歩く。話し合い。
※この作品のストーリーはフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。ですが一部の地域や建物など、実在するものも含んでいます。
弟さんと公園で出会い、少し挨拶を交わしてから公園を抜けて歩き出した。
今は先程通った歩道の場所だ。
先程は人混みが多い場所だったがそれよりは混雑していなかった。
隣にいる弟さんは目をキラキラとさせた様子で周りをキョロキョロとしていてとても楽しそうだ。
優助「(俺には見慣れすぎた光景だしなぁ...)」
俺は特に何も感じず、歩き続けた。
時々弟さんを確認していると本人もこっちに気づいた。
ウォレス「ユスケ?」
優助「......大丈夫です」
そう言って顔を逸らす。
特に弟さんにも兄貴にも話す事が無く、まだ知らない何処かの目的地まで歩いた。
零助「We’re almost there~」
兄貴がそう言うと弟さんはコクコクと嬉しそうに頷いた。
優助「...兄貴、どこ向かってるん?」
零助「ん?あぁ... 今から百貨店だよ」
優助「百貨店...?弟さん何か買いたいん?」
そう聞くと兄貴が俺の代わりに弟さんに向かって聞いてくれた。
零助「What do you wanna buy something in the department store?」
ウォレス「I’m going to buy nothing. I just want to see all around there.」
話し終えてから俺に向かって『何も買う気はない』と兄貴が通訳してくれた。
こうなると少し困った。
自分は口頭で聞く自信がないため買うもので趣味を理解しようと思ったが少し難しそうだ。
思わず頭を掻く。
そう考えながら歩いていると百貨店の前まで来れた。
相変わらずの人の数に呑まれる。
入ってすぐ隣にエレベーターがあった。
このエレベーターは数階にしか止まらない為人が待つ人がほぼ居ない。
優助「何階行きたいん?」
零助「あー... まぁ本人どこでも良いらしいし.... 一気に14階に行こかなぁ」
丁度そのエレベーターは14階にも止まってくれる。
優助「んじゃ、あのエレベーターだったらすぐだよ。人少ないし、乗りやすい」
零助「マジか!ナイス!」
そう言って兄貴は俺の背中をちょっと叩いてからエレベーターの方に向かってボタンを押した。
案の定、すぐにエレベーターは来たようで上を指すライトが点いた。
扉が開いてすぐに兄貴と弟さんが乗った。
零助「早よ来ぃや〜!」
少し周りを見渡しても他の人は乗る様子が無い。
どうやら乗るのは俺らだけみたいだ。
安心して少しため息を吐いてから俺もエレベーターに入る。
14階のボタンを押してから閉じるボタンを押した。
扉が閉まってすぐ2人は何か楽しく話をし始めた。
俺は2人の会話についれ特に何も分からなく、階数のランプが点いたり消えたりしているのを眺めていた。
...この百貨店に誰かと来るのは初めてだ。
なんだか居心地が変わってしまう。
そう考えていると後ろからの会話が聞こえなくなり、左肩を数回指で押された。
優助「...なに——」
兄貴だと思って振り返って見たが、弟さんだった。いつ見ても本当に身長が高い。
梟に狙われた捕獲寸前の鼠の気分だ。思わず萎縮する。
優助「.....な、なんでしょうか...?」
ウォレス「ユスケ、uhh... this department store、ありる、ナニかでスか?」
片言の日本語すぎて理解ができなかった。しかも途中で英語が挟まっていたように聞こえた。
困って兄貴に目配せをすると兄貴が気づいてくれた。
零助「んーどした?」
優助「どしたって...弟さん、何か話したいようやねんけど...」
零助「あぁ、弟さん、この百貨店になにあるか聞きたいんだって。教えてやってくんない?」
優助「え!?」
無茶振りがすぎる。
今までの様子を見てて兄貴は分からないのだろうか。
確実に俺ではコミュニケーションを取れる相手じゃない。
優助「あ、え....っ、えーっと...兄貴」
零助「あー14階まだかなー」
明らかな程な棒読みで俺を無視する。
兄貴はやはりどんな時も一切頼りになってくれない。
そんな事を考えていると静かな時間が続いてしまった。
俺はもうどうにでもなれという気持ちで口を開いた。
優助「.....、あ」
ピコーン
[14階です]
タイミング悪く着いてしまった。
いや、ある意味良かったのかもしれない。
零助「あー.... んじゃ、行こか。後で暇な時教えたげて」
優助「.....」
残念そうな表情でそう言って俺の肩をぽんっと手を置いて叩いてきた。
結局教えないといけないなのは変わりないようだ。
俺は2人がエレベーターから出た様子を見た後、ボタンを離して俺も出た。
零助「んで?ここ何?」
優助「レストランとかカフェ.... 俺もあまり歩いた事ないよ」
兄貴はふーんと言ってから歩き出した。
俺と弟さんもそれに続くように歩いていく。
人は確かに少ない。なんなら下の階が一段と人気な為、ほとんどの人がそっちにすぐ行ってしまう。
ほとんどの人はここに興味はないようだ。俺も同じ....
