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第18話 無敵の魔導船と、海賊島への進撃

第18話 無敵の魔導船と、海賊島への進撃


東の空が白み始め、穏やかな波の音が響く潮騒の村マレ。

海賊の襲撃によって一度は廃墟と化しかけたこの村は、たった一夜にして、白銀のミスリル城壁に囲まれた難攻不落の要塞港へと生まれ変わっていた。

その巨大な防波堤の内側、波一つない静かなドックにおいて、前代未聞の「造船作業」が今まさに佳境を迎えようとしていた。


「……信じられねえ。船を造るってのは、木材を何ヶ月も寝かせて乾燥させ、何十人もの職人が何年もかけて組み上げるもんだ。それが……たったの数時間で、竜骨から外装まで組み上がっちまうなんて……」

人間の船大工であり、マレ村の自警団リーダーでもある青年カイトは、手にした設計図を震える手で握りしめながら、目の前の光景に圧倒されていた。

彼の視線の先では、トウヤが腕組みをしたまま、涼しい顔で巨大な魔法陣を展開している。


「『錬金術・物質融合』、ならびに『水魔法・完全乾燥』。……よし、強度はこんなもんか。カイト、君の設計図の通りに船底のバラスト(重り)構造を調整した。これでどんな荒波でも絶対に転覆しないはずだ」

トウヤの言葉と共に、淡い光が収まる。

そこに姿を現したのは、全長五十メートルに及ぶ、漆黒と白銀の流線型をした巨大な船だった。船体は、王都から『魔導通信網』と空間魔法による転送システムを駆使して取り寄せた最高級の強化木材と、ミスリル合金の複合装甲コンポジット・アーマーで構成されている。

帆船が主流のこの異世界において、マストが一本も存在しないその異様なシルエットは、まさに海の魔物そのものであった。


「トウヤ様! 王都のゴランさんから、例の『水陸両用・魔導エンジン』の最終パーツが転送されてきました!」

獣人の少女ミアが、通信室から大きな金属の箱を抱えて駆け寄ってくる。

「ありがとう、ミア。これで動力も完璧だ」

トウヤは箱を受け取ると、空間魔法で瞬時に船の機関室へと移動し、魔導エンジンを組み込んだ。

ゴランが設計し、トウヤの万能魔法で調整されたこのエンジンは、周囲の海水を吸い上げて高圧の魔力水流として後方へ噴射する「ウォータージェット推進」と、船体そのものを風魔法でわずかに浮き上がらせる「ホバー機能」を兼ね備えている。

「……完成だ。名付けて『安全第一商会・特務輸送艦リヴァイアサン』。これなら、海賊船が何百隻束になってこようが、傷一つつけられずに海の底へ沈められる」


トウヤが満足げに船体を撫でていると、ドックの端から、透き通るような青い髪を持つセイレーンの少女、ルリアが恐る恐る近づいてきた。

「ト、トウヤ様……。あの、本当に私なんかが、この素晴らしい船に乗ってもよろしいのでしょうか……。セイレーンは、人間たちからは嵐を呼ぶ不吉な魔物だと嫌われることも多くて……」

ルリアは自信なげに目を伏せる。

希少な水棲亜人である彼女は、その美しい容姿と海竜を鎮める歌声を持つがゆえに、常に人間に狙われ、迫害されてきた。


トウヤはルリアの前にしゃがみ込み、視線を合わせた。

「ルリア。俺の商会では、種族や過去なんて関係ない。大事なのは、君が『海を平和にしたい』という意志を持っていること、そして俺たちがその意志を『安全第一』で全力サポートすることだ。君の歌声は、海竜の呪いを解き、港湾都市アクアリアの物流を復活させるための最強の武器なんだ。胸を張って乗ってくれ」

