迎賓館と洋服
アメリアとカミラ、それにセラフィと屋敷の外に出た俺たちは早速迎賓館の建設予定地に向かう。
既に門から庭園、そして屋敷に向かう小道が出来ていたのだが少々調整が必要そうだった。だが、迎賓館の建設予定地自体は特に問題無いようだ。
「では、皆さん。早速迎賓館を建ててしまいますね! 創造『迎賓館』!」
大きな光の柱が迎賓館の建設予定地に現れると、天を貫くように空へと伸びて行った。ハインツ一家の借家を創造したときとは比べ物にならないほど大きな光の柱の出現に少々驚く……。
屋敷を創造したときの記憶はあまり覚えていないので仕方のないことだ。
少しずつ光の柱が消えると、その跡には俺が創造した迎賓館が現れた。つまり、特に神力不足にもならずに迎賓館を創造することができたわけだ。
「ふむ、やはり問題無く迎賓館を創ることができたようだな。早速中のほうも確認してみよう!」
「「「おう!(はい!)」」」
元気良く応えてくれたアメリアとカミラ、セラフィの三人と共に迎賓館の内部を確認することにした。何かあればすぐに調整を行うつもりだ。
早速玄関から中に入ると、迎賓館は屋敷とは少し異なる構造をしているようで、玄関ホールの正面には階段は無く、廊下が真っ直ぐ壁際にまで伸びており、廊下を挟んで右手には接待用の大ホールへと続く大きな二枚の扉が、反対側には賓客を饗す二つの応接室へと続く扉があった。また、上層階へと繋がる階段は玄関ホールの左手側に用意されている。
この迎賓館だが、もう一つうちの屋敷とは大きく異なる点がある。それは内装の豪華さだ。一応、新米ではあるが貴族になったのだから、同じ貴族や富豪たちに舐められないようにと、王城とユリアンの屋敷を参考に誂えたのだ。
正直、普段遣いでは落ち着かないが、用途が対貴族用と考えれば仕方がない。ただ、こだわりとして、あまり華美になり過ぎないようには気を付けたつもりだ。
応接室と大ホールは廊下を挟んで隣同士だが、もちろん防音処置がそれぞれの部屋に施されているため、それぞれの騒音は聞こえないようにできている。もしも、大ホールで疲れたら応接室に移動すれば気を休めることができるだろう。
大ホール内は所謂ホテルのパーティー会場といった感じで、天井からはシャンデリアがぶら下がり、またスポットライトとこの世界で何に使うのか分からないがプロジェクターとスクリーンまで完備していた。この場で皆に説明するのは面倒なので見なかったことにする。
また、大ホールは庭園に面しており、大きなガラス窓を開けるとそのまま庭園へと繋がることから、庭園のスペースもそのままパーティー会場にすることができる造りとなっている。
地下一階についても考えていた通り、まるで温泉地のホテルのように立派な男女別の大浴場ができており、大浴場の外には涼むスペースと共にウォーターサーバーも完備していた。恐らく前世で俺が社員旅行で行った温泉地のホテルのイメージが強く出たためだろう。
その奥にはコインランドリーのように、洗濯機と乾燥機が幾つも並ぶスペースがあった。うちの屋敷よりも数が多いのは、宿泊客が多くなることを想定しているからだったが、これを活用するにしても、やはり使用人が不足するのではないかと少し焦る……。
気を取り直して二階に上がると、そこは屋敷の三階によく似た造りとなっていた。つまり、個室となる部屋が八つ用意されていた。どの部屋も中のレイアウトは左右反転するものもあったがほぼ同じ。これなら文句を言う者も少ないだろう。
続いて三階に足を踏み入れたのだが、ここは別世界のように金銀による芸術的な細工が施されており、まるで王城にでもきたかのような錯覚を覚えるほどに豪華な造りとなっていた。
ふむ、ゴットフリートの訪問という話を受けたせいか、少々王城のイメージが強く出てしまったみたいだ。っていうか、この部屋を使うことなんて本当にあるのか疑問だが、まぁ、備えあれば憂いなしと言うしな。
「それにしても、こういうお屋敷……。迎賓館だっけ? この中に入ると、『貴族』って感じがするよな!」
「アメリアの言う通り。王城とは違うけれど、何だか特別な世界にいるみたい!」
「しかし、主様。この迎賓館は貴族らしく豪華ではありますが……。主様の服装では浮いてしまっているようです……」
「「確かに!」」
「あぁ、そうか。そういえば、今着ているのは一般的な子供服ですからねぇ。貴族らしい服、やっぱり必要かなぁ?」
「絶対必要! ハルトの貴族姿、絶対に可愛い!」
貴族になったからといって新しい服を用意する必要ってあるのかなぁ、と軽い気持ちで呟いたのだが、カミラが物凄い勢いで反応した。うーん、可愛い、のかね?