だがそれとは対照的に横の弟さんは何かずっとキョロキョロとしている状態だ。
その目は変わらずキラキラと光っていてまさにワクワクしている表情だった。
優助「(外国人ってこんな単純なんか....?)」
こんな場所、俺にとって何処にでもあるレストランとかと変わりない。
地下街とかでも良くある。
だからみんな興味なんて惹かれない。
そこまで喜ぶ理由はあまり理解はできなかった。
一方で弟さんは店の前にあるガラス越しの食品サンプル達に前のめりで釘付けになっていた。
ウォレス「I've never seen anything that looks so delicious...」
零助「Haha, I'm glad to hear that.」
なんだか楽しそうだ。
俺はそんな様子に干渉したくない、だから他のことを考えてまた1人そっちのけだった。
優助「.....」
零助「優助、お昼ここで食おうぜ」
突然兄貴が声をかけてきた。
優助「え?ここ?」
零助「うん。Do you wanna eat lunch in here?」
ウォレス「Yes!」
どうやらここで食べる事に弟さんも同意らしい。
困ったな、ハンバーガー分に残しておいた小遣いが別の事に飛んで行きそうだ。
...だが仕方ないかもしれない。
今回は諦める事にした。
優助「いいよ、俺も食べてくわ」
零助「お!良かったぜ〜。全フロア見終わったらまた戻ってきて行こっか」
結局決まってしまった。
ここ数日はハンバーガーが最高に恋しくなってきてしまうな....
優助「....一通り見終わったらどうするん?1階ずつ降りてくん?」
零助「せやな。1階ずつ降りるわ」
弟さんは楽しそうに歩き回っている様子だった。
気づいたら少し遠くに居た。
零助「Wallace! Let me know when you've finished looking around this floor! We'll go down one floor!」
そう兄貴が言うとこっちに振り向いて手を振って返してくれた。
零助「はは、全く....」
優助「楽しそうやね」
少しだけかもしれないが兄貴と2人で話が出来そうな時間ができた。
兄貴も大概だがまだ肩の荷を下ろせる相手だ。
後ろの壁にもたれかかって少し休む。
兄貴も俺のそれを見たあと同様に休んだ。
零助「ど?ちょっとは楽しいやろ」
優助「....いや、なんかまだ分からへんわ」
零助「まぁ慣れてくるよ、最初はむずいけどな?」
優助「ふーん...」
でもどうせこれっきりなんだから慣れる前に今日という日が終わってしまうだろう、そう思った。
そう考えるとなんだかこの時間も無駄になってしまう気がする。
優助「(......帰りたい)」
零助「お、そうや... 一階下はなんやっけ?」
優助「ん....?あぁー...漫画とかゲームのオフィシャルストアとか....なんだかオタクっぽいとこ」
零助「あぁ!あのゲーム会社のオフィシャルストア....! うぅわそうかぁ.... うーん... せやな...もうちょい和なとこない?」
優助「和?そうやなぁ.... 俺は見た事ないわ....」
零助「そうかー... もう歩き回って弟さんが食いつくもんそのまま探すしかないよなぁ....」
兄貴はその後もどうしようかとスマホを取り出して何か考えている様子だった。
正直俺の気持ちはもう家に向かっていた。
正直ここにいる意味がまだ分からない。
問題が起こる前に帰りたかった。
しばらくすると弟さんが小走りで帰ってきた。
兄貴は調べ物をすぐにやめて壁にもたれかかっていた身体をしっかりと立てた。
零助「Finished?」
そう聞くとコクコクと頷く弟さん。
少し息が上がっているようで本当に楽しかったのだろう。
俺ももたれかかるのをやめてしっかりと立ち上がる。
優助「んな、行こか」
そう言って俺はエスカレーターの方に向かった。
ここから下に下がるためのエレベーターは全階に止まるものしかない。
しかも都合悪くよくどの階でも混んでいる。
だからエスカレーターを利用するのが一番の手だ。
優助「降りるで——」
零助「エレベーター、行こか」
そう言って兄貴はエレベーターの方向へ向かう。
優助「えっ、ちょっ...兄貴っ....!」
零助「んー?」
兄貴は不思議そうな顔でこっちを見てくる。
優助「エレベーター...いっつも混んでるんよ.... エスカレーターやったら早いし、1階ずつ降りれるやん?そう考えたらエレベーターより楽やし....」
そう言うと兄貴はうーんと言って顎に手を置いてよく絵でみるような考える姿になった。
零助「いや、エレベーターかな」
そう言ってまたエレベーターの方向に体を向けた。
優助「え、ちょっ」
十何階もあるこの百貨店では毎度様々な階に止まる上に人が多い。
やっときたと思い、入ろうとしても下手をしたら定員で入れなかったりする。
なので自分はずっとエスカレーターで移動している。
優助「兄貴、人すごいんやって....!エスカレーター行こ——」
零助「いや、待とうや」
思わず「は?」と心の中で声が出た。
俺の兄貴はせっかちで待つのが嫌いな方だ。
ここのエレベーターなんて酷い時は体感10分近くは待つことがある。
それに兄貴が耐えれるとは到底思えない。
優助「やけど...エスカレーターやったら——」
零助「いいから。....待と」
どこか真剣な兄貴に思わず身体が硬直する。
俺は渋々エスカレーターの方向からエレベーターの待ち列へと体を向けて歩き出した。
しっかりと兄貴のところまで追いついた。
優助「弟さん... しんどーならへん?」
零助「あぁ、弟さんは多分いけるよ。Wallace, You’re okey to stand and wait for elevator for a long time, right?」
そう聞くとコクコクと頷いていた。
零助「な?」
優助「ならいいんやけど...」
いや、よくない。正直自分もあまり辛抱強く待てる人間じゃない。
立ちすぎて足が痛くなる前に歩く場所はもう歩きたい。
それに下手をしたら人が溜まる。早く何処かに行きたい。
零助「まぁ、待ってみよ、な?」
兄貴はエレベーターの下ボタンを押した後そう言った。
いつもせっかちで巻き込んでばかりの兄貴にそう言われるのはなんだか気分が良くなかった。
上を見るとランプがまだ2のところだ。結局長い間待ちそうだ。
まぁ周りを見たら何か暇を潰せるだろうと2人と別方向を見ていたが突然何かに気づいたらしく兄貴が口を開いた
零助「.....そや、優助?説明は?」
優助「....えっ、なんの....」
零助「あれだよ、百貨店に何があるのか」
完全に頭から抜けていた。
そうだ、説明しないとならない。
....でもどうやって?
