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第53話 ゼフィラス王国の窮状と、山脈を抜ける鋼の道

第53話 ゼフィラス王国の窮状と、山脈を抜ける鋼の道

西方大陸と南方大陸を隔てる、果てしなく続く巨大な絶壁の連なり、『竜の背骨(ドラゴンズ・スパイン)大山脈』。

かつては凶暴な飛竜(ワイバーン)の群れが空を支配し、何人たりとも越えることのできなかったこの絶対的な自然の境界線は今、トウヤの率いる安全第一商会によって、文字通り物理的に『貫通』されようとしていた。

「ルミナ! シールドマシンの魔力炉の出力、さらに三パーセント上げろ! 岩盤の硬度が上がってきている!」

「了解です、会長! 冷却液の循環も最大に設定します! まだまだドリルは絶好調ですよ!」

ドワーフの天才機関技師ルミナが開発した超巨大・魔導シールドマシン『安全第一・マウンテンバスター』が、鼓膜を激しく震わせる轟音を立てながら、鋼鉄のように硬い岩盤をまるで豆腐のように削り取っていく。

その先端に取り付けられた、絶対の耐熱と硬度を誇る紅蓮隕鉄(クリムゾン・メテオライト)製の巨大ドリルが猛烈な勢いで回転し、砕かれた岩石は後方に設置された魔導ベルトコンベアによって自動的に排出されていく。

それと同時に、トウヤが放つ莫大な魔力によって錬成された純白の『魔導コンクリート』がトンネルの壁面に淀みなく流し込まれ、一瞬にして絶対に崩落しない強固で滑らかな壁面が形成されていくのだ。

「す、凄いわ……。あの巨大な山脈が、文字通り中から穴を開けられていくなんて……。これなら、数ヶ月かけても越えられるかどうかわからない危険な山越えのルートが、わずか数日で……いえ、数時間で通り抜けられるようになるわ」

安全第一エクスプレスの快適なラウンジ車両の窓から、目まぐるしく出来上がっていくトンネルの壁面を見つめながら、ゼフィラス王国の第一王女クレア・フォン・ゼフィラスが感嘆の溜息を漏らした。

彼女の忠実な護衛である近衛騎士隊長レオンも、驚愕に目を見開いたまま、言葉も出せずにただその圧倒的な光景を見つめている。

「クレア王女。俺たちのインフラは、ただ人が歩くための『道』じゃない。誰もが安全に、そして迅速に必要な物資や情報を届けられる『生命線』だ。人の命を繋ぐために、道は絶対に安全でなければならない」

トウヤは淹れたてのハーブティーのカップをテーブルに置き、静かに微笑みかけた。彼が掲げる【安全第一】死に戻り商人の異世界スローライフ~万能魔法と『リトライ』を駆使して完璧な物流網とインフラを整備し、のんびり隠居を目指します~という至上の理念は、この過酷な異世界において、何よりも確実で圧倒的な救済となる。

「さて、王女。この長いトンネルを抜ければ、そこは貴女の故郷である西方大陸だ。俺たちの次なる拠点となるゼフィラス王国の現在の正確な状況と、周辺国家の政治的・軍事的な情勢について、もう少し詳しく教えてくれないか。情報屋のリンも交えて、今後のインフラ計画のすり合わせをしておきたい」

トウヤの言葉に、鼬人族(イタチマン)の情報屋リンが、眼鏡をキラリと光らせながら手元の魔導端末を開き、詳細な書き込みの準備を整えた。

クレアは表情を引き締め、背筋を真っ直ぐに伸ばして語り始めた。

「……はい。我がゼフィラス王国は、西方大陸の東部に位置する、歴史ある最大の国家です。かつては豊かな風の魔法技術と、それを応用した美しい工芸品、そして豊かな麦畑で栄えていました。しかし、近年は深刻な気候変動と魔力異常により雨が降らず、農作物が全く育たない慢性的な飢餓状態に陥っています。さらに……」

