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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.2.0 武士道とゲーマー魂の相乗効果

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488.匂わせは乙女の嗜み

『お芝居そのものは多少なりとも知っているつもりでしたが……撮影となるとこのような流れになるのですね』

「うん。撮る時点では、全体の流れはなかなかわかりづらいでしょ」


 ちょうど今日でクランクアップとなったドラマ撮影の帰り、見学についてきていたアメリアはどうやら興味深そうな様子だった。相も変わらず、学びの尽きないお姫様である。こういうところは学ばないといけない。

 ただ、割とこれは納得のいくものではあった。興味を持つ理由がわかる、というか。どうして今更そんなものに、とはならない。


 幻双界にテレビドラマはない。そもそもテレビ放送という概念そのものがなくて、撮影した映像の運用は基本的に一部の超越者たちによる活用にとどまる。これは記録媒体がかなり高価で、なかなか一般に普及し得ないものだからだ。

 ……私たちがしているようなDCO内での配信視聴については、どちらかというとカメラが特殊。あれは綾鳴さんやエルヴィーラさんがかなり頑張って作り上げた、基本的に来訪者の存在が前提となった代物なのだ。なにしろあれ、仕組み的には幻双界で撮る→地球の媒体で記録する→それを幻双界からアクセスして流すというプロセスを踏んでいるから。

 モニターだけなら比較的簡単に作れるそうだけど、記録媒体もないのに流せる映像があるわけがないということだった。


『ええ。まして、普段姉様が行っている配信も、ひとつながりで続けるものですから。完成させた際の順序と別の順で、個別で撮って繋ぎ合わせる手法は新鮮でした』

「少なくとも、舞台演劇では不可能な方法だからね」

『ましてわたくしたちの感覚では、時間というのは一方向であることが前提なのです。それを組み替えつつ作るとなれば、それだけでどうしても混乱してしまいます』


 では新鮮だったのは何かというと、これ。ドラマ撮影ではシーンごとに細かく切って、ときには撮影順も入れ替えたりしながら撮るから。もちろん基本的には時系列順のほうが、役も作りやすくて演じやすいんだけど……まあ、いろいろ事情があるのだ。セットとか、時間帯とか、スケジュールとか。

 それを細切れにして、正しい順に繋ぎ合わせることでようやく意味の通る物語になる、という手法はどうやらアメリアにとってずいぶん目新しいものだったようだ。その根本にはやはり、技術的問題によってお芝居といえば舞台、という幻双界の事実がある。


 不可能だから発達しなかった、あるいは1000年前の前世界から見比べるなら衰退したのは間違いない。その結果として、馴染みがなくなったものはなくて当たり前になった。

 ただ、それが悪いことだと言うつもりはない。何かがなくなれば、代償機能のようにその代わりとなる何かがより発達するものだ。そうして地球にはない、独自の何かが幻双界にはある、もしくは育っていくはずである。


『なるほど、確かに……たとえば、魔術を演出に使ったり、でしょうか』

「そうそう。そんな感じの、こっちじゃできない芸能も私としては気になるな」

『そうですね。専門の者たちにも聞いてみることとしましょうか』


 もしかすると、この瞬間に幻双界の芸能はそのありようを少なからず変えることになったのかも、とは思った。そうしたものがまだないような言い方だったから。

 誰かが考えそうなものだけど、どうやら幻双界はあまり芸能が発展してこなかったらしい。それを考えるところにすら、もしかすると私たちが関わる余地がありそうだった。






 私にとって専門性のある話だからその話は少し深くなったけど、さておき。バレンタインイベント二日前の2月13日木曜日。この日はDCO配信はお休みだ。


「ゆっくりなペースで進んできていますけど、アメリアによるセイサガもいよいよ後半戦ですね」

『徐々に戦力が整ってきている、という印象は受けますね。一部を除いて、盤面も形になりつつあります』


〈撮影お疲れ様〉

〈つばバチャの結末気になる……〉

〈カグヤ良すぎてずるい〉

〈来期のとかもう決まってたり……?〉

〈こっちの定期シリーズも待ってました!〉

〈割と進行度がわかりづらいセイサガでもさすがにことの進み方がわかってきたな〉


 私がDCO配信を休んで楽なことをする日は撮影が多かった日だとは、もうリスナーたちにはバレている。時期的にそろそろクライマックスを撮ったのだろう、ということも推測ができるだろう。……ライバルキャラでありボス的立ち位置ではあるけど、私の役である音皇カグヤも人気が出ているようで嬉しい。

