お酒の後始末と重大問題発生!?
金色の小麦亭で夕飯を食べた俺たちは屋敷に泊まるべく、屋敷に戻ってきたのだが、この間がメチャクチャ大変だった……。
それもこれも、皆が調子に乗ってエールを何杯もお代わりしたのが原因だと思う、というか、それ以外に考えられない。
アメリアは泣き上戸になるし、カミラは笑い上戸に、そしてヘルミーナは先ほどまで顔を青くしていたが、いつの間にか顔色が白くなっていた……気がする、多分。
因みに、セラフィは全く酔うこともなく機械のようにエールを飲み続けていた。
金色の小麦亭を出てから、セラフィがアメリアとカミラを、俺がヘルミーナを介抱しながら何とか屋敷に辿り着いたのだが、既に夜は更けているせいか、通りには人の気配が全くなかった。だから、ここまで特にトラブルに合わずに帰ってこれたとも言えるのだけど……。
アメリアとカミラの二人はともかく、ヘルミーナは飲み慣れてないのに無理をさせられたからだろうな……。
金色の小麦亭では、エールを飲ませてもらえなかった俺の恨めしい視線を無視してアメリアとカミラ、それにセラフィの三人は飲み続け、アメリアとカミラの二人が『ヘルミーナにエールの味を覚えさせる』なんて言いながら、どんどんマルティナにジョッキを持ってこさせていたのだ。
そんなことがあって今に至るのだが、未だにアメリアは『うぅ、ハルトは魔物の森に一人ぼっちで捨てられていたんだよぉ? こんなに悲しいことはないのに、ハルトは! フリーダの為に回復薬を出してくれたんだぁ!』などと言いながら、何故か本人である俺に絡んでくるし、カミラなんかは『うふふふ、ハルトは私の弟なの。弟の面倒は私が見るの。弟の面倒見るのはお嫁さんの仕事なの。だから、私はハルトのお姉さんで、お嫁さんなのー! アハハッ! アハハハハハッ!』などと、意味不明の供述をしており、俺の中では酔っ払いとして扱うことが決定していた。
そして、ヘルミーナは完全にグロッキーな状態となっていて俺が背負ってはいるものの、引き摺るというほうが正確だろう。『ハルト……水……ハルト……気持ち悪ひ……』なんていうことをいきなり言うもんだから、慌てて抱きかかえて帰ったのだが、屋敷のトイレにまで間に合わず、俺の首から胸に掛けて熱いものが降りかかるという大惨事が起きることとなった……。
そんなことがありながらも、三人を各自の部屋のベッドに何とか寝かせることができた俺は、一人大浴場の湯船に浸かっていた。
セラフィも既にアイテムボックスの中に入り休んでいる。
「金色の小麦亭の夕飯はやっぱり美味しかったなぁ……。あのレベルの料理人を雇うとなるとそれなりに出費が嵩みそうだし、そもそもルッツみたいな腕の良い料理人は中々いないだろうな……」
そんなことを呟きながら、思わず鼻先まで顔を湯船につけながら、これからやらないといけないことを考えていた。
今回テンションが上がってたからか、調子に乗って大きな屋敷を創ってしまったんだけど、俺たちだけではどう考えてもこの屋敷を維持することは難しい。まぁ、その為に使用人の部屋もあるんだけど。
とにかく、まず始めにこの屋敷を維持する為のスタッフ、つまり執事やメイド、それに料理人を探さないとすぐにこの屋敷は立ち行かなくなる。
でも、留守を預けられるような信頼できる人なんて簡単に見つかるのだろうか……。
それに、魔導具店の店員も探す必要がある。店長はヘルミーナにやってもらうとしても、店の従業員は必要だ。従業員についても信頼ができてお金の計算ができるなど、条件が幾つもある。
このあたりは明日にでもローデリヒにでも相談してみるか。誰か良い人を紹介してもらえるといいんだが。
それから今後魔導具店で売り出す物も決めておかないといけない。
一応、魔動人形の一件もあって俺の中では方向性は固まったけど、内容についてはヘルミーナたちにも話しておく必要がある。実際に販売するに当たって数を用意するのはもう少ししてからになるだろうけど、寝る前に試作品を用意(創造)して明日皆に見てもらうことにしよう。
そんなことを考えながら、久々に一人で入るお風呂を堪能してから自室に戻ると、休息を取った。
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翌朝、目が覚めてリビングに行くと、少し疲れた顔のアメリアがソファーに座っていた。
「おはようございます。体調はどうですか?」
「やぁ。ハルト、おはよう。体調は……あまり良くはないかなぁ……」
自嘲するような笑みで応えてくれたが、確かにちょっと辛そうだ。
「昨日のお酒がまだ残ってるんじゃないですか。お風呂の準備をするので少し待ってて下さい」
「あぁ。ありがとう、ハルト」
昨日は風呂から上がるとすぐに寝てしまったけれど、これからは最後に風呂掃除をしてから寝ることにしよう。
風呂場に着いて扉を勢いよく開けると、そこには半裸(と言っても既に上半身は何も身に着けず、後は小さな布を下ろすだけ)となったヘルミーナがいた。
「……?」
「…………!」
「あ……あの……?」
「ッ!? ア、アンタ何勝手に入ってくんのよ、変態っ! エロハルトッ!」
「うわぁっ!?」
そう言って両腕で大事なところを隠そうとするのだが、その仕草が何とも……ってそんなにガッツリ見ているわけには行かないぞっ!
慌てて後ろを向く。すぐに釈明しないと!