兄貴は弟さんに何かを話した後弟さんがこっちを見てきた。
零助「ほい、聞いてくれるって」
優助「.....、」
やなお節介だ。とにかくもうどうにでもなれという気分で口を開いてみた。
優助「こ、ここには、服とか、コスメとか、ゲームショップとか、いっぱいある」
自分でも分かるほど今極度の緊張で日本語のイントネーションがおかしい気がする。
元々自分は2方言同士が少し混じったような喋り方をしているがそれ以上におかしい。
そんな喋り方でも弟さんはコクコクと頷いて聞いている。
優助「(....もしかして理解できてる....?)」
零助「優助ちゃーん、英語はぁ〜?」
優助「っ、だけん喋られへんって!!!」
冷やかすかのように言ってくる為頭に来て少し兄貴に怒鳴ってしまった。
いや、普通に怒鳴るだろう誰だって。
兄貴はそれに対してクスクスと笑った。
優助「なんやねんほんま....」
ポーン
丁度よくエレベーターが来た。
話を止めてエレベーター側に詰める。
零助「入れっかねぇ〜?」
優助「この階ならいけるよ、ここ本当に人少ないからさ....」
エレベーターが開いた。案の定、中にはあまり人が居なかったが為すぐに入れた。
零助「お、全然乗れそうや!行こ」
優助「....お、お先にどうぞ...」
そう言って弟さんに先を譲った。
弟さんは嬉しそうに兄貴の後についていく。
俺は最後にエレベーターの中に入った。
俺は今のいる階数より一つ下のものを押した。
一階下の為かなりすぐに着いた。
優助「(エスカレーターやったらすぐやったのに...)」
そう思いながらエレベーターから出る。
さっき言った通り、ここはオタクっぽい所でゲームや漫画のオフィシャルストアがあり、小さな子供から大人までここに居る。
ウォレス「....!I know that store!」
そう言って弟さんだけゲームのオフィシャルストアへ行った。
零助「お!待ってくれ〜!」
そう言って兄貴も小走りで行ってしまった。
正直あの店は好みじゃない。
なんならこの階自体を嫌っている。
しかも僕はゲームが下手な上遊ばない為兄貴とは違ってあまり興味はない。
優助「(ガチャでも見ていたい...)」
そう思って近くの小さなガチャ広場に目線を向ける。
人が少なくてこの階では一番マシな場所だ。
そっちに向かって歩いて行って1人、ガチャを見る。
今はこんなものが出ているのだと分かって少し面白い。
優助「あ....猫....」
一つのガチャのラインナップに惹かれた。
ただの猫が座っているだけのシンプルなものだ。
ただ色違いというだけでそれ以外要素はほぼない。
最近の人はあまり好まない上に流行にも乗れないようなものだ。
でも俺はそれに非常に惹かれた。
純粋に可愛かったからだ。
少し心が揺らいでバッグに手を添える。
頭の中で財布にどれほどの小銭があったか記憶で計算して何個買えるか考えた。
優助「...2...3....」
3個買えそうだ。バッグを開いて財布を取り出した。
しっかりと目でも見て計算した。
うん、3つ買える。
その場で即決し、3回分お金を入れて回した。
できるだけ色違いが欲しい。
優助「...よし」
出てきたのは白猫、黒猫、三毛猫の3種類で、被りはなかった。
カプセルを専用ゴミ箱に捨ててからその3つの猫をポケットに入れた。
優助「(何につけよう...)」
そう思いながら買う気はないがまた他のガチャを見て回る。
かっこいいものから可愛いもの、面白いものまである。
女の子用、男の子用... マニアックなものなど。
少し目に留まるものがあり、しゃがんで見た。
優助「シマエナガ....」
また可愛いものを見つけてしまって困った。
全部猫に使う必要はなかったかもしれない。
今回は諦めてまた来る予定があればまた買いに来ようと思って立ち上がった。
優助「ふぅ....」
一通り見終えてしまいやる事を失った。
兄貴と弟さんはまだあそこでワイワイしているのだろうか?