「トウヤ様……! はいっ……! 私、一生懸命歌います!」

ルリアの瞳に、大粒の涙と共に強い決意の光が宿った。

そのやり取りを城壁の上から見ていたエルフの護衛シルフィも、ふっと柔らかな笑みをこぼし、愛用の弓の弦を引き絞って点検を始めた。


朝食の時間。

要塞化された村の広場に設けられた巨大なテントで、トウヤたちはカイトが振る舞う海鮮スープをすすりながら、出航前の最終ミーティングを行っていた。

テーブルの上には、王都のアルベルトから送られてきた、西の海域に関する詳細な海図と政治情勢のレポートが広げられている。


「……なるほど。港湾都市アクアリアは、西の大陸エルガルドとの貿易を独占する、この王国にとっての『海の心臓』というわけか。そこが海竜と海賊によって封鎖されれば、王国全体の経済が深刻なダメージを受ける」

トウヤがレポートを読み上げながら確認すると、カイトが険しい顔で頷いた。

「ああ。黒鮫海賊団は、昔はただのコソ泥みたいな連中だったんだ。それが数ヶ月前、急に見たこともない『黒い大砲』を積んだ装甲船を何隻も引き連れて現れ、沿岸の村を焼き払い始めた。それに合わせるように、海竜様が正気を失い、荒れ狂い始めたんだ」

「黒い大砲に装甲船……。ガランド帝国の息がかかっているのは明白だな。海竜の呪いも、帝国の宮廷魔術師あたりの仕業だろう。真正面からの戦争で俺たちにインフラをへし折られたから、今度は裏から経済を干上がらせる作戦に出たってわけだ」


トウヤはコーヒーを一口飲み、冷徹な商人の目を海図に向けた。

「連中の狙いは、王国の弱体化と、海の物流の完全掌握。だが、俺がその海に『絶対安全なシーレーン』を敷く。帝国が裏工作で時間を稼ごうが、俺の『魔導船』と『インフラ構築速度』の前には何の意味もなさないことを教えてやる」

トウヤは立ち上がり、仲間たちを見渡した。

「作戦はシンプルだ。これより特務輸送艦リヴァイアサンで出航し、アクアリア沖に浮かぶ海賊の本拠地『骸骨島』を強襲する。海賊どもを『労働力』として回収しつつ、島の中心にいる海竜の呪いを解く。……さあ、西の海を俺たちの庭にするぞ!」

「「「おおぉぉぉぉぉっ!!」」」


村人たちの盛大な歓声と見送りを受けながら、特務輸送艦リヴァイアサンは静かにドックを滑り出た。

船の操舵輪を握るのは、マレ村最高の船大工であり、海を知り尽くしたカイト。

船首の特設ステージには、潮風を受けて青い髪をなびかせるルリア。

マストの頂上に設けられた見張り台には、エルフの眼力で数十キロ先まで見通すシルフィ。

そして、機関室の出力調整と通信を担当するミア。

完全な布陣であった。


「トウヤ、行くぜ! 魔導エンジン、出力四十パーセント!」

カイトが操舵輪の横にあるレバーを押し込むと、船体の後方から凄まじい勢いで海水が噴射され、同時に風魔法の浮力が船体を持ち上げた。

ズババババババッ!!!

「うおぉぉっ!? はえええええええっ!! なんだこの速度は!?」

カイトが歓喜と驚愕の入り混じった悲鳴を上げる。

帆船であれば順風満帆でも時速十数キロが限界のところを、リヴァイアサンは波の抵抗を一切受けず、時速八十キロという異次元のスピードで海上を滑空していく。

「まだまだスピードは出るけど、最初はこれくらいで慣らしておいてくれ。シルフィ、前方の様子は?」

甲板で腕を組むトウヤが、通信用の魔導具で問いかける。


『トウヤ様、前方約三十キロの海域に、黒鮫海賊団の艦隊を確認しました。大型のガレオン船が五隻、小型のガレー船が二十隻以上。我々の接近に気づき、迎撃の陣形をとっています』