「ほんっとうに、ごめんなさい! 誰かいるなんて気付かなくて……。今からお風呂の掃除とお湯を張り直そうと思っていたんです。本当にごめんなさい」
「……アンタ、見たでしょ?」
「(いや、何も見ていないです!)意外とスタイルが良いですね!」
「こぉんのぉ……バァカァァァーーーッ!!!」
「ごめんなさぁぁぁい!!!」
バンッと勢いよく風呂場の扉を閉めたのだが、後の祭りというか何というか。思わず、言おうと思った言葉が出ずに、感じたことをそのまま口に出してしまったのがいけなかった……。
その後、何とかヘルミーナに謝罪した後、生活魔法『清潔化』で簡単に風呂掃除を行い、新しくお湯を張り直したお風呂に入ってもらうことでようやく機嫌がなおったのだった。その後、続いてアメリアが入り、暫くして起きてきたカミラが最後にお風呂に入った。当然、最後にもう一度風呂掃除をするのは俺だ。
皆が揃ったところで、セラフィにアイテムボックスから出てきてもらい、これからやらないといけないことを共有する。
と、その前に……。
「皆、朝から騒がせてすみません。特にヘルミーナさんにはもう一度謝ります、本当にごめんなさい!」
「もういいわよ、さっきも謝ってもらったし。それに先に入ってることを誰にも言ってなかったし、そもそも鍵をかけ忘れた私も悪かったわ。それで、今日はどうするつもりなの?」
「はい。そのことで皆さんにご相談があります……。もう気付いてるかも知れませんが、このままでは屋敷を維持することができません」
アメリアとカミラ、それにセラフィは何のことか分かっていないようだったけど、ヘルミーナはどうやら察したようだ。こめかみに手を当ててため息混じりに口を開いた。
「まぁ、確かに。これだけ広い屋敷だと少なくとも使用人が四、五人はいないと管理できそうにないわね……」
ヘルミーナの一言にアメリアとカミラも頷く。
「それに、表の魔導具店の店番も必要です。そして大事なことが……」
「「「「大事なことが?」」」」
「それらの人を雇うお金がないっていうことです!」
「「「あっ!?」」」
「あ、なるほどです」
そう、結局そこに行き着くんだよなぁ。
お金が無いと何もできなくなって手詰まりになるという、所謂貧すれば鈍するというか、そんなことになりかねない。とはいえ、せっかく創ったこの屋敷を維持できないなんて、そんな甲斐性無しになるつもりも無い。最悪、世界神に無心してでも皆には不自由させるつもりはない。それに、ある程度は資金調達の見込みはある。
「お金が無いと人を雇うことはできませんが、一応お金を稼ぐ方法については考えがあります!」
「でも、魔導具を創って売るにしても素材一つで金貨や白金貨が飛び交うような世界よ? それに高価な魔導具なんて依頼人があって創るものだから頻繁に売れるものでもないし、回復薬の売上もたかが知れているわ。幾らハルトが御用錬金術師だといっても、そんなに簡単にお金って稼げるものではないわよ?」
「そうだぞ。冒険者が依頼を受けて達成したとしても、準備や時間にそれなりのお金が掛かるし、定期的にお金を稼ぐのには向かないんだ。だから、使用人を雇うなんて、よほど大きなパーティーを組んでいる冒険者でないとできないんだぞ?」
「アメリアの言う通り。冒険者は一か八かの一攫千金を狙う。定期的な収益を得るなら他の仕事を探さないと!」
口々にネガティブな意見を言ってくれるが、皆が言うようなリスキーな商売をするつもりはない。俺の考えは最初から変わっていない。つまり、この世界に四種族が力を合わせて戦うという世界観をベースにしたカードゲームを創って売ろうというわけだ。
「まぁ、皆さんの心配も良く分かりますが、まずはこちらを見てもらえますか?」
そう言いながら俺は一脚の机をアイテムボックスから取り出し、その上に小さな薄い包み(パッケージ)を置いた。昨日の夜に用意した試作品だ。
「これから売り出そうと考えているのは、この包み、というかカードパックと、この机の上に敷かれた遊技用のマットなんです」
そう言いながら、俺は机と薄い小さな包みを指差すと皆も興味を持ったのか、興味深そうに覗き込んだ。
「まず初めにこのカードパックを見て欲しいんですが、これは外からは中身が分からない特別な包装をしていて、この中にはカードが五枚入っています。カードには幾つかの種類があるんですけど……どんなカードが入っているか分かりますか?」
「「「「分からない(です)」」」」
実際に試してもらったほうが理解が早いと思い、カミラに机の上の小さな包みを開けてもらう。すると……銅色の模様が飾られたカードが二枚、そして金色に輝くカードが二枚と、最後に虹色に輝くカードが一枚現れた。
「(おお!)この金色に輝くカードは一割の確率でしか出ないんです。それ以上に、この虹色のカードはもっと低い五分の確率でしか手に入らない貴重なカードなんですけど、カミラさんは凄く運が良いですね!」
そうカミラに伝えると、隣で聞いていたヘルミーナが口を出してきた。
「なるほどね。つまり、このカードパックっていうのには確実に五枚のカードが入っている。けれど、どんなカードが出てくるかは確率による完全なランダムというわけね?」
「その通りです。このカードパックは開ける人の『運』によって何が出てくるかが決まる、特別な構造になっています。まぁ、くじ引きみたいなものと考えてもらえれば。ですから、さっきカミラさんがカードパックを開けた結果はかなり幸運な結果と言えますね」
「ふぅん。そういえば、ダンジョンの階層主を倒すと出てくる宝箱には、これと同じようにランダムで中身が変わるものが存在するって聞いたことがあるわね」
ほほう。既にこの仕組みがこの世界にあるのなら違和感無く浸透するかもしれない。
仕組みを理解したヘルミーナがニヤリと笑いながら、どうすれば儲けられそうか、なんてことを考えているみたいで少し複雑な気分だけど、このカードがどのように使われるのか、説明を先に進めることにした。
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