正直少ししんみりする。
優助「いいなぁ....」
「......優助!」
優助「......?」
少し呟いた後小さいが呼び声が聞こえた気がして周りを見渡した。
他の客達の声に紛れてしまってよく聞こえない。
聞き間違いなのかもしれないと思ってまた視線をガチャに戻した時だった。
零助「優助ぇ!!!!」
優助「...!!?」
兄貴の声が一気に聞こえてびっくりした。
どうやら聞き間違いでもなかったようだ。
優助「ぁ、兄貴...?」
声のした方に向くと人混みから弟さんだけが見えた。
弟さんもこっちに気づいたのか兄貴に知らせてくれた様子だった。
すると兄貴と弟さんは人混みの間を潜り抜けて俺のとこまで来た。
零助「おお、居った居った!いやー着いてきてるって思ってたわ〜...」
優助「ああごめん。見終わったん?」
零助「そ、やから次の階行こ〜今度はちゃんと着いてきいや〜」
そう兄貴はいやらしく言う。
それよりも意外にも見終わるのが早いなと思った。
あまり弟さんも興味がなかったのだろうか。
それとも俺が見ている間に意外にも時間が経っていたのか...
とにかくまたエレベーターの方に向かって行った。
エレベーターの待ち列は今回はもっと長そうだった。
エスカレーターの方を見ると人々が楽に行き来している様子が目に写った。
だけど仕方ない、諦めることにする。
零助「....そういえばガチャなんか買ったん?」
優助「え?あぁ... 1個のガチャで3つくらい...」
零助「何買ったん?」
そう言われて先程ポケットに突っ込んだ猫達を取り出して見せる。
零助「え!?猫やん!!」
優助「そう。シンプルやったから良いなーって思って」
零助「やっぱあんたは可愛いもん好きやなぁ〜」
可愛いという言葉を避けるためにシンプルで良かったと誤魔化したつもりだったが兄貴にはお見通しのようだ。
なんだか他人に言われるのは少し不満だ。
だが可愛いのが好きなのは事実だし自分でも認めているから何も言い返せない。
兄貴と駄弁っていたら先程まで相変わらず周りを見ていた弟さんも気づいたのか僕の手を見てきた。
ウォレス「.......ニャンコ!!」
優助「......えっ」
また輝いた目で猫達を見ている。
いや、何よりもさっき猫のことを“ニャンコ”って呼んだのか?
優助「にゃんこ....?」
零助「あー...アメリカに居る間に猫よりニャンコって呼ぶの教えちゃってんだよな〜... 忘れとったわ...」
優助「へー...」
兄貴は頭を掻きながら「直してあげないとだよなぁ」と呟いて言った。
弟さんはずっと猫を見続けていた。
俺はそんな様子の弟さんを見てふと思った。
優助「(そや、丁度三つあるんやし...)弟さん、これ....」
そう言って白猫だけを取って目の前に差し出した。
弟さんには気持ちが伝わってない様子で頭を傾げた。
優助「えっと.... プレゼント...」
そう言うと弟さんはやっと理解したのか、驚いた表情をした。
ウォレス「ニャンコ... ボク!?」
俺は頷いた。
弟さんは非常に嬉しそうに猫を受け取ってくれた。
ウォレス「アリガトゴザイマス...!」
片言な日本語で感謝を伝えてくれた。
本当に嬉しい様子で少しぴょんぴょんと跳ねている。
零助「...あげちゃって良かったん?一個何円したんよ」
優助「うん。300円だったけど、別に」
確かに1つ猫を失ったが不思議と気分は悪くなかった。
すると突然兄貴が俺の頭をガシッと掴んできた。
優助「...っ何——」
零助「お前マジええ子やなぁ〜!!!お兄ちゃん嬉しいわ〜...!」
そう泣きそうな声の真似をしながら言って俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくる。
髪の毛がぐしゃぐしゃになる勢いだ。
早く終われと思いながらそれを受けた。
少しすると兄貴が離してくれて俺もちょっと距離を置いた。
結局髪の毛がぐしゃぐしゃになってしまい、手で直した。
零助「白猫あげたんやな」
優助「...うん、そ」
兄貴にちょっと強い口調でそう返した。
弟さんは髪色といい、タートルネックといい...一見見て白が強いと思ったのだ。
零助「お兄ちゃんには無いんか——」
優助「自分で買って」
そう突き放すと兄貴はしょぼんとした。
そうやっているうちにエレベーターが来てくれた。
零助「お、行こか」
優助「ん」
残りの猫達をまたポケットに入れてまたエレベーターに乗る。
今度は人が多い。異常なほどに。
かなり先に入った為一階下のボタンを押した次の瞬間、どんどん後から来る人に押されて扉側の端っこに抑えつけられた。
優助「....!!」
ウォレス「Wow!!」
これで重量オーバーにならないのがおかしいレベルだ。
異常な量の人に耐えきれず、色々な意味で潰される!とその場でギュッと目を瞑って体に力が入った。
優助「......っ」
ウォレス「....ユスケ?」
人の出入りが落ち着いてから弟さんの小さい声が前から聞こえて少し目を開けると本当に目の前に居た。
なんなら異常に近い。
優助「....っ!!」
しっかり目を開けるとそれに気づいた弟さんはニッコリと笑ってくれた。
少し周りを見ると俺のところは丁度良いスペースになっている。
どうやら弟さんのお陰で俺は酷く潰されずに済んだ様だ。
しかも真っ直ぐ見た場合弟さんしか見えない。
視界の情報的にもとても良かった。
優助「......あ、」
でも側から見ると俺は今壁ドンされている。
肘壁ドンか?よく分からないがキモい状況ではあるだろう。
エレベーターが下に動き出したのを感じた。
ウォレス「...ユスケ、uhh… ダイジョブ....?」
優助「......はい」
「大丈夫」と返事をすると安堵した表情を見せてくれた。
自分も少し安心してバッグの紐を握る力を緩められた。
間違えて背中でエレベーターのボタンを押さない様距離を作るために少し弟さん側へ近づいたあと、また弟さんに目線を戻す。
こう見るとやはり大きい。
外国人は皆こうなのだろうか?