クレアは美しい唇を強く噛み、伏し目がちに言葉を続けた。

「この飢餓で国力が低下していることに乗じて、西に隣接する軍事国家『ヴァルカン帝国』が、我が国への本格的な侵略の機を窺っているのです。ヴァルカン帝国は武力と恐怖による支配を至上主義とする国であり、彼らの若き皇帝は西方大陸の完全な統一を目論んでいます。我が国が食料不足で弱体化している今、彼らが大軍を率いて国境を越えてくるのは時間の問題でしょう。だからこそ、私は東の大陸から莫大な食料を買い付け、民を救うため、命がけでこのヴェノムベイスンと大山脈を越えようとしていたのです」

「軍事国家ヴァルカン、か。なるほど、飢えて身動きが取れない隣国を、武力で無理やり飲み込もうという算段だな」

リンが冷ややかな声で補足する。

「ヴァルカン帝国の情報は私の方でもいくらか掴んでいます。彼らは強力な魔導兵器や、戦闘に特化した人工魔獣を多数保有し、力による支配を絶対としています。もしゼフィラス王国が陥落すれば、我々が築こうとしている西方大陸の広域物流ネットワークも、彼らの軍事利用のために不当に接収される危険性が極めて高いですね」

「……人の命を繋ぐためのインフラを、軍隊の土足で踏み荒らし、武力で奪い取るような輩は、俺が最も嫌悪する存在だ。……それは絶対に許さない」

トウヤの瞳に、静かな、しかし確かな商人の、そして人としての怒りの炎が宿る。

「クレア王女。安心しろ。俺たちがゼフィラス王国の王都に安全な物流網を開通させれば、食料問題は一瞬で解決する。エルドラドやコーラル・エデンからの食料が、毎日山のように届くようになる。そして、俺たちの造る『道』は、そう簡単に軍隊に奪われたり、破壊されたりするようなヤワな代物じゃない。……ゼフィラス王国を、西の『絶対安全圏』の要塞拠点にする」

「トウヤ様……! ありがとうございます! 貴方様は本当に、女神様が遣わした神の御使いのようなお方だわ……!」

クレアが感極まって、涙を浮かべながらトウヤの手を両手で強く握りしめた。レオンもまた、騎士としての深い敬意を込めて深く頭を下げる。

その時だった。

「会長! 前方より緊急事態でさぁ!」

犬人族(ドッグマン)のマイロが、ホログラムの地下深度マップを激しく操作しながら、血相を変えて叫んだ。

「シールドマシンの進行方向に、超巨大な空洞空間を発見! しかも、その中にすさまじい数の巨大な生体反応と、異常な魔力溜まりがありやす! こいつは……ただの魔獣の巣じゃねえ! 人工的な建造物の反応も混ざってますぜ!」

ズゴゴゴゴゴォォォォォォッ!!!

マイロの警告とほぼ同時に、シールドマシンが最後の分厚い岩盤を突き破り、広大な地下空間へと躍り出た。

そこは、光る青い苔に照らされた不気味な地底湖と、人工的に削り出された巨大な石柱が乱立する、古代の巨大な地下遺跡であった。

しかし、ただの遺跡ではない。その広大な空間を埋め尽くすようにして蠢いていたのは、全身が鋼鉄以上の硬度を持つ未知の金属で覆われた巨大な多足歩行の魔獣――『アダマンタイト・センチピード(超硬魔百足)』の大群と、その群れを統率し、遺跡の中心に鎮座する超巨大なゴーレム『古代魔導機兵(エンシェント・ギア)』であった。

