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異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。  作者: 暁月ライト


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磨り減る闘気

 爆散したレッドマンの巨腕。弾け飛ぶ肉片達はその瞬間に白炎を宿す鋼鉄よりも硬い骨へと変化し、四方八方へと飛散した。当然、その近くに居た御日と七里はその範囲内だった。


「ッ、後を頼むッ!」


 それを察知した七里は目を見開き、咄嗟に叫んだ。そのまま七里は空を蹴って御日の前に飛び出し、闘気を込めた大剣を思い切り振り上げた。

 それによって、正面から迫る骨の殆どを吹き飛ばし、後ろの御日も同時に守った。


「天日流、乱陽三昧」


 そして、思い切り大剣を振り上げた七里へと迫る無数の肉の触手。それを後ろから飛び出した御日が刀を振るい、花弁を足場にその場で全てを斬り裂いていく。一歩も動くことなく凄まじい速度で振るわれる刀は赤い光を四方八方へと放ち、太陽のように見る者の目を焼く。


『良く凌いだって褒めてやるよ。だけどな……』


 ビルを超える背を持つレッドマンが醜悪な笑みを浮かべ、既に再生した片腕を天に伸ばした。すると、ここら一帯を囲むように地面から巨大な肉の触手が生え伸び、空の高みで結ばれて巨大な檻となった。更に、触手と触手の隙間を埋めるように肉が裂けて平べったい肉が伸び、繋がっていき壁となる。


『もう、逃げ場は何処にもね~よ。勝ち目も、な?』


 そうして、完成したのは巨大な半球状の肉の壁。逃げ場は何処にもなく、この肉のドームは転移の術すらも阻害する結界として作用している。


『既にちょろちょろ逃げ出した奴らは居るみたいだけどよぉ、残った奴らは一人足りとも逃がさねぇって訳。言っとくが、この結界内の温度はどんどん上がっていくぜ? 蒸し焼きで死ぬか、潰されて死ぬか、好きな方を選びな~?』


 余裕綽々で笑い声を上げるレッドマン。結界内の人間は、詰まる所逃げていなかった人間は、七里と御日を含めてもたったの七人。その内、レッドマンに対抗出来る能力を持つ人間はおよそ三人と言ったところだろう。


「クソッタレが……」


 地面に着地した七里は、真っ赤に染まった空を見上げて悪態を吐く。


「どうしよう」


 隣に着地した御日も困ったように眉を下げ、そう呟いた。巫女としての力で引き出せる神力は、無限ではない。既に力は底をつきかけており、闘気ですらも限界が近かった。


『おいおい、どうしたよ? 動かねぇってんならこっちから行っちまうぜ~!?』


 レッドマンのその言葉と同時に、肉の結界のあらゆる場所から触手が伸びる。偽りなしに逃げ場なく迫る触手達は、道中でビルを薙ぎ倒し、貫きながらハンター達へと近付いて行く。


「来るぞ」


「天日流、赤鴉の舞」


 御日は四枚の黒い花弁と共に舞い、迫る圧倒的な量の触手の全てを捌き始めた。その御日と背中合わせの形になった七里は、可能な限り多くの触手を一撃で纏めて吹き飛ばし、自分たちの身を守ろうとする。


『ん~、一人脱落。あ、もう一人死んだな』


 絶望的なアナウンスが響くにつれて、向かってくる触手の量は増えていく。当然だ、狙うべき敵が減る度に、残った敵に向かわせられる触手の量は増えるのだから。

 結界の維持の為にその場から動けないレッドマンだが、その攻撃の密度は圧倒的に高まっている。


「くッ……!」


 御日に向かう触手から庇おうと無理をした七里の身が斬り裂かれ、白い炎が燃え移る。何とか闘気を噴出し、その炎を追い払う七里だが、一度バランスを崩した影響は大きく、その後の触手も次々と七里を斬り裂き、貫いていく。


「がぁああああああああッッ!!!」


 燃える闘気が触手を吹き飛ばし、何とか御日の背には届かせない七里。しかし、既に闘気と神力が尽きかけており、全ての触手を斬り落とせている訳では無い御日の方からは容赦なく触手が伸び、七里の背は幾度も貫かれる。


「まだッ、だ……ッ!」


「ッ」


 それでも尚、闘志を燃やし続ける七里。その様子に心配から一瞬意識を向けてしまった御日の腕から、一閃の血が迸った。


「くッ」


「嬢ちゃんッ!!」


 続けて足が斬り裂かれる御日。白い炎が燃え移り、苦悶の表情を浮かべる御日に、七里が一瞬振り返りながら叫ぶ。その肩を、また触手が貫いた。


『ギャハハハハハハハッ、もう終わりなんだよクソ雑魚共がッ!! 逃げ場はねぇし、耐えられもしねぇッ! 助けも来ねぇッ!!』


「くッ」


「がァッ」


 傷が増える。体が焼けていく。闘気は磨り減るばかりで、逃げ場も無い。活路は、どこにもない。


『ヒヒッ、ギャハハハハッ!! 楽しいなぁ? 触手の物量に潰される屑共を見んのはさぁッ!? ほら、あとどんくらいで死ぬ~? 十秒くらいはかかるかな!?』


「ッ」


 御日に、真っ直ぐ触手が迫る。刀を振った後、それは避けることも防ぐことも斬ることも出来ない死の触手だった。花弁も遠く、間に合わない。だが、それを認識したところで御日にはどうする術もない。


「ぁ」


 少しでも時間を先延ばしにしようと後ろに体を倒していく御日の懐から、読めない文字が細かく書かれた小さな細長い紙が飛び出した。

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