この狭い箱の中では一番彼が高いし目立つだろう。
優助「(羨ましい....)」
俺は今の年齢で平均身長から-10cm...身長が無さすぎる為少し羨ましく感じる。
いや、少しじゃないな...
そうしていると扉が開いた。
人が数人出て行ってから弟さんが人の間を潜っていったのを追っていった。
優助「....っはぁ...っ」
ウォレス「....Reisuke….?」
弟さんが俺の兄貴を探してキョロキョロとしている。
確かに兄貴が何処にも見当たらない。
優助「えっ....あっ、兄貴....?」
13階で乗り遅れたのだろうか?
いや、兄貴は先頭で先にエレベーターに入っていた、だから乗ったのはちゃんと確認した。
じゃあ兄貴はまだ...
零助「優助ー!Wallaceー!!」
優助「え、っちょっ....兄貴!!」
後ろから声がして振り返ってみるとまだ人の間に挟まってる兄貴が見えた。
腕だけを上げてこっちに手を振っている。
優助「っ兄——」
零助「あー多分これ無理そうだからお前達先行って2人で残りの階を楽しんでこい俺はまた上がってくるの面倒やし後で合流するからまた14階でな優助コミュニケーション頑張れよじゃなー」
非常に棒読みの早口を一息でそう言って上げている腕をグッドサインにして扉が閉じた。
...わざとじゃねぇか。明らかに。
何もかも俺と弟さんを2人っきりにする為の。
優助「(なんやねんそんな昔のロボット映画の終わりみたいな去り方...)」
イライラした。
何カッコつけてるんだ俺のバカ兄貴は。
とにかく使い物にならない兄貴はもっと使い物にならなくなった為ここからは自分で何かしないとならないらしい。
もうここで腹を括らないとならない。
俺は弟さんの方を向いた。
ウォレス「ユスケ.... Reisuke」
優助「....兄貴居ないので、一緒に回りましょう。2人で。」
ー PM 4:45〔百貨店 F5〕ー
なんとか2人で歩き回った。
意外にも長い間回っていて、スマホを見て時刻を確認すると5時近くだった。
14階で昼ご飯の予定だったがこのままだと晩御飯になりそうだ。
ウォレス「....」
兄貴がいなくなってから少しよそよそしい弟さんだった。
数階見回ったが今までとは違って少し落ち着いた様子だった。
今は5階、でも相変わらず楽しそうなのは変わりなかった
優助「(.....俺が喋れないから....自分から話しかけるべきかな...)」
そう考えてみるが、やっぱり出来る気はしない。
そう思って諦めようと思った時、スマホに通知が来た。
優助「.....あ」
兄貴からメールだ。
『お前通訳アプリ持っとるやんな?』
そういえばものすごく忘れていた。
そうだった。今の時代はとても便利なんだ。
咄嗟にスマホ内を見てアプリを探してみる。
優助「あった...」
弟さんを一度見てみた。
しゃがんで楽しそうに店の商品を見ていた。
その隙にスマホに顔を戻して喋りたい事を打った。
打ち終えてから一度翻訳を見てみるが合っているか分からない。
とにかく翻訳を信じてみる。
ウォレス「♪」
優助「弟さ....」
いや、弟さんでは名前として通じないだろう。
俺は開いた口を一度閉じて考える。
じゃあどう呼ぶのか。
兄貴は弟さんをウォレスと呼んでいる。
親しい相手なら名前は良いだろう。
だが俺は今日初めて出会っただけのやつで今日だけの存在だ。
ならどうする?
夜中に調べていた際に見えた“礼儀よく接する”という文が頭をよぎった。
なら礼儀として苗字で呼ぶべきだろうか....