「シャァァァァァァァッ!!!」

「ガガガガ……侵入者……排除……排除……!」

縄張りを荒らされた百足たちが不気味な摩擦音を立てて襲いかかり、古代魔導機兵が赤い眼光を光らせて巨大な砲身をこちらに向ける。

「うわぁっ!? なんだあの化け物たちは! 鋼鉄の百足に、動く巨大な石像だと!?」

レオンが剣を抜きながら悲鳴を上げた。

「あれは……おとぎ話に聞く、古代文明の防衛兵器!? なぜ大山脈の地下にこんなものが……!」

クレア王女も顔を青ざめさせる。

「……なるほど。大山脈の地下には、古代の厄介な遺産が眠っていたわけか。しかも、あの百足どもはゴーレムの放つ魔力を食って繁殖しているらしい」

トウヤは冷静に状況を分析し、一切の焦りを見せずに立ち上がった。

「だが、立ち止まっている暇はない。インフラ工事の邪魔をする障害物は、古代の兵器だろうが魔獣だろうが、まとめてスクラップにして駆除するまでだ。みんな、出番だぞ!」

「おうっ! 鋼鉄の百足だろうが何だろうが、俺の紅蓮隕鉄バスターソードで輪切りにしてやるぜ!」

人間の冒険者ザックが、闘志を剥き出しにして列車のデッキから跳躍する。

「フン。古代のガラクタ風情が、真の竜に歯向かうか。水底の錆にしてくれよう!」

竜人族のリュウガが、両手に超高圧の圧縮水流を纏わせながら飛び出す。

「虎王の咆哮!! アダマンタイトごと噛み砕いてやるわ!」

「私の双剣、硬い装甲の隙間の関節を的確に斬り裂きますよ!」

「親方の斧の切れ味、とくと味わいな! ガラクタ解体ショーの始まりだ!」

ガレス、ファラ、ヴォルグの獣人トリオも、凄まじい気迫と共に金属の魔獣の群れへと突っ込んでいった。

「シルフィ、列車の防衛結界を最大出力に。ルミナはシールドマシンのドリルを一時停止し、装甲を展開。バルガさんは後方で未知の鉱石の鑑定準備を」

トウヤの的確で無駄のない指示が次々と飛ぶ。

「はいっ! 『大精霊の絶対盾(アイギス・シールド・マキシマム)』!」

エルフの護衛シルフィの杖から放たれた強力な風と光の多重結界が、エクスプレスとクレアたちを完全に包み込み、飛来する百足たちの酸液を完全に弾き返す。

地下遺跡での激しい戦闘が始まった。

ザックの紅蓮隕鉄の大剣が、火花を散らしながらアダマンタイト・センチピードの硬い外殻ごと巨体を真っ二つに両断する。

リュウガの水破竜巻が、古代魔導機兵の放つ強力な魔力砲を水圧で相殺し、逆にその巨大な腕を吹き飛ばす。

ガレス、ファラ、ヴォルグの連携攻撃が、群がってくる百足たちの関節を次々と破壊し、動けなくなったところを的確に粉砕していく。

「な、なんて規格外の強さだ……! あの金属の百足は、王国騎士団が一箇小隊で全力で魔法を撃ち込んでも傷一つつかないほどの硬さのはずなのに……!」

レオンが信じられない光景に剣を握る手すら震わせる。

しかし、古代魔導機兵もさるものだった。腕を破壊されたことに警告音を鳴らしたゴーレムは、胸部の装甲を開き、中心にある巨大な『魔力縮退炉』を剥き出しにした。そこから、周囲の空間ごと消し飛ばすような極大の閃光砲を放とうとエネルギーを急速チャージし始めたのだ。

ブゥゥゥン……!!

凄まじい魔力の重圧が空間を歪め、特務チームの面々の動きが一瞬鈍る。

その隙を突き、生き残った巨大な百足の群れがザックたちを完全に包囲し、一斉に飛びかかろうと迫った。

「させないわ! 皆さんを護る! 『極大風刃の乱舞(テンペスト・カッター)』!」

クレア王女が馬車の窓から身を乗り出し、持てる王族の血と魔力の全てを込めて、最高位の風の魔法を放った。

無数の鋭い真空の刃が百足たちの群れに直撃し、金属の装甲に深い亀裂を入れ、魔獣たちの動きを完全に封じ込めた一瞬の隙。

「よくやった、クレア王女。素晴らしい援護だ」

トウヤが列車の屋根から静かに飛び降り、古代魔導機兵の目の前へと降り立った。

「インフラを邪魔する巨大な古代の遺産は、俺の錬金魔法で、未来の『安全な素材』に還元させてもらう」

トウヤが両手を、極大の閃光砲を放とうとしている古代魔導機兵の魔力縮退炉に向ける。

「『全魔法創造』――『超広域土・金属魔法・完全構造分解(マテリアル・ブレイクダウン)』、からの『錬金魔法・超巨大魔導防衛中継要塞構築(グランド・ディフェンス・フォートレス・クリエイト)』!!」

カッ……!!!

