっ...!」
歌えると言ったのだろうか?
思わず度肝を抜かれた。
すると間髪も入れずすぐに目の前で歌い始めた。
ウォレス「サクラ、サクラ、ノヤマモ、サトモ...」
驚いた。なかなかに上手い。
しかも訛りはあるがいつもの感じとは違って日本語の発音が綺麗だった。
音程も綺麗でプロのようだ。
気づけば俺は聞き入っていた。
なんというか、声の感じが子守唄に近くて優しかったのだ。
母の子守唄を思い出す様な眠くなるようなハーモニーだ。
ウォレス「イザヤ、イザヤ、ミニユカン...」
終わってすぐに俺はハッとして小さく拍手をした。
すると嬉しそうに笑って顔を明らかな程に赤くする。
恥ずかしそうに顔を花の方に向けて逸らされた。
正直まだ聞いていたい気分だった。
優助「....テイラーさ——」
声をかけようとした時、夕方に流れる曲が響き渡った。
もうこんな時間なんだと気づいて立ち上がる。
その一方、テイラーさんはあちこちをキョロキョロと困惑した様子で見ていた。
ウォレス「ユスケ?ナニ?」
そう不思議そうな声で聞いてきて、曲を流しているスピーカーの方を指差す。
俺は翻訳機で“もう遅い時間だという事を知らせる曲です”と教えた。
するとへー!という顔で頷いて同じく立ち上がった。
それを確認して来た道を戻ろうとしたが途中で兄貴から伝えられていた事を思い出して立ち止まった。
写真を撮ってくれと言われていたんだった。
優助「あっ、テイラーさん」
そう言ってスマホで写真を撮るジェスチャーをすると理解してくれてコクコクと頷いてからまた花の場所まで戻ってくれる。
できれば自分も写れと言われているがやめておこうと思った。
優助「テイラーさん、オーケー?」
そう聞くと頷いてくれてそのまま写真を数枚撮れた。
終わってからスマホを下ろして手でグッドサインをして知らせた。
テイラーさんがこっちに戻ってきているその間数枚を確認していたら突然腕を軽く引っ張られた。
優助「.....ん?」
ウォレス「ユスケ!Photo! Together!」
そう勢いよく言われてよく分からないまま、また同じ場所に連れて行かれた。
優助「....えっ、えーっと...」
するとウォレスさんはスマホを取り出して内カメラにしたのを見て理解した。
俺はそこで気がついて断った。
優助「い、いや...っ、ノー!俺は大丈夫です」
そう言って離れようとしたが兄貴に言われた事を思い出す。
そこで俺は少し考えてから結局渋々と戻った。
するとテイラーさんは嬉しそうにスマホを渡してきた。
俺はどういう事か分からなかった為目を合わせると首を振ってきた。
ウォレス「ユスケ!Photo!」
優助「....もしかして俺に自撮り撮って欲しい?」
奇跡的に通じたようでコクコクと頷いてくれた。
俺はそう言われて困惑したがすぐにスマホを構えて小さく掛け声をした。
優助「....はい、チーズ」
そう言ってまた数枚写真を撮った。
その後スマホを返すと大切そうには画面を見つめ始めた。
その様子を見てちょっと嬉しいが恥ずかしい気もした。
優助「グッド?」
ウォレス「....!Good!!」
そう言って笑顔で答えてくれて安心した。
ふとさっき返したスマホを思い出してよく見れば見覚えのある白いキーホルダーが付いている。
優助「....あ!」
昨日渡した白猫のキーホルダーだった。
俺はそれを見て直ぐに鞄の中から何もつけていない黒猫を取り出して見せた。
するとテイラーさんもびっくりした後嬉しそうに俺の顔を見た後彼のスマホについている猫を持った。
ウォレス「ニャンコ!!」
そう嬉しそうに俺の顔に近づけて見せてくれる。
俺も思わず嬉しくて頬が緩んでしまった。
優助「....あっ、そうだそうだ.... 連絡先...」
そう思って翻訳機で伝えると嬉しそうにして俺に何度も本当に!?と聞いてきた。
俺はそれに対して頷くと嬉しそうにスマホを開いて電話番号やメアドを教えてくれた。
俺も同様に教えてメールのやり取りの確認をした。
優助「よし、これで...」
ウォレス「ユスケ、friend!」
優助「うん。フレンド」
そう言うともっと嬉しそうにぴょんぴょんと目の前で跳ねられた。
そこからは大人しく2人で帰路に立っていった。
テイラーさんも先程よりは落ち着いた様子で楽しく歩いていた。
その一方、頭の中には昨日の兄貴のに言われた事がずっと頭にあった。
柿田理騎... 俺の幼馴染であり大親友だった奴だ。
幼稚園に行ってた頃からずっと仲良くしていたし、やることなす事全部一緒だった。
俺がなんでもおっ始めて、理騎くんがそれに対して喜んで着いて来てくれる。
周りからは気が合うねと言われて、俺にとっては第二の兄弟のようだった。
ただし事件が発生するまでは...