見張り台からのシルフィの冷静な報告。

「ご苦労様。三十キロなら、この速度で約二十分後には接触するな。カイト、減速せずにそのまま艦隊の中央へ突っ込め」

「りょ、了解だ! あんたの造ったこの船なら、ガレオン船だろうが豆腐みたいにぶち抜けそうだぜ!」

カイトは恐怖よりも興奮が勝った顔で、舵を真っ直ぐに固定した。


海風が次第に強く、そして冷たくなっていく。

空には分厚い暗雲が立ち込め、アクアリア沖に広がる海域が、いかに異常な魔力に包まれているかを示していた。

やがて、水平線の向こうから、ドクロの旗を掲げた黒い船の群れが姿を現した。


海賊艦隊の旗艦。その甲板では、黒鮫海賊団の船長が単眼鏡を覗き込み、信じられないものを見たように目を丸くしていた。

「おい、なんだありゃあ……!? マストも帆もねえ黒い船が、とんでもねえ速度でこっちに向かってきやがるぞ!」

「せ、船長! ガランド帝国の魔術師様からは、王都の騎士団か軍艦が来るかもしれないとは聞いていましたが、あんな化け物みたいな船は聞いてませんぜ!」

「ええい、慌てるな! どんな船だろうが、大砲を何十発もブチ当てりゃ沈む! 帝国から支給された『魔導砲』の準備をしろ! 射程に入り次第、一斉射撃だ!」


海賊船の側面に、不気味な紫色の光を放つ魔導砲が次々と展開される。

距離が三キロ、二キロと縮まっていく。

「撃てェェェェッ!!」


ドゴォォォォォォンッ!!!


数十発の魔導砲弾が、海面を割りながらリヴァイアサンへと降り注ぐ。

それらは通常の砲弾の数倍の破壊力を持ち、直撃すれば大型の軍艦ですら一瞬で木端微塵になる威力を持っていた。

見張り台のシルフィが息を呑むが、甲板に立つトウヤは欠伸を噛み殺しながら右手を軽く振った。


「『光魔法・不可視の防壁インビジブル・シェル』、対魔法反射モード」

バキィィィィィィンッ!!!

リヴァイアサンの船体を覆うように展開された透明なドーム型の結界に、魔導砲弾が次々と激突する。

しかし、結界は揺らぐことすらなく、その物理的エネルギーと魔法エネルギーを完全に相殺――いや、そのまま百八十度反転させて、撃ち放った海賊艦隊へと跳ね返した。


「な、なんだとォォォッ!?」

海賊船長が絶叫する暇もなく、跳ね返された砲弾が海賊船の周囲で大爆発を引き起こす。

ドッカーーーーーンッ!!

巨大な水柱が何本も立ち上り、海賊船の陣形は一瞬にして崩壊した。

船体が大きく傾き、海賊たちが次々と冷たい海へと投げ出されていく。


「さて、商品(海賊船)を無駄に壊すわけにはいかないからな。そろそろ『回収作業』に入ろうか」

トウヤは船首に立ち、荒れ狂う海に向けて膨大な魔力を解放した。

すべての属性魔法を極めた万能商人の力が、大自然の摂理すらも書き換えていく。


「『水魔法・大渦巻グランド・メイルストロム』」

ゴゴゴゴゴォォォォッ!!

リヴァイアサンの周囲数百メートルの海面が、まるで巨大な洗濯機のように凄まじい勢いで旋回を始めた。

「うわああああっ! 船が、吸い込まれるぅぅぅっ!」

「助けてくれぇぇっ!」

コントロールを失った海賊船は、次々と巨大な渦の中心へと引きずり込まれ、一箇所にギュウギュウに密集させられていく。船同士がぶつかり合い、海賊たちは身動き一つとれなくなる。


「仕上げだ。『超重力領域グラビティ・プリズン』、ならびに『空間魔法・一斉捕獲』」

トウヤが指を鳴らすと、渦の中心に集められた海賊船とその乗組員たちの頭上に、凄まじい重力がのしかかった。

海賊たちは甲板に這いつくばり、完全に無力化される。そして、トウヤが展開した巨大な魔法陣によって、海賊たちは次々と見えない光の縄で縛り上げられ、リヴァイアサンの広大な船倉(アイテムボックスと連結された特別牢)へと転送されていった。


