2月12日:チョコぱん 2
「あ、真由ちゃん。こんにちは。」
真由の気持ちも露知らず、にこやかに微笑む優斗。
「…。」
優斗をにらみつける真由。
「も、もしかして怒ってる?」
戸惑った様子の優斗。
「…。」
それでも真由は無言。
なんで話しかけるの…?
真由はうつむいた。
「えっと、どうして…かな?」
優斗は真由をの表情を確かめるように中腰になる。
「…自分の手に胸を当てて考えればっ!」
真由は泣きそうで、顔は真っ赤だった。
そして自分の言い間違えに気がつかない。
『手に胸』ではなく、『胸に手』である。
「…。」
それに気がついた優斗は黙り込む。
そして小さく微笑む。
さも愛しげに真由を見つめる。
そして何事もなかったように『胸に手』を当てる。
「えっと…?」
「…。」
真由は今にも涙があふれそうだ。
下唇を強くかんで、こらえている。
「もしかして、昨日、無視したこと?」
優斗の心当たりはただ一つ。
そして優斗は嬉しそうに笑う。
「…なっ、なんで、なんで笑うのよぉ…。」
とうとう真由は一筋の涙を流した。
「だって…、真由ちゃん、僕のこと気にしてくれてるよね?」
にくらしいくらいに真っ直ぐな優斗の笑顔。
「!」
真由は目を見開く。
「一瞬でも、真由ちゃんが僕のこと考えてくれてるのが、すごく嬉しいんだ。
…無視して、ごめんね。」
どこまでも偽りのない優斗の言葉。
そのことは真由にも当然分かった。
「だ、誰がっ!アンタのことなんて気にしてっ…!」
優斗くんが、冗談で告白したんじゃないって、分かってる。
…けどっ!!
自信がない。
泣き顔なんて見られたくない。
真由は優斗から逃げるようにかけて、階段を上りかけた。
「真由ちゃん!」
中段で優斗が真由を呼ぶ。
「なっ、…!?」
声と同時に投げられたもの。
「そのパン、好きなんでしょ?」
投げられたのは、真由の大好きな『チョコぱん』
「…。」
思わず優斗を見てぼーっとしてしまう真由。
「やっぱりチョコなんだね…。」
ぽつりとつぶやく優斗。
「…この前言ったとおり、真由ちゃんのこと、本当に好きだから。
そのパン食べて、機嫌直して。」
優斗はひらひらと笑顔で手を振った。
まさに皇室さながらの振り具合。
真由は振り返さずに階段を上った。




