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相棒が現代の乗り物に変形できる【万乗ビークル】でした!~剣と魔法の異世界で、今日は何に乗ってどこへ行く?~  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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最終話 SPチケット


「ごめん、マーテル。実はひとつだけ教えてなかった切り札があるんだ」


「……ソウタ?」


 マーテルには異世界のことやノアの能力のことについて説明したけれど、チケットのことだけは教えていなかった。戦闘能力のない俺にとってはこの危険な異世界で生きていくための最後の生命線だからな。


 前回戦車のお試しチケットを使った時は今後のことや俺とノアのことがバレることを気にして使用を迷ったが、今回はまったく迷いはない。


「だけどこれを使ってどうなるかは俺にもわからないんだ。これが駄目だったら俺もすぐに逃げる」


 格好いいことを言ったあとにすぐさま格好悪いことを言うのはある意味俺らしい。


 とはいえ俺にも本当になにが起こるかわからない。まだ相当な数が残っているスタンピードを戦闘ヘリで5分以内に殲滅することは不可能だろう。


 それならばその状況に必要な乗り物へ変形できるというSPチケットにすべてを賭ける。ほとんど倒せなくてチケットが無駄になる可能性もゼロではないが、俺はノアを信じる!


「ノア、SPチケットを使う!」


『承知しました、【SPチケット】を使用します』


 SPチケットを使うとノアの身体が光り輝く。いつもよりも大きな光で金色に輝いているのはSPチケットだからなのだろう。


「へっ?」


「ソ、ソウタ!?」


 そしてなぜか俺の身体がノアの光り輝く身体へと吸い込まれた。眩しい金色の光が俺を包み込む。


 いったいなにが起こっているんだ!?


「なっ、なんじゃこりゃ!!」


『変形が完了しました。現在の状況に適した【巨大ロボット】に変形したようです』


 俺の視界の先には元の世界のアニメなんかで見たことがある様々なレバーやスイッチなどが手元に並んでいるコクピットがあった。そして前面には巨大なモニターがあり、そこから周囲の状況が見える。


 自身の全体の姿は見えないが、両手と両足はまさにロボットだった。


「……いや、確かにロボットは乗り物だけれど、実在する乗り物以外もあるのかよ!」


 スタンピードの魔物の大きさがまるでハムスターくらいに見えるから全長は20メートルを超えているだろう。


 万乗ビークルの能力やリストを見た時は元の世界に実在する乗り物だけだと思っていたけれど、そんなことはないらしい。これならアニメに出てくる某戦艦型宇宙船とかなんでもありじゃないのか?


『マスター、時間は5分しかありません。魔物を殲滅しましょう!』


「そうだった。頼むぞ、ノア!」


『承知しました』


 思わずツッコんでしまったが、今はそんな暇はない。この5分間でスタンピードを殲滅せねば!


 もちろん俺は巨大ロボットの操縦方法などわからないが、ノアが動かしてくれる。


「うわっ、めちゃくちゃだ……」


 巨大なロボットは歩くだけでスタンピードの魔物を踏み潰し、手を地面に叩きつけるだけで何体もの魔物を屠る。肩や指先からミサイルのような兵器が飛び出し、あちこちに土埃が舞う。


 スタンピードの魔物もこの巨大なロボットを敵と見定めて攻撃を仕掛けてくるが傷ひとつ付いていない。本来ならば圧倒的な戦力差の前に降参するか撤退するかだと思うのだが、凶暴になったスタンピードの魔物はどれだけ仲間がやられてもひたすらに巨大ロボットへ立ち向かってくる。5分しかないので、逃げずに向こうからくるのはある意味助かるが。


「あまりにも圧倒的過ぎるな」


『はい、戦闘能力の差は歴然のようです。ですが問題は時間のほうです。残り時間は2分となります』


「くっ、もう3分も経ったのか!」


 某汎用人型決戦兵器のように活動限界のタイムリミットは表示されないが、すでに3分も経過してしまった。まだスタンピードは残っている。


『マスター、この巨大ロボットの能力は【ビームキャノン】となります。この巨大ロボットの行動エネルギーを使用し、強力なビーム攻撃を放てるようです』


「おおっ、すごい! どうせSPチケットは5分間だけだ。残り30秒になったら残りの全エネルギーを使ってそいつを撃ってくれ!」


『承知しました』


 男心をくすぐる必殺技にテンションが上がる。そうだよな、巨大ロボットと言えばビームである。このSPチケットさんはわかっているな!


