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勘違い転生者の無自覚冒険譚  作者: ルーニャ
第1章 異世界からの来訪者
2/18

勘違い高校生は女神に出会う

ストーリーの進捗の無さに作者が1番驚いております。

次回はようやく異世界です。

なお、今回はほぼ説明回となっております。

主人公の活躍だけを見たい方は飛ばしても大丈夫です。

この物語の設定も知りたい方は是非読んでいただければと思います。

 そこは何もない空間だった。


 生物どころか、空も地面も、空気もない。


 光すらなくただただ真っ暗な空間だった。



(俺は死んだのか……?)



 身体の感覚すらなく、地面がないというのに浮遊感すら感じない。



(不思議な感覚だなぁ……それにしてもここはどこだろう?死後の世界……ってやつなのかな)



 星矢がそんなことを考えていると、突然何かに引っ張られるような感覚に陥る。



(うわっ!?)



 それと同時に先程まで何もなかった空間に星空のように無数の光が浮かんでいることに気がついた。


 大小様々なその光は川のように一筋の流れを作っていき、星矢の周りを(まわ)り始めた。



(なんかイワシの群れみたいだなぁ)



 こんな奇妙な状況でありながらも、相変わらず危機感のない緩い脳内だった。


 星矢の周りを廻っていた光はだんだんと数を増していく。




 遂には、視界が光に満たされた。




 しばらく何も見えない状態が続く。


 いつの間にか、先程まで感じていた引っ張られるような感覚が無くなっていることに気が付く。


 そして――――



 目の前に美女が浮かんでいた。



 腰まで伸びるクリアな青緑色の流れるような髪。

 透き通るような白くきめ細やかな肌。

 鮮やかなエメラルドグリーンの瞳。

 淡い桜色のふわりとした唇。


 その相貌はまるで人形のように整っていて、その躰(からだ)は触れれば折れてしまいそうな、手を伸ばせば消えてしまうような、そんな儚い印象を抱かせた。


 そんな印象とは裏腹にその瞳は力強く、かつ優しく星矢を見つめていた。




 言葉が出なかった。


 思考が停止していた。


 そのあまりの美しさに、目の前にいるにも関わらず非現実的な美しさを持つ彼女に、星矢は目を奪われていた。



「….…やっと、気が付いたのね」



 優しい声だった。



「それにしても、見知らぬ男の子を助けるために道路に飛び出すなんて、稀に見る博愛心を持っているのね。驚いたわ」


「っ!!そういえば……俺は、死んだん……だよな?」



 彼女の言葉に死ぬ間際の記憶が蘇る。



「えぇ。残念だけれど、あなたは交通事故でその命を落としたわ」


「じゃあ、ここは死後の世界で、あなたは……」


「私はフェインラミナス。ここの管理をしているの。そしてここは…世界間の狭間よ。魂だけとなった存在が時折迷い込んでくる場所なの。今回は私があなたを呼び寄せたのよ」



 先程の引っ張られるような感覚は、彼女に呼び寄せられた時のものだったようだ。



「そういえば……あの男の子は、無事だったのでしょうか?」


「ええ。安心して。あなたの行動は無駄ではなかったわ」


「そうですか。良かった」


「それは良いのだけれど、自分の現状や今後の事より真っ先に助けた子供の心配をするなんて、本当に心が綺麗なのね」


「そんなことは無いですよ。ただ、死んだ後にあれこれ考えてもどうしようもないじゃないですか」


「それは、なんというか、えらく割り切ってるわね……」


「そうでしょうか…?」


「まあいいわ。それより私がここにあなたを呼び寄せた理由についてなんだけど、あなたの魂が少しの穢れもなく澄んでいたからよ」


「……よく分からないのですが、ここに呼び寄せられたことと、俺の魂になんの関係が……?」


「あぁ、ごめんなさい。少し言葉足らずだったわね。魂というのはその人の本質が如実に現れるの。そして、魂に穢れが一切なく澄んでいるということは、とても誠実で心が綺麗ということと一緒なのよ」


「俺そんな聖人みたいな人間じゃないんですが」


「そんなあなたをここへ呼んだのはあなたに手伝って欲しいことがあったからなの。さっきここは世界間の狭間と言ったのを覚えているかしら。ここは世界と世界を渡るための渡し船の役割も担っていて、あなたにはここから異世界に行ってほしいの。そして渡った先の異世界で問題を起こされても困るから、あなたのような心の綺麗な人を探していた。というわけなのよ」



 少し言葉足らずどころか、かなり説明不足ではないだろうか。


 そしてナチュラルにスルーされた星矢はめちゃくちゃ落ち込んでいた。



「……とりあえず、分かりました。それにしても異世界……本当にあるんですね」



 いつまでも落ち込んでいるわけにもいかないため、星矢はスルーされたことは気にしないように努めて会話を続けた。



「驚いた?」


「ええ、空想上のものだと思ってましたから。それで俺は異世界で一体何をすれば良いのでしょう?」


「特に何も?」


「……はい?」



 すでに星矢の中で出会ったばかりの時の彼女に対する神々しいイメージは崩れ去っていた。寧ろかなりコミュニケーション能力に難があるのではないか。と当初とは真逆の意味で近寄りがたい印象を抱いてしまっていた。



「あなたにして欲しいのは、異世界に行く。それだけよ。強いていうなら色々な土地を旅して欲しいといったところね。というのも、あなたが異世界に行くことで私の目的はほとんど達成されるの。だからあなたは異世界に行って第二を人生を存分に謳歌するだけで良いのよ。もちろん危険はたくさんあるけれど、生き残る為の力はちゃんと授けるつもりだわ」