 もちろん、来期についての話はもう進んでいる。役作りも練習もしているところだ。……今度は非VRでのレギュラー役であることは、まだ発表されていないから言わないけど。


 セイサガのストーリーは征服された舞台の奪還でも、魔王の領域への進撃でもない。特に前半は味方の戦力や国内の状況を整えつつ魔王軍のちょっかいを退ける展開が続くから、進捗はやや掴みづらいところがある。

 ただ以前やったハルヴの陥落を境に事態は動き、本格的に王国の存亡を賭けた防衛戦が始まる。今回はそうして王国全体の様相ががらりと変わったところからだ。


『なるほど。進行に合わせて各地の様子を変わると。立ち止まってはいられないことを感じさせてきますね』

「とはいえ、こういうマップ変化イベントの中では比較的大人しいほうではあるかな。凄いタイトルでは、かなりえげつなかったりするし」


 特に勇者を主人公とするようなファンタジーRPGでは、物語の中盤から終盤のどこかしらで冒険の舞台の雰囲気を一気に変える展開は王道だ。それは魔界に乗り込むような積極的なものから、世界が崩壊してそれまでの街も人々も悲惨な姿に変わってしまうものまで様々。

 セイサガの場合、それは「魔王軍の本格侵略開始による戦争状態への突入」の形で表現される。前線に近い街では砦ができたりあちこちで戦闘が起きたり、中には街が壊れかけたり入れなくなる場所ができたりするし、後方でもNPCの会話内容やBGMが変わったりはしている。サブクエストもまた、新しく発生するものも進行不能になるものもあったり。

 これからエンディングまでの間、アズレイア王国は国を守る戦いに身を投じる。そのあちこちに勇者たちがこれまで刻んできた足跡が役立っていたりもして、彼らの後押しを背にプレイヤーもいよいよ魔王軍との直接対決をすることになるのだ。




『会話内容も変化していて、店舗の品揃えも……。とはいえ、自然な変化です』

「この時点で取り返しのつかない取り逃しはないね。開発側から見ても、アメリアはまさしく期待そのままの進め方をしているし」

『それが順当で間違いがないという意味であるなら、胸を撫で下ろすところです。わたくしがこうした場面で大きな失敗をしては、あまり洒落になりませんから』


〈見せてくれる〉

〈とことん理想の実況プレイなんだよな〉

〈スーパー優等生にRPGやらせたらこうなるんだ〉

〈初見だなって場面はあるから作り物感がしないのもいい〉


 ここまでのアメリアのプレイだけど、本当に見事なものだ。大きな見逃しはなく、脇道で時間を使いすぎることもなく、ストーリーの雰囲気とテンポ感を損なわない。省いていいところはある程度省くし、ストーリーの切迫度が高いときにあちこち寄り道して回ったりしない。

 後から取り返しがつく緊急性のないものは遭遇場面によってはいくつか後回しにしているけど、防衛戦突入時に進行フラグが消えてしまうサブクエストは全て回収済だ。一度しか入れないダンジョンマップもきっちり探索しきっている。


 そういう「取り返しのつかない要素」というのはRPGではあるあるだけど、こうして初見のアメリアが取り切れているようにセイサガのそれは親切だ。サブクエストは受注時の会話で「戦いが始まる前に」のような急かす文言が入っているかどうかで判別できるし、一度しか探索できないマップもそういう匂わせがある。不意打ちはしてこないのだ。


「こう見てると、アメリアはやっぱり人の上に立つ器だって思うよ」

『それは姉様も同じでは……』

「これでも夜は私の背中が定位置な13歳なんですよ、この子」

『それは、当然ではありませんか。何をいまさら……』


〈わかる〉

〈動かすのが上手い〉

〈まあ動くのも上手いけど〉

〈わかる〉

〈お嬢も人のこと言える?〉

〈なんて!?〉

〈背中!?!?〉

〈お嬢の背中にくっついて寝てるんですか!!〉

〈はーてぇてぇ;10000〉

〈当然!?!?〉

〈何をいまさらですってよお客さん〉

〈ルヴィアメたすかる;50000〉


 ……こっちは匂わせも不意打ちもあるお姫様。この子ったら、いつの間にか距離感がどんどん近くなって。湿度こそあまりないけど、その分なのかパーソナルスペースもない。際限なく近くなる。

 そして配信画面の向こうには、これで大盛り上がりの皆さん。いやまあ、確かに今のは私が煽ったけどね。

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『Dual Chronicle Online 〜幻双界巡りの物語帳〜』

身内による本作別視点です。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
ルヴィアメも良いけど、 ちゃん様が両親や兄上にほんのり甘えたり(本来及びDCO世界だと従姉妹の)妹ちゃんとキャッキャしてる所を見たいセイサガガチ勢もいそう ……というかお嬢がそうか?
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