「ふぅ。これで海賊艦隊の制圧は完了だ。彼らは後で、王都とアクアリアを結ぶ新しい港湾施設の『建設作業員』としてたっぷり働いてもらうとしよう」

トウヤは悪魔のように清々しい笑顔で、手をパンパンと払った。

操舵室のカイトは、腰を抜かさんばかりに震えていた。

「あ、あんた……本当に人間なのか……? 一国を落とせる規模の海賊艦隊を、たったの五分で、しかも一人も殺さずに捕獲しちまうなんて……」

「言っただろ、安全第一だって。貴重な労働力を海の藻屑にするなんてもったいないからね」


海賊艦隊という障害を文字通り「一掃」したリヴァイアサンは、大渦巻を解除し、再び静かになった海を滑るように進んでいく。

やがて、前方の濃霧の中に、不気味な形をした巨大な島――黒鮫海賊団の本拠地であり、海竜が封印されている『骸骨島』の全貌が浮かび上がってきた。

島の中央にそびえるドクロの形をした岩山の頂上には、天を突くほどの巨大な「黒い杭」が打ち込まれており、そこから禍々しい紫色の雷が絶え間なく放たれている。


「……あそこです、トウヤ様。あの杭が、海竜様に『呪い』をかけ、狂わせている元凶です。海竜様は、あの山の火口湖に縛り付けられています」

船首のルリアが、悲痛な面持ちで島を指差した。

彼女の耳には、普通の人間には聞こえない海竜の悲痛な叫び声が届いていた。


「よし。ここからはルリアの出番だ。カイト、船を骸骨島に接舷しろ。シルフィ、島に潜伏しているガランド帝国の魔術師どもの位置を割り出せ」

「はっ! 右舷前方の岩場に、黒いローブを着た数十人の部隊を確認! 呪いの杭を守るように陣取っています!」

「やっぱり帝国のお出ましだな。……ルリア、歌の準備はいいか?」

「はい……!」

ルリアは深く息を吸い込み、魔導拡声器の前に立った。


トウヤのインフラ構築の旅は、ついに海の覇権を懸けた決戦の地へと到達した。

死んでもやり直せる『リトライ』の力を持つ青年が、その力を使うまでもなく、完璧な計算と仲間との絆で運命を切り拓く。

絶対安全圏の拡大を阻む帝国の呪いに対し、万能商人とセイレーンの少女の「反撃の歌」が、今、荒れ狂う海に響き渡ろうとしていた。


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【現在のステータス状況】

名前:トウヤ

年齢:18

職業:商人 / 冒険者(ランクS)

レベル:40 (海賊艦隊の完全制圧により大幅上昇)

体力:230/230

魔力:85,000/100,000 (大渦巻・超重力・空間捕獲の連続使用により消費・自動回復中)

固有スキル:『リトライ(発動可能)』

魔法適性:全属性(火・水・風・土・光・闇・時空・無)

取得スキル:鑑定、算術、交渉術、全魔法創造、全武具習熟、気配遮断、錬金、空間把握


【仲間・後援者の状況】

・ミア(獣人の少女):リヴァイアサンの機関室にて、魔導エンジンの出力監視と通信を担当。

・レオン(人間の商人):王都にて、新たに確保した海賊船の売却・解体と、港湾建設の予算を計算中。

・ゴラン(ドワーフの技師):王都の工房にて、魔導船のデータをもとに量産型の設計に着手。

・アルベルト(人間の文官):王都から港湾都市アクアリアの領主に対し、トウヤの活動の正当性を証明する親書を送付。

・シルフィ(エルフの護衛):リヴァイアサンの見張り台から、骸骨島に潜む帝国魔術師の動きを完璧に捕捉。

・ユリウス(人間の元帝国将校):マレ村にて、後続の建設部隊の受け入れ準備を進める。

・フェルス(狐人族の建築家):マレ村にて、港湾都市までの海底トンネルおよび海上橋の設計図を考案中。

・レオンハルト(人間の騎士):王都近衛騎士団を率い、街道の治安維持を徹底。

・カイト(人間の青年):特務輸送艦リヴァイアサンの操舵を任され、その圧倒的な性能に惚れ込んでいる。

・ルリア(セイレーンの少女):船首に立ち、海竜の呪いを解くための「鎮魂の歌」を響かせる準備を完了。

・インフラ状況:王都〜マレ村間「絶対安全街道」稼働。特務輸送艦リヴァイアサン完成・実戦投入。

・資金:金貨6500枚(海賊船団の拿捕により莫大な資産を獲得)

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