 色々と疑問は残るが、そういうことであればお言葉に甘えて異世界を楽しもう。前世はたった17年しか生きられなかったのだ。今度はもっと長生きしたい。



 そう思い、星矢は異世界に行くことを決意した。




 ―――――――





「それで、早速力を授けようと思うんだけど、どんなのが欲しい?」


「どんなのって…具体的にどのような力が貰えるんですか?それにどのくらい強い力が手に入るかも分かりませんし、そもそも今から行く異世界がどんなところかも俺は知らないんですよ?」


「そういえば説明がまだだったわね。今から行ってもらうのはみんな大好き剣と魔法の世界よ」


「魔法!!!あるんですね!異世界といえばやっぱり魔法!〜〜っ!!楽しみ!」



 魔法。現代を生きる日本人ならば興奮してしまうのも仕方ないだろう。特に星矢は17歳だ。そう言ったものの憧れが最も強い年齢なのだから、その感動もひとしおだった。



「喜ぶのはまだ早いわよ。魔法があると言っても誰でも使えるわけじゃないもの。それに使うのにも色々制限があるからね」


「そうなんですか……俺は使えるようになりますかね?」


「訓練すれば使えるようにはなるはずよ。それに、魔法と同じような効果が得られる魔法具というものも普及しているから、心配しなくて良いと思うわ」


「へぇ。……あれ、でも誰でも使えるわけじゃないって…」


「才能と努力次第ね。あまりにもセンスがないと一生かけて使えるかどうかだもの」


「殺生な……才能がなければ使えないも同然じゃないですか」


「そういうことね。魔法についてはこのくらいかしら?あとは現地で詳しく調べて頂戴。あとはそうね。文明レベルとしては江戸時代くらいかしら?科学が発達していないかわりに魔法が発達しているから、現代と比べても便利な部分や不便な部分が色々あると思うわ。移動に関しては基本的に徒歩か馬車か転移魔法だもの」


「転移魔法があるのに徒歩や馬車の人がいるんですか?」


「転移魔法はすごく高度な魔法なのよ。使える人は魔法を専門にしている人の中でもごく一部のみよ。よっぽどの才能と努力がない限り使えないわね」


「なんか魔法を使えるようになっても使いこなせる気がしないんですけど……」



 星矢は想像していたよりも遥かに高いハードルに不安が込み上げてくる。



「そのために今から力を授けるのよ。あなたが魔法を使いこなせるようになりたければそれ相応の知恵と技術と魔力を与えることが出来るの」


「……!そうでしたね。諦めるにはまだ早いですね!」



 フェインラミナスの励ましに萎みかけていた興奮がまた戻ってきた。



「さあ、あなたはどんな自分になりたい?容姿も才能も知恵も、今ならあなたの望むとおりに与えることが出来るわ。もちろん限界はあるけれど」


「じゃあ転移魔法やアイテムボックス、鑑定などを使えるようになりたいです」



 星矢はとりあえず異世界転生モノで、ある種王道とも言える能力を要求した。


 これらの能力があれば、それだけで一目置かれるというのは様々な物語で共通している。人からチヤホヤされたい星矢がそれを望むのも当然だった。



「転移魔法やアイテムボックスね。どちらも似たような系統の魔法だから大丈夫よ。ただ、使えるようになるためにはそれ相応の努力が必要よ。忘れないで」


「すぐに使えるわけじゃないんですね……頑張ります」


「あとは鑑定技能ね。申し訳ないのだけれどこれは難しいわ。ゲームの世界じゃないからね、ステータスなんてものも当然ないわ」


「そうですか……」



 異世界転生という非現実的なことを今からするというのに、妙なところで現実的だった。



「こればっかりは仕方ないわね。でも、相手がどのくらい強いかは分かるようになるかもしれないわ。一流の剣士は構えただけで相手の実力を測れるとも言われてるし」



 星矢は先程までただの高校生だった。自分がそれほどの実力を身につけられるとは到底思えず、星矢は落胆した。



「ま、鑑定は使えなくてもあなたの魂はかなり大きいから素晴らしい才能の持ち主になれるわよ」


「……?どういうことでしょう?」


「あら?説明してなかったかしら?あなたの魂はすごく大きいの」


「……つまり?」



 いきなり魂がどうとか言われても理解できるわけもない。



「簡単に言うと、魂が大きいとその分才能に恵まれるのよ」


「俺、前世ではそんなに才能あったわけでもないんですが」


「……ほんとね。魂が空っぽだわ。あなたがよっぽど神に嫌われてたか、そもそも管理が適当だったのかもね。知らないけど」



 なんとも身も蓋もない言い方である。



「でも本当にすごいのよ?あなたの魂は今から行く世界の人間とは比べものにならない大きさなの」


「そうなんですか?」


「大体百倍くらいかしら?」


「ひゃ……っ!?」



 もし日本でその才能を持っていたら、

 他の人よりも百倍抜きん出ていたとしたら、

 類稀(たぐいまれ)なる身体能力を持ち合わせていたら、

 もしかしたら、自分はまだ生きていたかもしれない。そんなことを、考えずにはいられなかった。



「前世では恵まれなかったかもしれないけど、今度は安心して。あなたが才能を発揮できるように、私が能力を授けるの」



 星矢は戦慄した。

 理解したのだ。今の自分の想像が、これから現実になろうとしているのだと。


 星矢にもう不安は無かった。むしろ、これからの異世界生活が楽しみで仕方がなかった。



(俺は、死なないくらい強くなる)


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