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やることリストと神力量

 屋敷の敷地について、より高いセキュリティを施した俺は取り急ぎやらなければならないことは全て終えたので、屋敷のリビングでまったりとお茶を飲みながら寛いでいた。


 俺の隣にはセラフィが座り、正面にはアメリアとカミラが寛いでいる。ヘルミーナは、店と屋敷を忙しなく行き来している。流石はアサヒナ魔導具店の店長といったところだろう。ベンノたちと店の開店に向けて色々と準備を進めてくれているようだった。


「うーむ。一応順調ではあるが、何も手伝わないのはオーナーとして気が引けるものがあるなぁ。ただ、店に行ってもあまり役に立たないのも事実だし、邪魔をしに行くような真似は控えたいし、うーん」


 今は、ベンノの指導の下、ティニとビアンカの二人が接客の指導を受けている。


 また、ヘルミーナはカイに錬金術師として回復薬の生成等錬金術の基礎を教えているところだ。そんな中、店に行くのは迷惑になると考えていた。あまり、皆の邪魔になるようなことはしたくはない。


「主様、そんなに落ち着かないのでしたら、図書館にでも行かれてみてはいかがですか? 本を読むことで気を紛らわせることができるかもしれません」


「図書館か。確かにそれも良いかもしれないけれど、今の気分ではないんだよなぁ……。ありがとう、セラフィ。気を遣わせたみたいだね」


「いえ、主様のお顔が優れないようでしたので……。出過ぎた真似を致しました」


「いや、良いんだ。ありがとう」


 セラフィが図書館へ行くことを提案をしてくれたのだが、今のような落ち着かない状態では、落ち着いて本など読むことは難しいと思う。なので、折角の提案だったがセラフィには断ってキッチンにお茶を淹れに向かう。


 まだ主のいないキッチンに入りお湯を沸かしてお茶を淹れると、一人ダイニングの椅子に腰掛けてまったりとしながら、今後やらなければならないこと(やることリスト)の整理をすることにした。


 もうすぐ魔導具店の開店だし、そろそろ商品の準備と在庫の用意をしておかなくちゃいけないよな。


 それからラルフたち、屋敷の使用人の受け入れもそろそろ準備が必要だ。


 それが終わったら、ゴットフリートたちを屋敷に招待しての晩餐会。うーん、本当にザシャの手料理を振る舞うだけ、と言うわけには行かないだろうなぁ。


 それに、そんなに大勢がくる想定で屋敷を創ってないし、屋敷を改造するか……。


 そして最後に獣王国への旅か。旅ってことは多分幾つかの街を経由することになるのだろうけど、野営、即ちキャンプすることもあるだろうし、その辺りの準備も考えないといけない。


 神様サポート室の出張所の件は、正直機会神が提出する申請がいつ通るのか分からないし、一旦保留で良いか。それにしても、やること多過ぎだよなあ。


「はぁ……」


 これからのことを考えると思わずため息が出てしまう。だが、結局は地道にタスクを消化していくしかないのだから、諦めて、いや腹をくくるしかない。そう心に決めた俺は早速屋敷の増築に着手することにした。


 今のうちの屋敷は、通りに面して門と繋がる守衛所、そこに並ぶようにアサヒナ魔導具店の店舗兼従業員寮があり、店舗の奥に倉庫、倉庫の正面には庭園があり、最奥に屋敷が建つという、所謂『コの字』並びとなっているのだが、倉庫の反対側、つまり門と守衛所の奥の空いているスペースに、来客用の迎賓館を別棟として建てることにした。つまり、敷地内を『コの字』から『ロの字』の配置にしようというわけだ。


 最初は今の屋敷を四階建てに魔改造しようかと考えたが、プライベートなスペースの近くに外部の人間が出入りするのを好ましく思わなかったことと、そもそも今の三階建を四階建てに対応することが構造面、強度面で創造するにしても面倒が多そうだと感じたので方針を変更した。


 一応現在考えている構想としては、一階に玄関ホール、招待客に寛いでもらうための応接室、それから招待客を接待するための大ホール、調理用のキッチンスペースとトイレを用意し、二階にバス・トイレ付きの客室を八つと、三階に一応賓客用の豪華で広めの客室(こちらもバス・トイレ完備)を四つ、そして地下に大浴場とトイレ、洗濯機と乾燥機を置いたランドリールームを備えた、さながらホテルのような建物にしようと考えている。


 もちろん全フロアにエアコンが完備されているし、トイレについても屋敷や従業員寮と同様に温水洗浄の便座が備え付けられている。


 ただ、もしこの迎賓館がフルで稼働することになると屋敷の使用人だけでは手が回らなくなる可能性が高い。そうなると、もう一人二人、手伝ってくれる執事やメイドが必要になるかも知れないが……。場合によってはベンノたちにも手伝ってもらえないか相談するのもいいかもしれない。


