世界神の挑発と衝撃告白
さて、神話通信について世界神から使い方を教わったので、そろそろ今日の本題に入ることにした。というか、そもそも神話通信の確認自体が想定外だったのだ。
「さて。世界神様、こちらから幾つかご報告させて頂きたいのですが……」
「はい。ハルト様がアルターヴァルト王国に辿り着いて、人間族と半妖精族の仲間を集め、二人の王子から信頼を得て御用錬金術師となり、屋敷を『創造』したり、国王からも有能さを認められて貴族になったということはこちらでも把握していますよ!」
「えー……。あのー、もしかして、全部見ていたんですか?」
「はいっ! 幸い、それほど忙しくありませんので」
うーむ……。この世界神は普段暇を持て余しているのではないだろうか。
俺がマギシュエルデに転生してから、これまでにやってきたことを簡単に説明されてしまった。こんな報告では、何だか俺のほうが消化不良になるのだが……。そういえば、世界神からセラフィについては特に言及されなかったことに気が付いた。もしかすると、セラフィを創造したことについては見ていなかったのかも知れない。そう思って、アイテムボックスからセラフィを呼び出そうとしたとき。
「そういえば、ハルト様の従者もこちらに来ていましたね。さぁ、そこから出て来なさい!」
世界神が右手を差し出し誰かを招くような仕草をすると、俺のアイテムボックスから、俺の意思に関係無くセラフィが飛び出してきたのだった。
「セラフィ!?」
「主様! ご無事でありましたか!? たった今、主様以外の何者かから強制的にアイテムボックスから出された感覚があったので、何事かと……。主様、主様は私の後ろにお下がりください。おい、そこのお前! 私を主様のアイテムボックスから引きずり出すとは、一体何者だっ!?」
そういうと、セラフィの装いを戦乙女の騎士鎧姿に変えて、更には黒色の三対の翼を大きく広げると、腰に据えた両刃の剣を引き抜いて世界神に向けた。
それを見た俺は慌ててセラフィを落ち着かせようとする。だって、いきなり部下(眷族の従者)が突然俺の上司(世界神)に対して武器を向けたのだ。普通に考えて、懲戒ものの出来事だし、俺が焦らないわけがない!
「ちょっ、ちょっと!? セラフィ、ここは少し落ち着こうな!」
いきなり喧嘩腰になってしまったセラフィを落ち着かせようと思ったのだが、セラフィは俺の身を案じてか、それともアイテムボックスから勝手に出されたことに因るものか、世界神の存在に対して強い懸念を示す。
「いえ、主様。この者がただならぬ者であることは察しております……。しかし、為ればこそ、主様をお守りしなければ、アメリアたちに申し訳が立ちません!」
そう言うと、セラフィは更に気合いを増したように両刃の剣を世界神に対して突き付けつつ、ジリジリと間合いを測りながら世界神に詰め寄ろうとする。
正直、このままでは埒が明かないと感じたとき、世界神の口から思いも寄らない言葉が発せられた。
「あらあら、ハルト様の従者はとっても元気が良いですね! セラフィと言いましたか。貴方のその剣、その腕前。ハルト様のお役に立てるのか、私が試してあげましょう。さぁ、私を思いっきり斬りつけてみなさい!」
世界神はそう言うと、腕を広げてセラフィの前に立ちはだかった。
何ということをいうのか!? あろうことか世界神がセラフィを煽りだしたのだ。俺としては何としてもセラフィが世界神を斬りつけるような事態だけは避けたいというのに!
「うむ、お前のその覚悟、しかと受け止めた。主様への無礼と私への辱め、それに対して相応の報いを受けてもらう!」
セラフィがそう言うと、瞬く間も無く剣を振りかぶって世界神に斬りかかった。
セラフィの剣が世界神に届いた瞬間、部屋の中に途轍もない衝撃が走り、俺はその場に立っていることもできず部屋の壁際にまで吹き飛ばされると、瞬間的に気を失った。
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「……うぅ、いたたっ……。セラフィは、世界神は……。一体どうなった!?」
気が付くと、俺は部屋の端、つまり壁と床に貼り付いたような姿で寝込んでいることに気が付き、起き上がろうとしたのだが、あまりの衝撃に身体が驚いたようで思うように動けなかった。
部屋の中はセラフィの攻撃によって粉塵が舞う事態となっており、周囲の状況を把握できないでいた。
一体何が……。というより、セラフィは無事なのか?