優助「.....」
考える時間を作るとずっと何もできない。
思いっきり言ってしまおうと口を開いた。
優助「.....て、テイラーさん」
ウォレス「.....」
聞こえてなかったのか今度はしっかりと彼に近づいて一度何処か触るなどして気づかせてから話しかけた。
ウォレス「.....ユスケ」
優助「テイラーさん、あの...これ」
スマホを目の前に出して見せた。
彼は真剣に見ている。
『ずっと何も喋らなくてごめんなさい。これで会話できそうです。(Sorry for not saying anything for so long. I think we can have a conversation now.)』
ウォレス「....」
少し頷いた後スマホをひょいと取られた。
優助「あっ」
咄嗟に取り返そうと思ったが何か真剣に打っている様子だった。
やはり翻訳がおかしかったのだろうか?
不安になってバッグの紐を握る。
ウォレス「ユスケ」
終わったのかスマホを返して見せてくれた。
『It’s ok. You don’t have to be sorry. You know, I can’t speak and understand japanese at all. it can’t be helped.(大丈夫だよ。謝らなくていいよ。ほら、私、日本語全然話せないし理解できないんだ。仕方ないでしょ。)』
読んだ後もう一度テイラーさんに顔を合わせるとニコッと笑ってくれた。
確かにそうだ。彼はそれを承知で俺のような奴を指名してる。
そのつもりで居たんだろう。
優助「(俺の考えすぎか....)」
なんだか1人変に考えていて申し訳なくなってきて顔を上げれない。
ウォレス「...ユスケ!」
そう呼んできた為、顔を上げるとエスカレーターの方を指差していた。
なんだと思い、指されている方を見る。
そこには見覚えのある影があった。
目を凝らしてみる....
兄貴だ。
優助「....は!?えっ、ちょっ兄貴っ」
そう声を出すと兄貴は慌てた様子でエスカレーターを駆け上がっていった。
ずっと見張っていたのか?
ここ数階までずっと?
そういえば先程のメールが異常に良いタイミングで来た。
多分そういう事だろう...
ますます兄貴がよく分からない。
ウォレス「Haha」
テイラーさんはそう笑い、終わった後今度はエレベーターを指差した。
優助「....もう行きますか?....あっ」
いつも不意に日本語を喋ってしまう。
咄嗟に手で口を塞ごうとしたがテイラーさんは笑顔で頷いてくれた。
そこからは数階分、何気に楽しくしていたと思う。
翻訳アプリが少しの安心材料として働いてくれた。
どうしても伝えたい事がある時のみ使った。
ウォレス「ユスケ!Look!!」
優助「はい」
最下階である地下2階に着いた頃にはテイラーさんも最初の調子を取り戻したようで安心した。
見るものあるもの全部楽しそうに見ている彼を見るのは悪くないなとは思った。
大体回り終えてからテイラーさんがエレベーターの標識に指差してきたため、もう14階へと向かう事にした。
その間もとても楽しそうで少しスキップ気味だった。
エレベーター側から何か案内の様な声が聞こえる。
エレベーターの場所に着くと一目で分かるほどの異常なほどの行列だった。
優助「げっ...!!」
そういえば地下2階は14階とは違い人が一番集まりやすい場所だ。
なんなら今日はイベントの最終日で一段と人が多い。
エレベーターの前にはものすごい列が出来ていてそれをまとめようとする人の声やその指示に従おうとする大量の足音が響いていた。
情報量の暴挙に気分が悪くなってくる。
周りを見渡すと近くにエスカレーターがあった。
優助「....テイラーさん、ごめんなさい。エスカレーター、行きましょう」
そう言ってエスカレーターの方を指差す。
自分のエゴを通す様で申し訳ないがもうエレベーターは何度も使ったんだ、もうエスカレーターを使っても良いだろう、そう思った。
するとテイラーさんは指差したものを確認した後、首をブンブンと横に振った。
優助「え、でも」
そう言おうとするとテイラーさんはエレベーターの行列に行ってから真剣な表情でこっちを見てきた。
俺は咄嗟にスマホを取り出して翻訳アプリを開いて打つ。
テイラーさんの近くまで行き見せる。
『エレベーターは人が多いです。エスカレーターは人が少なくて早く行けますよ。(The elevators are crowded, but the escalators are less crowded and you can get there faster.)』
すぐに首を振られた。
ウォレス「No!」
そう言われてしまった。
何故か分からなかった。早い方がいいだろう。
何かこだわりがあるのか?