 さて、そうと決まれば早速皆にそのことを伝えて作業に入ろうと思う。


 リビングに戻るとアメリアとカミラ、セラフィにこれから行うことについて説明する。


「……というわけで、敷地内に来客用の迎賓館を用意しようと思います。今の屋敷では国王陛下を始めとする貴族の方々をおもてなしする場所がありませんから」


「まぁ、確かにねぇ。まさか国王陛下をこのリビングにお招きするわけにも行かないし、応接室もそこまで大人数をもてなすようにはできていないもんね」


「それに、ハルトの言う通り、この屋敷の二階より上はプライベートなスペース。あまり他所の人を招き入れるのは良くない」


「ふむ、確かにこのお屋敷とは別に分けたほうが良いでしょうが……。主様のほうは大丈夫なのでしょうか? ……以前、このお屋敷を建てられた際に倒れられたので心配です」


「「確かに!」」


 ふむ、そう言われるとそうだった。


 今回創造する迎賓館はうちの屋敷とほぼ同規模の建物となる。そうなると、俺の創造では神力が足りなくなる可能性があり、セラフィの言う通り、また気を失う可能性があった。


 なるほど……。確かにこの前の様に倒れることになるのも正直困る。だけど、これは俺の創造でしか創り出せないし、うーん……。


 そう悩んだのだが、一つ閃いたことがある。


 迎賓館を創造に必要なだけの神力を俺が持っているのか、世界神に確認してみてはどうかと思ったのだ。俺自身の具体的な能力はまだ教えてもらえないようだが、この程度の情報なら教えてくれるのではないだろうか。


 そう考えた俺は早速神話通信で世界神に連絡を取ることにした。神力を使いながら、世界神の番号を思い浮かべると、すぐに世界神の待受音が頭の中に流れる。


 さて、世界神は出てくれるだろうか? などと考えている間もなく、すぐに世界神は出てくれた。


『ハルト様、ご連絡ありがとうございます! ハルト様も神話通信に慣れたようで安心致しました。それで、今日はどうされたんですか?』


『あ、お疲れ様です。アサヒナです。一つ教えて頂きたいことがありましてご連絡させて頂きました。今、屋敷の敷地内に来客用の迎賓館を創造しようと考えているのですが、前に屋敷を創造したときのように神力切れで倒れないか心配しておりまして……。単刀直入にお伺い致しますが、今の私に、うちの屋敷と同規模の迎賓館を創造するだけの神力はあるのでしょうか……?』


『ふむ、神力量ですか。まぁ、それくらいならお答えしても問題無いと思います。ハルト様の神力であれば、ハルト様のお屋敷位では神力が不足する、ということはありません。前にお屋敷を創造された際も、普段のハルト様なら何の問題もありませんでした。ただ、その当日、ハルト様は随分創造を行い、神力を消費されておられましたから。それが原因で倒れられたのです。覚えておられますか?』


 ふむ。確か、あの日俺は魔動人形をリーンハルトに納品(献上)しに王城へ向かったのだが……。うん、精霊核や精霊玉、精霊晶等の創造、ゲルヒルデとブリュンヒルデの修理(というか、素材をセラフィと同様に変更)、庭園の修復、帰ってからの店舗兼従業員寮の創造……。あぁ、確かに神力を使い過ぎだと言われても仕方が無かった。


『なるほど、確かに神力を使い過ぎていたようです……。ひとまず、迎賓館を創造しても倒れることがなさそうなので安心致しました』


『ふふふ、ハルト様にもう一つおまけにお答え致しますね。最近随分創造を使用されることが多くなったためか、以前よりも神力の最大値が高くなっているようです。つまり、以前倒れられた時と同様の行動をされたとしても、今なら倒れられることはないでしょう』


『そうなんですか!?』


 なんと、世界神の話を要約すると、神力を使うほどに俺の神力量も増えるということになる。ということは、これからも定期的に神力を使ったほうが良いのかな。それに、もしかすると神力だけでなく魔力や精霊力なんかも使うことで最大値を高めることが出来るのかもしれない。


『はい! どれ位まで使えるのかは実際に試して頂くのが一番なのですが……。ハルト様、あまりご無理をされないようにお気をつけ下さいね』


『お気遣い頂き、ありがとうございます。無理しない程度に自分の限界を見極めたいと思います。今日は突然のご連絡、失礼致しました。また、質問内容にお答え頂きありがとうございました。また何かありましたらご相談させて下さい』


『はいっ! いつでも連絡してくださいね。ハルト様のためならできる限りの協力を惜しみませんから!』


『ありがとうございます! それでは失礼致します』


 世界神との神話通信を終えた俺は、早速皆に迎賓館を創造しても倒れる心配が無いことを説明する。


「皆さん、ご心配をお掛けして申し訳ありません。ですが、体調も良いですし、迎賓館を建てるくらいで倒れるようなことはありません!」


「本当に、大丈夫なのか? ちょっと心配だなぁ……」


「ハルトのことが心配。だから、私も一緒に付き添う!」


 うーむ、アメリアとカミラからは随分心配されているようだ。とはいえ、世界神のお墨付きがある、などとは言えないわけで、何と言うべきか悩んでいたのだが……。


「主様、世界神様から問題無いと伝えられた、ということでよろしいのでしょうか?」


 小声で俺に聞いてきたセラフィに対して俺は軽く頷いた。


「うむ、主様が問題無いと仰るのだ! 私は主様が倒れられることが無いと信じます! もちろん、皆様と同じく、私も主様が迎賓館を建てられるのを見守らせて頂きますが!」


 そんなこんなで、俺は皆を連れて屋敷の外へ出たのだった。

いつもお読み頂き、ありがとうございます!

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