トウヤの中に眠る規格外の魔力が爆発的に膨れ上がり、古代魔導機兵の強固な装甲と、周囲のアダマンタイト・センチピードたちの残骸を分子レベルで瞬時に分解・融解させた。

ゴーレムは極大砲を放つ間もなく、自身の身体を構成していた古代金属とエネルギーを完全に奪われ、砂のように崩れ落ちていく。

そして、抽出された莫大な量の高純度アダマンタイトと未知の古代魔力は、トウヤの錬金魔法によって、この巨大な地下遺跡空間をまるごと埋め尽くすほどの『超巨大な地下防衛中継要塞』へと、まるで早送り映像のように瞬く間に再構築されていったのだ。

ズゴゴゴゴゴォォォォォッ!!!

不気味な光る苔に照らされていた古代の遺跡は、わずか数分で、純白の魔導コンクリートと、絶対の強度を誇るアダマンタイト装甲で構成された、難攻不落の地下要塞へと完全に姿を変えた。

要塞の内部には、エクスプレスが何台も安全に停車できる巨大なプラットホームと、豊富な地下水脈を活用した浄化施設、そして魔獣や外敵の侵入を完全に拒絶する全自動防衛システムが完璧に完備されている。

「こ、これは……!? 化け物たちを倒しただけでなく、一瞬にして地下にこれほどまでに巨大な鋼鉄の城を……!?」

レオンが完全に腰を抜かしてへたり込み、開いた口が塞がらない。

「すごい……! トウヤ様、貴方様は本当に、世界そのものを創り変える力をお持ちなのですね……!」

クレア王女の瞳には、もはや尊敬を超えた、神の御業に対する畏敬の念が深く宿っていた。

「これで、山脈の地下ルートの安全も完全に確保されたな。この『大山脈・古代アダマンタイト中継駅』は、西方大陸への物流において、絶対に落ちない鉄壁の要となるだろう」

トウヤは完成したばかりの美しく強固な要塞を見渡し、満足げに頷いた。

「さあさあ、皆さん! お腹が空いたでしょう! 戦いの後は、しっかり栄養補給して疲れを取るのが一番ですよ!」

獣人の少女ミアが魔導キッチンカーから元気よく飛び出してきて、満面の笑みで巨大な保温鍋を運んできた。

「さっき倒した百足は食べられないので、エルドラドで仕入れておいた特上の砂漠牛を使った、『特製・オアシス牛のトロトロ赤ワイン煮込みと、ふかふかチーズパン』です! クレアお姉ちゃんも、レオンさんも、遠慮せずにたくさん食べてくださいね!」

芳醇な赤ワインとマクラカ産スパイスの深い香りが、真新しい地下要塞いっぱいに広がる。

極限の緊張から解放された一行は、ミアの作る絶品料理に舌鼓を打ちながら、笑顔でつかの間の休息を楽しんだ。クレア王女も、王宮の料理より遥かに美味しいと頬を緩ませていた。

   * * *

数時間の休息と、シールドマシンの入念なメンテナンスを終え、安全第一エクスプレスは再び西へ向けて最後の掘削を開始した。

そして、ついにその感動的な瞬間が訪れた。

バキィィィィィィンッ!!!

