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勘違い転生者の無自覚冒険譚  作者: ルーニャ
第1章 異世界からの来訪者
1/18

勘違い主人公は日常を過ごす

今回は主人公の人となりの紹介がメインです。

異世界に行くのは次話以降となります。


※追記

あらすじの回収は結構先になります。

楽しみにしてくださっている方はしばらく我慢していただくことになると思います。

 結論から言おう。


 彼は、速水(はやみ) 星矢(せいや)はナルシストである。


 それも、隠れナルシストである。


 しかし残念なことに、周囲からは全てバレている。

 彼がナルシストであることも。それを隠せていると思っていることも。






 ―――――――――――――――





「うん。今日もなかなかイケてるんじゃないか?」


 鏡の前で髪を整えた後、そう呟いたのはこの物語の主人公、速水 星矢だ。



 身長は平均的。若さゆえか、程よく身が引き締まっていて健康的な印象を抱かせる。顔は中の上といったところか。突出して良くもなく、だからといって悪いわけでもない。


 だが、本人は自分がイケメンだと思っている。



 それが速水 星矢という人物だ。



 今日は月曜日。週末の休みの後、ほんの少し憂鬱な気分になりながら学生たちが登校する日である。


 しかし星矢は、この日を楽しみにしていたかのように意気揚々と家を出る。


 なにしろ、自分がイケメンの部類に入っていると思っている星矢である。

 ――学校に行けば、思わず自分に見惚れてしまう女生徒が多くいる。休日に家でゴロゴロしているより、学校で羨望と情景の眼差しに包まれた方がよっぽど幸せだ。――

 と、そのようなことを考えているのだろう。



 上機嫌で通学路を歩く星矢に誰かが声をかけた。



「おはよう!星矢。今日も元気だねっ」


「ん?おお、おはよう聖奈」



 彼女は浦内(うらうち) 聖奈(せいな)。幼稚園の頃、名前が似ているから、という理由で仲良くなり高校生になる今までずっと一緒にいる星矢の幼馴染だ。



「にしても星矢。やっぱり月曜はご機嫌だね」


「そりゃまあ、月曜日だからな?」


「ふふっ。星矢らしいね」

(学校だとみんなの視線を集めるから幸せ!とか思ってるんだろうなぁ)



 幼稚園からの付き合いがある聖奈だ。もちろん、星矢がナルシストであることも気付いている。

 だがそれを本人に伝えたりはしない。本人が隠せているつもりなのだから、何も言わないという彼女の優しさである。





 そんな会話をしているうちに学校に着いた。

 教室に入り、席に座る。


 その間星矢は、



(女の子が俺の事をチラチラ見てくる気がする…!

昔は自分の顔に自信無かったけど、髪型と服装整えて鏡で見てみたらかっこよかったしなぁ。実は俺イケメンかも?って気付いた時は嬉しかったなぁ……。それにしては未だに誰からも告白されないけど、みんな奥手なのかな?)



 愛すべき馬鹿とはこういう人物の事を言うのであろう。実に能天気な脳内である。


 さて、そんな星矢だが、別にナルシストだからといって変に気取ったりはしていない。というのも、あからさまなナルシストはあまり好まれないということは知っているからだ。


 だからナルシストであることを隠そうとするし、好意を向けられても――実際に好意を向けられてるかどうかはさて置き――気付かないフリをする。


 だからこそだろう。星矢は周囲から生暖かい視線を向けられることはあっても、嫌われたりはしていない。


 そんな星矢だ。友人は多く、学校生活も充実していた。





 一日の授業が終わり、帰る時間となった。



「じゃあな!星矢!」


「おう!ばいばい!」



「速水くんおつかれ〜。またね」


「おつかれ。ばいばい」



 教室を出る友人たちと別れの挨拶を交わす。


 星矢はいつも幼馴染である聖奈と帰っている。


 だから今日も聖奈の準備が終わるのを待っていた。


 そこで聖奈から声がかかる。



「あ、星矢〜。さっき先生に呼ばれちゃってさ、先に帰ってもいいよ」


「ん?そのくらいなら別に待つぞ?」


「んー。でも長くなりそうだったから、待たせるのも悪いし先に帰ってて?」


「そうか。ならお先に失礼するか。暗くなりそうだけど大丈夫か?」


「うん。それなら大丈夫。一緒に呼ばれた友達と帰るつもりだから」


「なら大丈夫そうだな。じゃ、聖奈ばいばい」


「うん。ばいばーい」



 そうして学校を出て帰路に就く。


 信号待ちをしている間、ふと思う。



(一人で帰るのって久しぶりだなぁ)



 そこで、気が付いた。隣で信号待ちをしている男子小学生が横断歩道の先の何かを見ている。


 なんだろう。そう疑問に思い視線の先を辿る。



 猫が居た。黒猫だ。その猫はジッとこちら見つめていたかと思うとフッと背を向けた。


 その瞬間――



 隣に居た男の子が猫に向かって走り出した。おおかた、猫に逃げられるとでも思ったのだろう。 



(はぁ!?まだ赤信号だぞ!?)



 咄嗟に身体が動いた。ほぼ無意識の行動に近かった。


 男の子を助けようと手を伸ばす。


 かろうじて男の子が背負っていたランドセルに手が届き、そのままグッと引き寄せる。


 その反動で、星矢は道に乗り出してしまった。


 迫ってくる車は黒いバンだった。



 そして―――



 速水 星矢は、17歳という若さでその命を落とした。

聖奈の出番はここで終了です(多分)


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