それに、あの一撃を受けた世界神は、果たして無事なのか……!?
意識が朦朧とする中、二人のことを心配していると、不意に鈴が鳴るように楽しげな声が聞こえてきた。そう、世界神の声だ。
「ふふふ、流石はハルト様が創造された生命体、私の眷族の従者としてマギシュエルデでは文句の無い能力の持ち主でしょう。しかし、世界の管理者たる私には致命傷どころか、傷一つ付けられません!」
少しずつ粉塵が晴れてきた部屋の中を見渡すと、世界神に斬り掛かったセラフィは、部屋の隅まで吹き飛ばされたのか、俺とは別の方向の壁際にもたれ掛かるように倒れていた。俺はそれを目にして這いずるようにセラフィのもとへと向かう。
「セラフィ! セラフィ!? 気をしっかり持てっ!」
セラフィの姿は、よほどの衝撃、というかダメージを受けたのか、錫と灰を身体中に受けて、その上傷だらけの姿で横たわっていたのだ。
「う、うぅ……あ、主様……」
「セラフィ!? 気がついた?」
「あ、主様が、ぶ、無事で良かった、です……」
「セラフィっ! え、せ、世界神、様!?」
恐らくセラフィを吹き飛ばした張本人であろう世界神が、すっとセラフィの隣に座ると、傷付いたセラフィに手をかざした。
「ハルト様の従者としてはまだまだ経験が不足しているようですが、主であるハルト様を守ろうとする姿勢は評価できますね。ハルト様、ご安心ください。セラフィは私が責任持って治癒致しますから!」
世界神がかざした手から柔らかな光がセラフィの身体に降り注ぐと、たちまち傷や汚れが無くなり、元の綺麗な姿に戻った。
「さぁ、これでもう大丈夫でしょう。セラフィ、立てますね?」
「う、うむ。お前、いや貴女は一体……!?」
セラフィと世界神の二人はその場で立ち上がると互いに向き合う。
セラフィの表情を見ると先ほどまでの敵愾心は既に無かったが、世界神に対しては、ただならぬ何かを感じとったようだ。
「私は、貴女が生まれた世界マギシュエルデの管理者たる『世界神』。つまり、『神様』です。そして、ハルト様は私の眷族で、その……。つまり……。えっと、『部下』のようなものでしょうか? セラフィはハルト様の従者、つまり『ハルト様の部下』ということになりますから、ハルト様の『上司』である私は貴女の上司でもあるのです!」
「な、なんと!?」
「更に! ハルト様の身体はこれまでに私が創り出した中でも最高傑作! つまり、私の息子も同然なのです! ということは、ハルト様が創り出したセラフィ、貴女は私の孫も同然! ということです!」
「「えぇっ!?」」
世界神の言葉に、戸惑っているセラフィだけでなく、俺まで戸惑ってしまう。
え、俺が世界神の息子? 見た目が女子高生の世界神が、俺のお母さん……? なんか文字に起こすだけでちょっとヤバい感じがするけど……。それに、セラフィが孫ってことは世界神はセラフィの……。
「ハルト様、それ以上お考えになるのはお止め下さいね?」
「あ、はい」
世界神に思考を読み取られて止められてしまったのだが、つまるところ、世界神が俺の母親(?)であるということは、俺が創り出したセラフィにとって、世界神は……。ということになるのだ。だが、やはり世界神の息子、というのは何だか違和感があるわけで……。
しかし、セラフィはそんな違和感は感じなかったようだ。
「なるほど、通りで敵にしては主様と同じく、いえ、それ以上に神聖な雰囲気を纏っていると思ったわけです。それにしても、主様の上司であり、母上……。そしてそれはつまり私のお「はい、そこまでです!」」
セラフィの言葉を世界神が遮った。
「セラフィは物分りが良い孫娘だから、それ以上口に出す必要が無いことは分かっていますよね……?」
何だか、世界神から『ゴゴゴ……』という表現が正しいと思うくらいの威圧がセラフィ、だけでなく俺にも襲い掛かる。世界神にそのように言われると、セラフィもただただ首を縦に振るしか無かった。
そんな良く分からないやり取りをしていると、部屋の扉が開き二人の男が現れた。
「先ほどの爆発音、一体何事だ!?」
「あ、朝比奈さん。お久しぶりですね」
二人の男は俺が転生時に世話になった神様、輪廻神と機会神だった。
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