シールドマシンの先端ドリルが最後の岩盤を心地よい音と共に突き破ると、眩しく温かい太陽の光が、一直線に伸びたトンネルの中に差し込んできた。

「会長! やりやしたぜ! 竜の背骨大山脈、完全貫通です!!」

マイロが尻尾を激しく振りながら歓喜の声を上げる。

トンネルを抜けた先に広がっていたのは、広大だがどこか荒涼とした枯れた平原と、その中心にそびえ立つ、巨大な風車が無数に並ぶ美しい都市――西方大陸最大の国家、ゼフィラス王国の王都『ゼフィリア』であった。

「ついに……ついに帰ってきたのですね。しかも、あんなに危険だった毒の沼地と大山脈を、たった数日で安全に通り抜けて……」

クレア王女が、枯れ果てた大地を見つめながらも、希望に満ちた涙を浮かべて呟く。

エクスプレスは自ら氷の魔導レールを敷設しながら、王都ゼフィリアの巨大な正門前へと真っ直ぐに進み、蒸気を吹き出しながら静かに停車した。

突如として荒野の彼方から現れた巨大な漆黒の装甲列車と、その背後の山脈にぽっかりと開いた巨大なトンネルに、王都の門兵たちは完全にパニックに陥り、槍を構えて激しく警戒している。

「待ちなさい! 武器を下ろせ! 私はゼフィラス王国第一王女、クレア・フォン・ゼフィラスです!」

クレアが馬車から優雅に降り立ち、凛とした、しかし威厳のある声で門兵たちに告げた。

「ひ、姫様!? ご、ご無事であられましたか!」

「東の大陸へ決死の覚悟で向かわれたはずでは……!? その背後の巨大な鉄の乗り物は一体……!?」

「彼らは『安全第一商会』。我がゼフィラス王国を、そして飢餓に苦しむ全ての民を救うために、あの大山脈を貫く『絶対安全な道』を切り拓いてくださった、偉大なる恩人たちです! 直ちに国王陛下に急使を送り、彼らを最高の国賓としてお迎えする準備を整えなさい!」

クレアの力強い宣言に、門兵たちは慌てふためきながらも深く敬礼し、城へと転がるように走っていった。

「これで、西方大陸への地盤は完全に出来たな」

トウヤは列車のデッキから、美しいが活気のない王都を見渡し、静かに微笑んだ。

「リン、リラ。早速だが、エルドラドからの食料輸送第一陣を無線魔導具で要請してくれ。この国の人々に、俺たちの『圧倒的なインフラの力』を存分に味わってもらう」

「承知いたしました、会長。すでに手配済みです。数時間後には、山ほどの食料が到着しますよ」

リンが不敵に笑う。

トウヤたちが王都へ入ると、街の惨状は外から見るよりも遥かに深刻だった。

かつては風の魔法で栄え、美しい石造りの建物が並ぶ街並みだが、行き交う人々の顔は酷く痩せこけ、市場には干からびた野菜の切れ端と、硬い黒パンしか並んでいない。隣国である軍事国家ヴァルカンの侵略の脅威に怯え、街の活気は完全に失われていた。

しかし、そのわずか数時間後。

大山脈を貫く『クリスタル・チューブ鉄道』を通って、エルドラドのターミナルから大量の新鮮な肉、瑞々しい野菜、甘い果物、そして清らかな水が、安全第一エクスプレスの後続貨物車両によって怒涛の如く運び込まれてきたのだ。

それはまさに、飢えに苦しむゼフィラス王国の民にとって、神が起こした奇跡のような光景であった。

「さあさあ! 皆さん、順番に並んでくださいねー! 今日は安全第一商会からの特別大盤振る舞い! エルドラド産の新鮮野菜と、お肉をたっぷり使った『特製・大山脈越えの超スタミナシチュー』ですよ! もちろん無料の炊き出しですから、おかわりもたくさんありますよ!」

ミアが王都の中央広場に巨大な魔導キッチンカーを素早く設置し、お玉を振りかざして元気な声を響かせる。

飢えていた市民たちは、信じられないものを見るような目で、そしてスパイスと肉の強烈に食欲をそそる香りに導かれるようにして、次々と広場に集まってきた。

「う、美味い……! こんなに温かくて、口の中でとろけるような美味しいお肉、一体何年ぶりに食べただろう……!」

「新鮮で甘い水が、いくらでも飲めるなんて……! あの死の山脈を越えて、こんなにたくさんの食料が届くなんて、本当に夢みたいだ!」

「王女様万歳! 安全第一商会万歳!!」

市民たちは涙と鼻水を流しながら熱いシチューを貪り食い、トウヤたちに何度も何度も地面に額を擦り付けて感謝の言葉を述べた。

その感動的な様子を、王城のバルコニーから見下ろしていたゼフィラス国王も、クレアからの詳細な報告を聞き、トウヤの圧倒的な力と、「世界を安全な道で繋ぐ」というインフラ構築の理念に深く、深く感銘を受けていた。

