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魔導具とセキュリティ強化

 アサヒナ魔導具店の四人のスタッフ、つまりベンノたちが店舗三階のダイニングルームに集まっていた。ダイニングルームは元々四人用に用意した場所だから、ここに俺とアメリアたちを含めて九人も集まることは想定していなかったので、皆には少し窮屈な思いをさせていることになる。


「皆、お疲れさま。そして、ベンノ、ティニ、ビアンカ、カイ。うちの魔導具店の従業員寮への引っ越し、本当にお疲れ様でした。これから暫くは開店に向けての研修期間となりますが、よろしくお願いしますね!」


「「「「はい! よろしくお願いします!」」」」


 ベンノたち四人は揃って快く返事をしてくれたので、俺もベンノたちに気持ち良くサムズアップすると、今日伝えなければいけない最も大事なことを口にする。


「それで、今日ここに皆に集まってもらったのは、大事なことを伝えないといけないと思ったからです。心して聞いてください」


 そう俺が伝えると、心持ち皆の表情が固くなるのを感じ取った。それはつまり、皆も俺が貴族となったことを多少は理解しているということだろう。


「既に聞き及んでいるかも知れないですが、先日私は国王陛下より爵位を賜り、男爵となりました。つまり、貴族となったわけです。それは、このアサヒナ魔導具店が貴族が経営する魔導具店になったことを意味します。急なことで皆には申し訳ありませんが、そのつもりで対応をお願いします!」


「「「「はい!」」」」


「よろしくお願いします」


 俺が貴族になったということを皆に伝えたところ、やはり皆は既に知っていたようで、一様に返事を元気良く返してくれた。


「ところで、アサヒナ男爵様。噂の魔導具ってどんな物なの?」


 そう言ったのはティニだった。


 そういえば彼女は新しい魔導具が気になるようで、店や寮に備え付けている照明やエアコンにも興味を示していたのを思い出した。しかし、噂の、と言うのはどういうことだろうか?


「なんです、その噂って?」


「またまたぁ、おとぼけになられるなんて。アサヒナ様が男爵位を国王陛下から賜る最大の理由となった、白金板三枚は下らないと言われる『時を計ることができる魔導具』のことに決まってるじゃないですかぁ。男爵様のイ・ジ・ワ・ル♪」


 あぁ、なるほど。置き時計のことが既に王都内で出回っているのか。


 いや、王家が、王国がわざと噂を流している可能性が高いのかな。つい最近まで名前すら知られていなかった俺が、リーンハルトやパトリックの御用錬金術師になっただけでなく、王国から貴族にまで取り立てられたのだ。


 俺に対して無用な恨みや妬みが出てくる可能性がある。それを抑える為に、俺が爵位を得た理由として、噂話を王国が流している可能性は十分に考えられた。


 しかし、なるほど。そうなると特にティニのような魔導具に興味がある者たちが店に押し掛けることも考えられる。それに、同じ錬金術師からのやっかみによる嫉妬や妬みの感情を向けられる可能性もあるし、その価値の高さから窃盗や強盗の危険性まであるわけだ。であれば、それに対して俺も対策を講じる必要があると思う。


 だが、国王陛下(というか、ウォーレンだけど)が、その価値を白金板三枚以上とした時計というのは、掛時計版ではあるが、既にこのフロアの中心となる壁に掛けてあったのだ。ということは、もう少し店舗のセキュリティを強化したほうが良いのかなぁ、何てことを考えながらティニに答えた。


「あぁ、それなら少し簡単な作りにはなりますが、そこの壁に掛けていますけど……。見てみますか?」


「「「「えぇっ!?」」」」


「ほら、これですよ。これが時計という魔導具です」


 そう言いながら、以前ゴットフリートに説明したようにベンノたちにも時間の概念と時計の見方を教えることにした。まぁ、時間や時計くらいなら説明もそこまで難しくは無い……。