「確かに、ハルトなら貴族らしい服装も似合いそうだな!」
「はい! 主様に似合わないわけがありません!」
アメリアとセラフィも貴族らしい服に肯定的だった。ふむ、ならば一通り揃えたほうが良いのかもしれない。
「では、このあと貴族の子供が着る服を買いに行きましょうか。幸い時間はありますし」
「「「賛成!(です!)」」」
ということで、建てたばかりの迎賓館の確認を終えた俺たち四人は一度アサヒナ魔導具店に寄ってヘルミーナに、敷地内に迎賓館を建てたことを伝えてから、貴族御用達として王都でも有名な仕立て屋に足を運ぶことになったのだが……。
「ちょっと待って!? ハルト今何て言ったの?」
「いえ、ですから。国王陛下を始め、御一家をお招きするにあたって、適切な広さの応接室が無かったので、改めて迎賓館を建てたとご報告したのですが……。分かり辛かったでしょうか?」
「そうじゃない! 何で国王陛下が、それも、ほぼ王室全員が揃って屋敷にくることになったのよ!?」
「あれ? この前説明してなかったですかね。申し訳ありません。今度うちの屋敷の警備兵として応募したハインツさん一家の奥さん、つまりこの屋敷の料理人なんですけど、その手料理というかシチューが凄く美味しいっていう話になりまして、私がそれを食べるのが『楽しみだ』って言うと国王陛下が自分も食べたいって言い出したんですよね」
「な、何ですってぇ!?」
お、おう。そういえば、この辺のことはあんまりヘルミーナに話していなかったかもしれない。そう思い出すと、つーっと冷たい汗が背中を腰の辺りまで通り抜けるのだった。
「その話を聞いた時は、国王陛下の冗談だと思ったんですけど、どうも国王陛下は本気のようでしたから……。そうなりますと、うちの屋敷の応接室では国王陛下とその御家族をお招きするには手狭ですよね? ですから、屋敷とは別に国王陛下たちを歓迎するための設備が必要だと思って、それで急遽迎賓館を用意したんですよ」
「なるほどね、本当にどうしてそんなことになるんだか、全く理解ができないんだけれど、ハルトのことだから仕方ないか……。まぁ、良いわ。後で私も迎賓館のことは確認しておくから。それで、ハルトたちはこのあとどうするつもりなの?」
「はい、迎賓館を貴族らしく豪華な内装にしてみたのですが、その反動と言いますか、どうも私の服装が部屋に釣り合わないことが分かりましたので、私も貴族らしい服を用意しようかと思うのですが、どうでしょうか……!?」
「なるほどねぇ。確かに今のハルトの服装だと貴族らしさを感じないし、そういった服も幾つか用意しておいたほうが良いわね。どうせなら、アメリアとカミラ、それにセラフィも。あなたたちも服を仕立てたらどう? アサヒナ男爵家の家臣として他の貴族から侮られないように、服装や装備を整えるのも大事よ?」
「「「なるほど!!!」」」
ふむ、そうか。主人である俺の服装だけでなく、一緒に行動する家臣の服装や装備も確かに重要だ。あまりみすぼらしく見えるような服装をさせていると、貴族が家臣を大事にしていないように捉えられる可能性がある。もちろんそんなことを思われるような服装にさせるつもりはないが。
「では、皆さんの服と装備も一緒に仕立てることにしましょう!」
「それが良いわ。そうそう、仕立て屋なら『クルト洋裁店』が王都の貴族御用達だと聞いたことがあるわよ」
「なるほど、それならまずは『クルト洋裁店』に行ってみます!」
こうして、俺はアメリアとカミラ、セラフィの四人で貴族らしい衣服を求めて王都の仕立て屋へと繰り出した。
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