もうあれから10年は会っていない。
今はどうしているのだろうか。
まだ俺を恨んでいるだろうか。
....時々そんな事を自分を追い込むほど考える。
だがその割には今日は異常に落ち着いている。
自分でも驚くほどに。
優助「....」
そんな事をずっと思いながら夕焼けを見て歩いていると気づけば目の前は先程の大学だった。
優助「そっか....じゃあ、ここあたりで.....」
ウォレス「ユスケ!アリガトゴザイマス!」
そう言って深くお辞儀をしてきた後手を振ってきた。
俺はそれを確認した後少し手を振ってから振り返り、帰るために駅に向かった。
テイラーさんも寮に戻るためだろうか?別の方向へ向かって行った。
優助「.....ふ」
テイラーさんも大学も見えなくなった辺りで思わず少し吹いてしまった。
何も面白くなかったが何故だか思わず少し笑ってしまった。
そして何を思ったのかスマホで兄貴に電話をし始めるとすぐに電話に出てくれて兄貴の声が聞こえた。
優助「...あ、兄貴?突然ごめんやけどさ昨日欲しがってた猫、やっぱ一つあげるよ。三毛猫やけどいいよな?」
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ー PM18:30〔外国人留学生寮〕ー
エリック「(That was fun…(楽しかったなぁ...))」
エリックはウォレスより先に寮に着き、部屋に戻ろうとしていた。
階段を駆け上がって、3階まで行く。
自分の部屋、321号室の前まで行くと鍵を取り出そうと、ポケットを中を探った。
エリック「......?What the hell—wait, are you serious…!?(は!?え、待ってくれ、嘘だろぉ....!?)」
ポケットに鍵が無い。
胸ポケットにも、どのポケットにも無かった。
鞄も下ろして確認するがもちろん無い。
エリックは大学、レストラン、店などと少し回った為何処で無くしたのか検討も付かずそこで一度座り込んだ。
エリック「Ugh, damn it…! (あーっ、くっそぉ...!)」
酷く頭を掻いた後、また立ち上がってからスマホを取り出して今日お出かけした日本学生達に連絡をしようとした。
どすどすと自分に酷くイライラした様子で歩いていくエリックだった。
???「....あっ、あ!あの...!あの時の!!」
エリック「....What…?」
誰かの隣を通り過ぎたようでイライラして明らかに真っ赤な顔で振り返るエリック。
そこには今日の朝にぶつかった学生さんが居た。
???「あ、あの..... 今日の人ですよね?あの時.... 朝にぶつかった...、これ...なんか僕の教科書の隙間に入ってて...」
エリック「.....W-wait!!?」
そう言って何度も瞬きをして本当にそうなのか確認した。
部屋の鍵だった。
エリック「Seriously!? No way!! あぁ...っ、えぇっと...ホントですか!!?」
そう日本語でも言うと学生は笑顔で頷きエリックは絵に描いたように驚いた。
その様子を見た学生はとても面白そうに吹き出して笑った。
エリックは何か面白かっただろうかと頭を傾げると。
???「ご、ごめんなさい...!アニメみたいに喜ぶから面白くって....!」
エリック「あ、あにめ?」
エリックは少し照れくさそうにした後、鍵を受け取って頭を下げる。
エリック「あ、ありがとうございます!私、ちょうどに困ってました!」
???「良かったです、今日は本当に申し訳なかったです....」
エリック「もうしわけ....? あ、あぁ!いえいえ、こちらこそごめんなさい」
そう言ってお互い頭を下げあった。
すると学生は少しぎこちない様子で階段に向かおうとする。
???「あの、僕、本当にこれだけの為に来たんです... 上がるの本当に怖かったんですが... とにかく良かったです。では...」
エリック「あ!待ってください!」
学生はさっさと去ろうとしたがエリックはそんな彼を呼び止めた。
すると頭を傾げてこっちに振り向いてきた。
エリック「あ、あの... 私、エリックです!君の名前知りたいです!友達!なりたい!」
すると学生さんは驚きつつ嬉しそうな顔をして身体の方向をエリックに戻し、また同じ場所に戻ってきた。
エリックは嬉しそうに胸を張って腕を伸ばし、口を開く。
エリック「私の名前はエリック、エリック・ピーター・マーフィーです。えっと...エリックで呼んで大丈夫です。ピーターでも大丈夫です!」
???「エリックさん... わかりました」
クスクスと笑った後、今度は学生がエリックの真似をして腕を伸ばして口を開く。
理騎「理騎.... 柿田理騎って言います。簡単に“りき”って呼んでください」
2人は力強く握手を交わした。
続く。