『残り30秒まであと5、4、3、2、1……発射します!』


「いけえええ!」


 巨大ロボットの胸に光が収束していき、そこから純白の閃光が発射される。そのビームは触れた魔物たちを塵ひとつ残さず蒸発させていき、爆発すら起こさせない圧倒的な熱量が、魔物の強固な外殻や魔物たちが立っていた大地さえも一瞬で虚空へと消し去った。


 巨大ロボットがぐるりと半周し、周囲を取り囲んでいた魔物を殲滅したあとはまだ奥の方にいる魔物を消し飛ばす。視界が真っ白に塗りつぶされたあと。光の余韻が収まった戦場には、ロボットを中心とした地面のクレーターが残る。そしてそのクレーターは森の奥まで続いていた。森の一部も完全に消失している。


『レーダーに反応なし。完全に敵を殲滅したようです』


「………………」


 スタンピードは完全に消滅した。


 だけどあまりにも圧倒的な力に喜びが沸き上がるよりも若干引いてしまった……。森の一部も消し去ってしまったし、やりすぎな気がしなくもない。


「「「おおおおおお!」」」


 だが、そう思っていたのは俺だけのようで、背後の街からは大きな歓声が沸き起こった。


 うん、SPチケットは使ってしまったが、被害もほとんどなく街や里を守れたのでよしとしよう。あとの問題はこの後始末だよなあ……。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「本当にもう行ってしまうのか? もっといてもらっても構わんのじゃぞ」


「ありがとうございます。でも新しい道を進んでいかなければなりませんので」


 スタンピードとの戦闘から2日後。エルフの里の入り口へみんなが見送りに来てくれている。


 戦いのあとは街の人たちから取り囲まれそうになったが、長老さんたちやソルガさんたちの計らいで、逃げるようにエルフの里へと戻って来た。そして再び一人も犠牲になることなくスタンピードを撃退したお祝いに宴が開かれた。


 秘蔵のお酒を開けてくれたりと先日の宴会以上に豪勢な宴会だったな。2日間続けての宴会はとても楽しかったのだが、いい加減に先を進まなければな。新しく救急車を得たことで、ついに念願だった戦闘用の乗り物である戦車が出てくれたが、取得に必要な走行ポイントは1000ポイントだった。


 1000キロメートルといえば東京から北海道くらいの距離だぞ……。とはいえ、SPチケットを使用してしまった今、早く戦闘用の乗り物が欲しいことは事実だ。先日のようなスタンピードなどという危険な現象もあるわけだしな。いずれは巨大ロボットにも変形できるようになってほしいけれど、あれはあれで強力過ぎるから難しいところだよなあ。


「うむ、今度は妾がソウタとノアを守るのじゃ!」


 そしてマーテルも予定通り俺たちと一緒に来てくれる。


 先日あれほど驚異的な兵器を使ったにもかかわらず、変わらずについて来てくれると言ってくれたマーテルには感謝している。


「気を付けてね、マーテル。たまには里へ帰ってきなさいよ」


「う~む、やはりマーテルだけでは心配だ! ここは私もついていこう!」


「父上はついてこなくていいのじゃ」


「ぐはっ……」


 ちなみにこのやりとりは昨日もやった。あまりにもマーテルを心配し過ぎて、バーロルさんも旅に同行したいと言われたが、マーテルが全力で断っていた。……正直俺もちょっと困るから助かったよ。


「ソウタ殿、ノア殿、この度は本当にありがとうございました。またいつでも来てくだされ」


「はい、俺の方こそこんなにいろいろともらってしまってありがとうございます。ぜひまたお邪魔させてもらいます」


 スタンピード殲滅のお礼と遊具のお礼ということで、結構な大金と様々な魔道具をもらってしまった。後日ベルバルの街からも報奨金がもらえるらしいが、その先払いも含まれている。


 本来ならばスタンピードの魔物の素材なんかも結構な額になるらしかったが、巨大ロボットの攻撃ですべて蒸発してしまったからな。とはいえ、あれだけの規模のスタンピードに対して被害がないことをみんな喜んでいたが。


 これで当分の間はお金を気にすることなく旅ができそうだ。ノアが戦車へ変形できるようになるまではもらった魔道具でしのぐとしよう。


「それではまた!」


『みなさん、ありがとうございました』


「行ってくるのじゃ!」


「うむ。また来てくだされ!」


「ソウタさん、ノアさん、いろいろとありがとうございました!」


「マーテル、またね!」


 エルフの里のみんなの見送りを受けて俺たちは出発する。


 スタンピードを無事に追い払うことができたが、これでSPチケットは使ってしまった。とはいえ、いずれノアはあの巨大ロボのような乗り物にも変形できるようになるらしい。


 SPチケットはお試しチケットと違うということは、何らかの条件を満たせばまた新たに手に入れることができるかもしれない。どちらにせよ早いところ走行ポイントを稼ぎたいところだな。


 エルフの里には元の世界では見たことのない美しい光景があったし、とてもおいしい料理をご馳走になった。この世界にはまだ見ぬ様々なものがあるのだろう。さあ、次はどこへ行こう!


――――――――――――――――――――――


 ここまでこの作品を読んでいただきましてありがとうございます。


 まだ先のある内容ですが、こちらの物語は一旦ここまでとなります。最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございましたm(_ _)m



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― 新着の感想 ―
ふ~む、思ったよりも早くに俺たたエンド(俺たちの戦いはまだまだ続く……みたいな)でしたなー 船や飛行機に変形出来るようになるかどうか気になってましたが(運転的な意味で、でも巨大ロボを操縦しなくても動…
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