「トウヤ殿。貴方様は我が国を、いや、この西方大陸の未来そのものを救ってくださった。ゼフィラス王国は今後、国家の威信をかけて安全第一商会に全面的な協力を惜しまない。王都の最も中心の土地に、貴方たちの『グランドターミナル』を建設する許可を与えよう。税も関税も一切免除する」

謁見の間で、国王からの最大の賛辞と、国家レベルでの後援の約束を取り付けたトウヤは、力強く頷いた。

「ありがとうございます、国王陛下。俺たちのインフラは、ただ食料を運ぶだけではありません。隣国であるヴァルカン帝国の理不尽な軍事的脅威も、俺たちが構築する『絶対安全圏』の力で、経済的・物理的に完全に無力化してみせます。誰も、俺たちの道を脅かすことはできない」

その時、王宮の廊下の奥から、灰色のローブを深く被った小柄な人影が、兵士たちの制止を振り切って謁見の間へと飛び込んできた。

「お、お待ちください! 私も……私もその『安全第一商会』に加えていただきたいのです!」

フードが外れ、現れたのは、猫の耳と尻尾を持つ亜人(キャットピープル)の少女だった。彼女の腕には、複雑な歯車と魔力線が組み込まれた、見たこともない機械仕掛けのガントレットが装着されている。

「お前は、ヴァルカン帝国から亡命してきたという魔導具技師のニアではないか! 無礼であろう!」

レオンが前に出ようとするが、トウヤはそれを手で制した。

「俺はトウヤだ。君のその腕の機械、とても興味深い技術だな。なぜ俺たちの商会に入りたい?」

ニアと呼ばれた猫人族の少女は、トウヤを真っ直ぐに見つめて叫んだ。

「私はヴァルカン帝国で、兵器開発の奴隷として働かされていました。あいつらは亜人を道具としか見ていません! 私は自分の技術を、人を殺す兵器ではなく、この国を救ったあなたたちのような『人を豊かにする道具(インフラ)』のために使いたいのです! どうか、私を雇ってください!」

トウヤは、彼女の目にある技術者としての純粋な光と、ドワーフのルミナとはまた違う方向性の卓越した技術力を一目で見抜き、優しく微笑んだ。

「いいだろう、採用だ。ニア、君にはルミナと共に、この王都の新しいターミナル施設の設計と、防衛魔導具の開発を任せる。期待しているよ」

「はいっ! ありがとうございます、トウヤ会長!」

ニアが猫耳をピンと立てて、嬉しそうに飛び跳ねた。

こうして、西方大陸最大の国家ゼフィラス王国と、優秀な猫人族の魔導具技師ニアを新たな仲間に迎え入れた安全第一商会。

人々の飢えを満たし、絶望を笑顔に変える圧倒的な物流ネットワークは、王都ゼフィリアを強固な起点として、さらに西へとその『鋼鉄の道』を伸ばしていく。

武力と恐怖による支配を目論む軍事国家ヴァルカン帝国との、インフラと軍事力の避けられない激突が、今まさに始まろうとしていた。

【現在のステータス状況】

名前:トウヤ

年齢:18

職業:商人 / 冒険者(ランクS)

レベル:120 (古代魔導機兵の完全分解、および超巨大アダマンタイト要塞の構築によりさらにレベルアップ!)