 四人とも熱心に俺の話を聞いてくれたおかげで、大体のことは皆からの質疑応答を終えて理解してもらえた。


 ベンノは時計の価値や意義について興味を示し、ティナとビアンカは時計の仕掛けやメロディに興味を持ったようだ。カイだけはどうやって作られているのか、仕組みについて興味があるようだった。何となく皆の性格が出ているようで面白い。


「なるほど……。この魔導具の価値は確かに白金板三枚は下りませんな。国王陛下のご判断が正しいものであると改めて理解致しました。しかし、このような魔導具を本当に店の中に置いても良いのでしょうか?」


 そう心配事を口にしたのは店長代理のベンノだった。だが、その心配も良く分かる。だから、俺が考えた対策を伝え、対応に当たることにした。


「では、こうしましょう。この『時計』はこの店の者以外が触れると一日痺れて動けなくなる、また外に持ち出すと防犯ベルが鳴り、出入り口に設置する簡易の牢屋、というか魔法の檻が作動して身柄を確保する、そういう仕掛けを施します。これなら、ある程度は安全でしょう」


「な、なるほど……。それは確かに安全、と言いますか、かなり強力な呪いではありますが……。魔導具の価値を考えれば当然でしょう」


 ベンノの言葉に皆も賛同する。うん、やっぱりこれ位のセキュリティは必要なんだよな、屋敷のセキュリティももう一度見直しておくことにしよう。


 早速時計に対してセキュリティの処理を施した後、店の外に出て出入り口の上に簡易の牢屋、というか『魔法の檻』を設置する。店から許可されていない者が魔導具の類を外に持ち出そうとした場合に速やかに発動し、該当する者を即時捕縛するものだ。


 また、店舗内で悪意のある行動、つまり窃盗や強盗、詐欺や詐称、また殺人など犯罪行為を行った者がいた場合は、うちの店員であるかや、客であるかなどに関係なく意識を奪い、即時身柄を拘束する仕掛けも施した。

 

 うちの店員については心配していないが、客についてはどんな人物がやってくるかは分からない。念には念を入れた対処をしておいても、し過ぎるということはないだろう。それらを終えた俺は、これからのことも考える。


「一先ずはこれで何とかなったかなぁ。おっと、そういえば、もうすぐこの屋敷の一帯が神域、というか『神様サポート室の異世界出張所』になるんだった……。となると、もう一度屋敷の周りのセキュリティについて見直しておいたほうが良いだろうな!」


 既に、この屋敷の敷地には俺のオリジナル魔法『警備結界』が施されている。つまり、俺が許可していない人が勝手に侵入したり、攻撃しようとした際に、侵入者を王都の外まで弾き飛ばし、またその際にも別の警報音が鳴り響くというものだ。


 だが、この結界魔法はあくまで『人』に対して動作するものとしていた。何故なら、あまり動物などを対象にすると誤動作することが多くなると考えていたからだ。だが、今後屋敷の敷地が神域となることを考えると、人ならざる者が屋敷に侵入する可能性についても考えておくべきだろう。


「となると、やはり人に限らず、俺が許可していない者を対象とするべきだろう。それに、俺が許可した者であったとしても、敷地内で世界神たちや俺の仲間に危害を加えるような者がいた場合は、すかさず意識を刈り取る仕様に変更しておこう」


 そんなことを呟きながらオリジナル魔法を改めて屋敷の敷地全体に掛け直す。これで、前よりも多少は安全性が改善されているはずだ。


「これ位セキュリティを高めておけば、神界から世界神や輪廻神と機会神にマギシュエルデへ来てもらっても安全かな?」


 既に神界でもあり得ないほどに高いセキュリティが敷地全体に施されているということを知らなかった俺は、更なる屋敷の強化を思い浮かべながら、これから先に起こるであろう面倒事を思案するのであった。

いつもお読み頂き、ありがとうございます!

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