翻訳した文を消してからスマホを渡す。
すると特に文字を打つ事なくすぐに返された。
ただ真剣な表情で首を横に振っていた。
優助「.....わ、かりました」
嫌な事を絶対させたい訳ではない為、結局俺が折れるしかなかった。
頑張って人の中を耐える事にした。
人の会話に足音、怒鳴り声に近い呼び掛け声。
時間が経つにつれソワソワして耐えれなくなってくる。
ポケットに手を突っ込んでみる。
何か当たる感覚があってそれを掴んでみる。
さっきの猫だ。ポケットから手を出すと黒猫を掴んでいたようだ。
気を紛らわせるためにその猫に思いを馳せる。
そういえば昔近所にいた野良の黒猫にそっくりで懐かしい気がする。
確か名前はマクロでずっとお魚などをこっそり持ち出して餌付けしていた。
その頃仲が良かった幼馴染とマクロとよく追いかけっこをしていた。
可愛くて楽しくて、大好きだった。
優助「ふっ」
思わず懐かしさに笑みが溢れる。
もう小さい頃の話だが、マクロが元気にしているだろうかなんて考える。
生きていたとしても歳とった猫ちゃんだろうな....
「優ちゃん!マクロ可愛いなぁ!」
優助「......、」
.........早く来いエレベーター早く来い。
なんで遅いんだよ。早く来てくれよ。
人が多い時は嫌なことばかりなんだ。
早く来い早く来い早く来い早く来い早く来い早く来い早く来い早く来い早く来い
早く
ウォレス「ユスケ!Elevator!」
優助「....っは」
テイラーさんの言葉で現実に引き戻される。
何故かずっと吐き出せてなかった息を深く吐いた。
どうやらエレベーターは2つ来た様で片方の人が少ない方に乗れた。
エレベーター内ではいつも通り上のランプを見る。
定期的に止まってまた出入りする人々..
できるだけ気にせずに上を見続ける。
さっき何を考えていたなんて忘れ去れるように集中し続けた。
13階まで行くと残る人はほぼいない。
2人だけになってしまった。
だが特に話をせず14階についた。
優助「テイラーさん」
そう言って先にこの狭い箱から出させる。
俺も開けるボタンを離してから出た。
零助「よー!楽しかった〜?ごめんよ〜お兄ちゃんその後頑張って追いつこうとしたんやけど色々あってずっと14階に——」
優助「嘘つけ」
兄貴はまぁそーですよねーという顔をした。
結局色々と大変だったのだ、何か責任を取ってほしい。
零助「Wallace, Did you have a lot of fun?」
ウォレス「Yes!」
その後テイラーさんとずっと話を始めた。
合った事を共有しているのだろうかテイラーさんが一方的に話をしていた。
優助「(相変わらず仲良いんやなぁ)」
正直英語を喋れないのも自分は理解しているし承知だからあまり深く考えない。
ただ暇にはなりたくないだけだ。
零助「んじゃ、レストラン行くか」
優助「うん」
零助「弟さん曰く、ここのうな重食いたいんだって。行こうか」
優助「えっ!!?うな重!?」
そんな高いものを食べるのかとびっくりした。
俺の貯金はギリ3000円だ。
その貯金に見合うかどうかだった...
結局値段は予想以上に高く、うな重は5000円以上だった。
優助「.......」
絶望だ。こんな高いもの食える訳ない。気持ち的にも物理的にも...
流石にまだ安いメニューあってそれを食べる事を考えた。
と言っても軽く1000は超えていた...
しかも量的にこれだけではお腹を満たせなさそうな多さだ。
横に居る2人を見るとこれを食べようか?という話をキャッキャとしていた。
指を指したものは6000ほどするものだった。
結局2人はお金をしっかり用意していたらしく俺1人だけが比較的貧相なご飯となった。
優助「(晩御飯多めに食おう....)」
そう思いながらきたご飯である刺身を食べる為に箸を持つ。
零助「お前1人だけうな重じゃないのおもろ〜」
優助「別にいいよ... 元から少食だから...」
そう言って誤魔化すと兄貴が引き笑いで笑う。
この人マジ笑いのバリエーション高いな。
優助「.....テイラーさん?」
ウォレス「....ユスケ?」
俺のお箸を見ているようだ。
なんだろうと思って一度箸を箸置きに置いてスマホを取り出したが先に兄貴が喋ってくれた。
零助「What’s wrong?」
ウォレス「…I don’t know how to hold chopsticks… and Japanese table manners…」
そう言うと兄貴がなんだか色々と教えていた。
俺はそれを見ながらスマホをまたポケットに戻す。
一生懸命兄貴が教えている様子を俺は眺めてた。
俺をほったらかしたんだ、いい軽い報いだと思った。
ただその説明が終わるまで俺はご飯に手をつけずに見ていた。
するとその様子に気づいたのか兄貴が説明しながらこっちを見た。
零助「優助、食っといてええで」
優助「いや、礼儀ってやつや」
そのつもりで先に食べるのは断っておいた。
その後3分ほどでうまく教えれたらしくテイラーさんはしっかりと箸を持てるようになった。
カチカチと何度も開いて閉じて楽しんでいた。
零助「よし.... んじゃ食べるか!いいぞー優助〜」
優助「ん、いただきます」
零助「いただきま〜す」
ウォレス「.....イダダキス!」
やっと3人で食べる事ができた。
兄貴は迷いなくバクバクと食べている横でテイラーさんが目新しい顔で一枚のうなぎを箸で持ち上げた後、齧ってた。
ウォレス「.....!!」
その後も美味しそうに食べていた。
それを少し見届けた後俺もしっかりと刺身を箸で取ってタレにつけて食った。