体力:1400/1400

魔力:90,000/100,000 (地下要塞構築とアダマンタイト錬成により消費。現在急速回復中)

固有スキル:『リトライ(発動可能)』

魔法適性:全属性(火・水・風・土・光・闇・時空・無)

取得スキル:鑑定、算術、交渉術、全魔法創造、全武具習熟、気配遮断、錬金、空間把握、海洋環境制御、砂漠環境制御、要塞建築術、経済掌握術、毒物浄化制御、大規模地下掘削術、国家間交渉術、【新】古代技術解析

【仲間・後援者の状況】

ミア(獣人の少女):王都での「超スタミナシチュー」の炊き出しが大成功。飢えた市民の胃袋と心を一瞬で鷲掴みにし、街の救世主的なアイドル存在になりつつある。

シルフィ(エルフの護衛):王都の風の魔法使いたちと積極的に交流を持ち、互いの魔法技術を高め合い、王都の空調管理システムの改善に協力している。

ザック(人間の冒険者):アダマンタイト・センチピードを両断したことでさらに自信を深め、ゼフィラス王国の騎士たちに実戦的な剣術の稽古をつけている。

リュウガ(竜人族の戦士):古代のゴーレムを圧倒したことでご機嫌。王都の子供たちから「ドラゴンの英雄」と呼ばれ、満更でもない様子でサインに応じている。

ガレス(虎人族の戦士):王都の自警団と協力し、炊き出しの列の整理や、食料を狙うゴロツキの排除など、治安維持に目を光らせる。

マイロ(犬人族の地図職人):西方大陸の詳細な地形データの収集を開始し、隣国ヴァルカン帝国との国境線と軍事拠点の分析に没頭中。

ピピト(鳥人族の飛脚):王都の空を自由に飛び回り、エルドラドとの間の高速連絡網として、大山脈のトンネルを抜けて大活躍している。

リン(鼬人族の情報屋):ゼフィラス王国の商業ギルドと即座に連携し、食料と引き換えに王国の希少な魔法工芸品を安価で買い付ける有利な取引ルートを確立。

ヴォルグ(狼人族の傭兵):ゼフィラス王国の騎士レオンと剣を交え(手合わせ)、互いの実力を認め合う良き戦友としての絆を深めている。

ファラ(豹人族の女戦士):ヴァルカン帝国のスパイが王都に潜入していないか、夜の裏路地を音もなく巡回し、すでに数名の不審者を拘束した。

セレン(セイレーン族の海先案内人):王都の中央広場にある大きな噴水を専用の居場所にしてもらい、美しい歌声で市民たちの疲れた心を癒やしている。

ルミナ(ドワーフの機関技師):シールドマシンを無事に山脈を貫通させたことで大満足。新しく仲間に加わったニアと意気投合し、徹夜でターミナル設計の議論を交わしている。

リラ(狐人族の商人):白砂商会の西方大陸支部を王都の一等地に設立。ゼフィラス王国における物流の独占権を実質的に手に入れる。

ザラス(リザードマンの戦士):大山脈地下アダマンタイト中継駅の防衛責任者として、王国騎士団と連携した鉄壁の警備体制を構築し、魔獣の侵入を完全に遮断。

バルガ(人間の宝石商):遺跡から精製された超高純度アダマンタイトを鑑定し、「これで世界が買える」と狂喜乱舞し、安全第一商会の専属鑑定士としての地位を盤石にする。

ニア(猫人族の魔導具技師):【新規加入】ヴァルカン帝国から亡命してきた天才技師。兵器ではなく人を豊かにするインフラ開発に情熱を燃やす。

クレア・フォン・ゼフィラス(第一王女):トウヤへの尊敬と信頼が恋愛感情に近いレベルで限界突破し、彼を「ゼフィラスの救世主」として全面的に支援する。

ゼフィラス国王:【新規後援者】西方大陸最大の国家の主。トウヤの規格外の力に感服し、王都の中心に安全第一商会のグランドターミナル建設を許可・免税特権を付与する。

インフラ状況:竜の背骨大山脈を貫通する「絶対安全防空トンネル」完成。内部に古代遺跡を改修した「地下アダマンタイト中継駅」構築。ゼフィラス王都ゼフィリアへの物流ルート完全開通。

資金:金貨1,800,000枚(ゼフィラス王国との国交樹立、および地下遺跡のアダマンタイト群の独占採掘権獲得により、資産が天文学的な数字に膨れ上がる)

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