多分普通の刺身よりは美味しかったと思う。
やはり量が少ない分、俺は一番早くに食べ終えた。
まだ少しお腹が空いているがもう満足した事にした。
その次に兄貴が食べ終わってからすぐにテイラーさんも食べ終えた。
零助「よし、ご馳走様でしたっ」
優助「ん、ご馳走様」
ウォレス「ゴツスオサマデシタ!」
食べ終わってすぐに席を外れる事にした。
俺は荷物おきに置いておいたバッグをしっかりと持って肩にかけた。
会計場に歩きながらバッグから財布を取り出して2000円を兄貴に渡そうとした。
優助「兄貴、これ....」
零助「ん?あぁ、いいわ。お前のはお兄ちゃんが奢っとくよ」
優助「え....っ?」
流石にそれは申し訳ない。俺だってもう大人になってるんだ。
もう一度兄貴の肩を叩いて言った。
優助「兄貴、俺全然払えるってほら——」
零助「これとこれで大丈夫です。...別にあんたからの金とか要らんよ」
そう突き放されて結局会計を終わらせられてしまった。
俺は何も出来ずにただ右手に2000円札を握ったままだった。
零助「ご馳走様でした〜」
ウォレス「ゴツスオサマデシタ!」
優助「ご馳走様でした...」
店を出た後、結局2000円をまた財布に戻した。
零助「いやー美味かったなぁ〜、Wallace, how was the meal? Wasn’t it good?」
ウォレス「Yes, of course!!」
零助「はは、優助は?刺身どうやった?」
優助「え、あぁ、うん。」
俺の心は話しかけられるまでずっとどこかに行っていた。
突然話しかけられて特に何もなく反射で返事をしてしまった。
そこからはまたエレベーターで1階に降りて百貨店を出た。
零助「え!?もうガチ夜やん!?」
優助「兄貴、声のボリューム...」
零助「Isn't it time to go back to the dorms yet?」
ウォレス「Yeah, not yet. It's okay if I'm a little late.」
兄貴曰く、寮に戻る時間があるらしくそれに間に合うか不安だったらしい。
ホームステイなどじゃなく寮生活なんだ、と思った。
優助「兄貴、弟さん。どこまで送ってく?」
優助「え?いや、ここあたりの方がお互い近いらしいからここで別れよう。Let's call it a day here. It was nice to see you after so long. I'd be happy to see you again.」
ウォレス「Thank you so much for today, Reisuke…」
そう言って2人は会った時と同様抱擁を交わした。
零助「ほら、優助も」
優助「えっ、ハグ?」
零助「ちゃうちゃう、バイバイって言わないと」
優助「え、....あぁ....ば、バイバイ」
そう言って手を振ると同じく手を振り返してくれた。
ウォレス「Bye bye, ユスケ!」
そう言った後、テイラーさんは俺らが向かう場所とは別方向に向かい今日は完全に別れる事となった。
俺達は改札の方に向かってゆっくり歩いた。
零助「.....んで?どうやった?」
最初14階で聞いてきた事をまた聞いてきた。
優助「...まぁ良かったと思うで」
零助「楽しく出来たか?」
正直、楽しいと言えるかわからなかった。でもテイラーさんは本当にずっと楽しそうだった。
優助「弟さんは楽しそうだったよ」
零助「優助は?」
優助「....まぁ色々と」
そう言葉を濁した。
兄貴は少しははっと笑った後に色々と聞いてきた。
零助「んで?結局弟さんの事“テイラーさん”って呼ぶ事にしたんやね?んで弟さんからは“う”を抜かれてユスケ....っ」
優助「呼び方分からんかったから結局... 日本では初めての人とか苗字呼びが普通やろ?」
そう言うと兄貴がクスクスと隣で笑ってくる。
何がおかしいのだろうか?
優助「.....?」
零助「まぁいいよ。今日色々と知り合えたようで良かった。」
優助「うん。まぁ会える機会とかこれだけやし弟さんにとっていい思い出くらいには——」
零助「ん?何言ってん?今年1年間の約束やで?」
優助「.........は?」
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一方....
ー PM 8:35〔留学生寮前〕ー
ウォレス「.......♪」
白のニャンコを持って見ながら歩いた。
今日ユスケからもらったカワイイニャンコ。
???「Wallace!」
ボクに向かってくる、近づく足音。
声はEricのだ。
エリック「Wallace…! I was looking for you! Why did you say nothing to me and leave the dorm!?(ウォレス!お前の事探したんだぞ!なんで何も伝えずに出て行ったんだ!?)」
Ericはスマホを片手に持っていた。
探してくれていたのだろうか。
でも怒られてしまった。
怖くて顔が見れなくなった。
ウォレス「..... I-I’m so sorry… I won’t do it again anymore…(ご、ごめん... もう2度としないから...)」
エリック「Anyway… I’m glad you are safe… Come in, it's almost time for lights to go out in the dorms.(とにかく... 君が無事で良かった... 戻ろう、もうすぐ寮の消灯時間だよ)」
ウォレス「….Yes」
続く




